ウソつき虫
昔々、あるところにウソオがいた。
ウソオはシンコに恋をした。
ウソオは告白する。しかし、フラレた。
シンコは言う。
「あなたの言葉はウソばかり。ホントのことを話して。あなたが別人にでもならない限り、近づかないで欲しい」
ウソオは別人になろうとした。
努力して、試行錯誤して、何度も何度も失敗して、つらい思いをした。
変化が無かった。
ウソオはやはり、ウソつきなままだった。
ウソオは思った。
……背伸びするのはやめよう。もう努力はやめよう。別人になんかなれないんだ。ウソつきのままでいいじゃないか。
逃げた。
ウソオは別人になれなかった。
その時、神様が魔法の鏡を見せた。
ウソオがウソをつくたび、傷つく人の姿が見えた。
ウソオを信じようとしたのに、裏切られて哀しむ人の姿が見えた。
こんなにウソつきなのに、それでもウソオを信じる人の姿が見えた。
ウソオは言葉を失った。
その時、ウソオの中でウソつき虫があらわれた。
……お前はウソをつけ。人をだませ。人なんかどうでもいいんだろう。お前は自分が一番大事なんだ。
ウソオは優しく言った。
……ウソつき虫。もう人を苦しめるのはやめよう。自分のことばかり考えるより、大事なことがあるんだ。
ウソオは感謝することにした。
いつもいつも感謝した。
ウソつき虫がキライなのは感謝。
ウソオが感謝するたび、苦しんだ。
ついにウソつき虫がどこかへ行った。
……こんな身体にいられるかー、あばよ
ウソオのウソがやんだ。
それからも、ウソオは感謝しながら生きた。
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