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【教育実践】ディクトグロスについて②

こんにちは。2学期の業務も落ち着きました。今年の秋冬は本当にノンストップで、予想外のことが次々に起こりました。
そんな中でも、授業に関してもまたいろんなことを取り組めたのではとちょっと自分をほめたいと思います…。

その一つにあったディクトグロスの取り組みをまたこちらにまとめたいと思います。

はじめに

前回の記事 よりディクトグロスの説明をさせていただきました。そのため、今回は簡単な説明のみにしたいと思います。

ディクトグロスというのは、流れてくる音声から重要なポイントになるところを聞き取り、メモを残す。そのあとに、そのメモを頼りに内容を再構築するという活動です。そのため、リスニングだけではなく、付随的にライティングにもつながる統合的な活動といえるでしょう。

この活動を、4月から続けています。そして、2学期には1学期の反省を踏まえ、リニューアルをして取り組みました。

反省点として挙げられたのは、教員にとってのフィードバックの負担が大きく、間に合わない。ということでした。1回の活動でのディクトグロスとしては4文ほどではありますが、それでも毎回200人の生徒のライティングを1か月でも4回ほど見るのはやはり現実的ではありませんでした。

そこで、生徒の「かきっぱなし」を避けるために新たに導入したのが、ChatGPTによるAI添削です。AIを用いることで教員の負担がぐっと減り、生徒も一人ひとりの適切なフィードバックが得られます。

AIの登場。これは、英語学習における大きな革命ともいえるものだと感じます。

ChatGPTを活用すると英語学習の効果が何倍にもなる大きな理由として、「学習の個別化」が可能になる、ということがあります。ChatGPTは学習者の個別のニーズ、興味関心、レベルに対応してくれるため、従来の学習方法よりも格段に効率的に英語力をあげていくことができるのです。

AI英語革命 改訂版 -ChatGPTで英語学習を10倍効率化-

今の教育に求められているのは「自律学習」ではないでしょうか。知識詰め込み型の授業ではなく、自分自身で学びに向かう力、つまり「主体性」の重要性が叫ばれています。学習指導要領が改訂されてからこの価値観は授業の中へ浸透していき、各教科の授業デザインにも活用されているように思います。

私の授業でも例外ではなく、単に「単語を覚える」「本文を暗記する」のではなく、得た知識・技能を用いて、自らが発信していくという活動が必要になっています。

前述した通り、ここで課題になってくるのは、生徒がアウトプットしたものに対してのフィードバックの負担です。重要性があるにもかかわらず、それを一人ひとり見てあげる時間はやはり今の教育現場ではそれほど確保できません。

そこにこのAIがいてくれることは教員・生徒共に大きな力になり、それこそ「革命」に近い、学習スタイルの変容が訪れてくれたと感じます。

今回は、前回のディクトグロスからどのように学習方法を変え、どのような結果が出たのかを考察していきたいと思います。

前回との変更点

ディクテーション廃止

まず、前回から変えたのは、「ディクテーション」部分を完全になくし、オールディクトグロスにしました。

ディクトグロス プリント改訂版

オールディクトグロスといっても、パート全文はまだ難易度が高すぎるため、最初と最後の1~2文は印字してあります。

それでも、1学期の2~3文程度の再構築から、今回は4~6文と分量は増えています。聞き取る量、メモの整理、そして再構築すべてがレベルアップしています。生徒自身も1学期の取り組みと比較しながら成長度合いも感じられると考えました。

自己分析にAIを利用

そして、次に大きく変えた部分は、work3の振り返り部分になります。前回はあくまでも自己分析で、教科書の本文と比較して気づいた点などを書いてもらう形でした。

今回は、メインでもあるAIによる添削を経て、それを基に振り返りをする流れにしました。

前回 振り返り
最新版 振り返り

自己分析では、なかなか自分のミスに気づけなかったり、うまく次につなげることができないなどの様子もありました。
そのため、ミスの原因を大きく4つに分類しました。
・内容違い
・内容不足
・単語
・文法
このディクトグロスのプリントはロイロノートの1枚のポートフォリオにためていきます。そのため、どの分野でのミスが多く、また、前回との比較をすることで、より高度な自己分析と自律学習につなげられるのではないかと感じました。

