【読了】『いい子症候群の若者たち 先生、どうかみんなの前でほめないでください』
みんなの前で褒めないでください。
「いい子症候群」
この言葉を見て、衝撃を受けたのが最初です。教員を始めてからの数年。生徒の様子を見て思っていたモヤモヤが一気に解決したような気分でした。
最近の生徒は、はっきりと意見を主張することを躊躇い、浮かないように浮かないように、無難という名の「普通」を選択し、決断することもどこか避けている。基本的に、「受け身」体質な生徒だと2校を経験して思っていました。
私が生徒の時も同じような雰囲気ではあったのだと思うのですが、教壇に立ってみてより一層実感することが多くなりました。
彼らこそ「いい子症候群」
そして、「みんなの前で褒めないでください。」
現代の教育のあり方を1から、根本から考え直す機会になりました。そして、社会からと生徒から求められている社会的・教育的ニーズの差に困惑したのも事実です。
社会のニーズとしては、先行き不透明な社会を「個」を大切にしながら、他者と協働し、持続可能な社会の創り手になること。
彼らのニーズとしては、なるべく「個」を前面に出さず、目立つことなく、他者に溶け込み、平和に「普通」に過ごすこと。
ではないでしょうか。
この事実を痛感した時、「あれ?私は…?」と考えてしまいました。確かに、私も高校生の時、目立つことなく、ひっそりとかげを顰め、少しでも目立つとコソコソされてしまうことに怯えていたのではないでしょうか。先生や大人には「いい顔」をする生徒を演じ、荒波を少しでも立てずに一生懸命高校生をこなしていたように思います。
今の高校生も私の頃と変わらないのであれば、教員となった私は彼らに何ができるのか。
自称にはなると思いますが、「いい子症候群」だった私はどのように「教育」を向き合うべきなのか。考えさせられる1冊となりました。
その答えは、これからも変わっていくと思いますが、私がまずしていくこととしては2つ。
こういう子がいるという現状を常に意識すること。「いい子症候群」となってしまう要因は多方にわたると思います。家庭環境や今までの教育関係、彼らの大きな世界となっている人間関係等。一つ一つの要因を考慮していき、生徒理解を怠らないこと。そして、「いい子症候群」の子達の上手い付き合い方を教員自身が勉強し続けること。
そしてもう一つ、私自身がそうだったように、誰もが「いい子症候群」になりたくてなっているわけではないと思います。無意識的な何か、暗黙の了解や、周りの雰囲気からそうなっているのではないでしょうか。そして、自己肯定感の低さも考えられます。
ただ、自分では気づいていないだろうけど、彼らの中にも譲れない「自分」というものが存在している。胸の中に隠している「自分」と向き合い、探していくことの大切さを伝え続けること。いつか自分のことを客観的に見れるようになる時に、「自分」という可能性を最大限に活せることが自己効用感や社会・他者との繋がりへとなり、それこそ持続可能な社会の創り手となるエネルギーと変わっていくことを、彼らと語り続けること。
だからそこ「教育」の本質。子どもたちとの心の繋がりから生まれる「教育」をいつまでも見失わず、向き合っていきたいと強く思いました。一人一人をみて、そして「あなたって素晴らしいんだよ。可能性を秘めているんだよ」と伝え続けていきます。
一緒に、「自分」と向き合っていこうね。