後悔先に立たずの話

何か悪いことが、目の前に迫ってきているような予感がする。

それは、わかっている。


でも、それらをなんとかごまかす。

自分に都合が良いように解釈し、ごまかす。


「大丈夫だ、きっと大丈夫」

そう繰り返し唱える。


一生懸命に、その悪いことが「起こらない」理由を、探し続ける。

悪いことが「起こる」可能性については、考えないようにする。



頭のどこかでは、わかってる。

この悪い予感は、無視せず受け入れるべき。

そして、早いうちに行動するべき。


そうすれば、何もしなかった時よりは状況が良くなるかもしれない。

それは、わかってる。


でも、できない。


もし、この悪い予感が外れていたら。

もし、全て自分の思い過ごしだったら。

そうなれば、全て問題はなくなるだろう。


そうやって、その可能性にしがみついてしまう。


今までも、悪い予感が外れたことは何度もあった。

だから、今回もきっと大丈夫。

そうやって、しがみついてしまう。


大丈夫だ、大丈夫。

自分の日常は、これからも変わることはない。

いつも通りに、続いていくはず。


でも、この悪い予感は周りの人には悟られないようにしよう。

もしも知られてしまったら、状況が悪い方向へと進んでしまう気がする。


それはいけない。

なんとか、この悪い予感は自分の中だけで留めなければいけない。


だから、みんなには、いつも通りに接しよう。

いや、むしろいつもよりも元気なくらいで、丁度良いのかもしれない。

だって、この悪い予感なんて、全部自分の思い過ごしなのだから。


みんなに無駄な心配をかけさせてしまったら、申し訳がない。

だからこれは、自分だけの秘密にしよう。

うん、それがいい。


悪いことが起こるのは、テレビの向こう側の話。

自分の身には、全く関係のない話。

だって、今までもずっとそうだったんだから。

だから大丈夫だ、今回も大丈夫。

全ていつも通り。


でも。

でも、どうしよう。

もしも、この悪い予感が当たっていたら。


生活が変わってしまう。

日常が壊れてしまう。


こわい。



いや、でも。

それでも、大丈夫だ。

今までも大丈夫だったんだから、大丈夫だ。


大丈夫だ、大丈夫。

今回もきっと、大丈夫。




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