ChatGPTの活用方法

ここからは、どのようにAIに添削していくかを説明していきます。

step1 再構築した文の写真を撮る。

ディクトグロス自体の流れは前回から変えていないので、3回聞く→再構築(個人)→グループ共有→もう1回聞く
という作業が終わったら、書いた文を写真に撮らせます。

step2 ChatGPTのアプリを開き、プロンプトと写真を添付する。


ディクトグロス プロンプト

こちらがChatGPTに送るプロンプトになります。生徒にはロイロカードを配信し、「全コピー」→「ChatGPTに貼り付け」の指示をします。

そして、このプロンプトと一緒に、先ほどとった写真を添付します。

クリップマークで写真を添付します。

そうすると、以下のような返答が来ます。(以下のChatGPTは授業内で行った本文でのサンプルになります。)

AIに行ってもらうステップとしては3つあります。
・添削
・点数付け(10点満点)
・前向きになれるフィードバック

これらを踏まえて、生徒自身が改めて書いた文を見なおし、次に生きる振り返りを書いてもらいます。

2学期行ってみての感想・分析

【考察1】ChatGPTの不具合多発…。

前年度ChatGPTは利用していたのですが、今回は「プロンプト」と「画像添付」、しかも長文での返答ということで、かなりChatGPTに負荷をかけるものになってしまいました。
そのため、前年度には見られなかった不具合が多く見られました。

①画像が添付できない。
②返答が返ってこない。
③ネットワーク構成の問題
④そもそもなぜかログインができない…。

毎回、多くの問題がどのクラスでも発生しました。これからどの教科でもAIの活用が求められてくることも考えると、学校のシステム面を整えていかなければならないのが喫緊の問題でしょう。
GPTの容量の問題もあると思います。ICT教育を推進していく上では、もはや「iPadの導入」「アプリの使用」だけではないのかもしれません。次のレベルに進めていくことがより効果的なICT学習の発展だと考えます。
ここは、一人の教員の枠を超えて、ICT担当、教務、ICT支援員と協力が必要な問題と認識します。

【考察2】(そもそも)慣れていない子が置いてきぼり…。

このやり方を導入してから、一人の生徒から「前のほうがよかった」という声がありました。確かにChatGPT自体が不安定の中、それができている前提での個人作業の振り返りとしてしまいました。
授業時間も限られていることから、2学期からは振り返りは自宅での宿題として取り組んでもらうことが多かったです。
自己分析が完璧にできているのであれば、前のやり方にもどしてもよいと多少は思います。ですが、1学期の様子などを見ると、振り返り自体が回を追うごとにマンネリ化してしまい、新しい分野に気づきずらくなっています。一人で勉強をするときにあたる壁だと思います。自分自身の成長を止めているボトルネックがどこなのかをいち早く見つけ、その原因を克服することが成長のプロセスだと考えます。
そのためにはやはり、第3者の視点が必要です。この「自律学習」自体の意義や過程が身についていないと、この学習法も億劫に感じられてしまい、なかなかモチベーション維持、向上にはつながらなかったようです。

この問題に関しては、根気強く学習の意義を説明、共有すること。そして生徒自身が抱えている課題に対して一緒に向き合ってあげる。また、英語に苦手意識が強い生徒ほど、認知的徒弟制度なども用いながらサポートしていくことが必要と考えます。

振り出しに戻ってしまうような課題ですが、根本的なところはやはり生徒一人ひとりを見てあげること。これに尽きるのだなと考えさせられる課題でした。受け持つ生徒一人ひとりの向上が期待できなければ、私自身も教授法を導入する段階で満足せず、常に批判精神を持ち、向上させていかなければと思います。

【考察3 教師の負担は減った!】

課題はまた増えてしまいましたが、それでも嬉しい効果もあります。次はそれらを紹介させていただきます。

AIの導入のきっかけとなった「教師側の負担」は大いに減りました!それでもちゃんと生徒のライティング一つ一つに目を向けなければならないのはもちろんではありますが、生徒のフィードバックの様子を見ると、どのように自分のミスに気づけたのかが一目瞭然となりました。
生徒にとっても、教員からのフィードバックに時間がかかるのであれば、即座に情報が得られた方が効果的だとも考えます。この習慣が身につけば、生徒の「自律学習」の定着にも寄与できます。

【考察4 客観的に振り返る力は持てた!】

前回の記事では、「音」についての振り返りが多くあり、英語における発音やイントネーションの重要性に気づける生徒が多くいたことを述べさせていただきました。

今回はAIの分析を導入したこともあり、文法面での気づきを多く得た印象があります。1学期の振り返りには見られなかった「三単現忘れ」「複数形のs忘れ」「時制のずれ」「品詞の違い」など。
これらの気づきというのは、生徒自身がその知識を持っていないと気づけないものだと思います。しかし、今回はAIが添削をしてくれるおかげで、これらの文法的知識が抜け落ちていたとしてもミスをピックアップしてくれ、その流れを受けて、生徒自身も気づけなかった(忘れていた)文法を復習できるという効果がみられました。

これらの細かいミスは日本人にとってはあまり意識をしないものです。だからこそ、AIが客観的に分析をすることで生徒がこれからライティングをしていく上で強く意識していくことも期待できます。

【考察5 教師もミスが多いポイントが見やすくなった!】

生徒には、ロイロノートの提出箱に振り返りまで記入したプリントの写真だけではなく、どのようなフィードバックをもらえたのかのGPTのスクショも送ってもらいました。

そのため、生徒がどのようなフィードバックを受けていたのか、それを読んだうえで何に気づいたのかという「自己調整力」も見ることができました。
それだけではなく、全体的に間違いやすいポイントや苦手とする部分がより明確になりました。生徒自身だけの振り返りからでは、生徒が気づけないところは気づけません。しかし、第三者の目があり、そしてそのデータを多く収集できることから教員自身も生徒の現状の課題を分析することができます。
そして、次の授業などのときにそのポイントから復習などをしていけば、生徒の学力向上にも生かせるのではないでしょうか。

今後の展望

課題を改善しようとした際に、新たな課題が出てしまいました。それはシステム面的なところや、生徒への対応不足などが挙げられます。
今回のこの課題は生徒の学力や取り組みなどからではなく、学校や教員側に存在することが強く感じられるものになりました。

学校のICT教育の推進。これをどのように進めるのかを計画的にしていくこと、そして、複数の教員や外部の方の協力のもと、よりよい教育をしていくということを体現していくことを目指していくべきだと強く感じました。

また、生徒に対してのサポートをどのように厚くしていくのかも対処すべき大きな課題ではあります。「個別最適化された学び」をしていくために導入している中で、おいてきぼりになっている生徒へまで視野を広げ、だれ一人取り残されない授業を徹底していくべきです。それを自負して教育活動に取り組んでいきたいと思います。

しかし、やはりAIの力はすさまじく、客観的に見てくれる語学学習の強きパートナーであることは明確化されました。添削だけではなく、スピーキングなどでの取り組みの中でも導入し、より生徒自身が自ら進んで学習に取り組む姿勢につなげられたらという希望も持てました。

おわりに

今回学んだことは、AIはすごい。プロンプトと画像から、成長の兆しをこれほどまでに多く提供してくれるのは本当に効果的だと感じました。しかし、それでも多くの課題がでています。

結局、どのような道具でも生かし方次第です。そして、その生かし方はきっとAIではなく、人間が考えていくべきだと思います。目の前の生徒のことを分かるのは機械ではなく、私達人間の教師だからこそ。すごいと言われている方法を導入したらいい。話題のアプリを使ったらいい。マニュアルに沿ってやってればいい。のではないのかなと思います。

そのような便利なものであっても目の前の生徒にとってはどのように貸していくのか、必ず教え受け持つ生徒たちの顔を思い浮かべながら授業をデザインしていくべきなのだと強く思いました。そして、それが私なりの今の大きな課題です。

批判精神を常に持ち、機械を最大限に利用し、目の前の生徒のために何ができるのかを考えて、共に成長し合う教育をこれからもしていきたいと思います。


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