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システム思考:無視される「遅れ」という概念(中国のコンテナ問題と学習する組織)

■「遅れ」という概念

システムダイナミクスは、原因と結果のフィードバックループを元に世界の動きを明らかにするものであるが、その中で「遅れ」という概念は重要である。

ピーター・センゲの「学習する組織」では、この遅れについて重要な記載があるので引用しておこう。

行動と結果の間の遅れは、人間のシステムのいたるところにある私たちは遠い将来に利益を得るために今投資をする。私たちは今日ある人を雇うが、その人が十分生産性を高めるには数ヶ月かかるだろうし、利益を生むのは数年後と知りながら新規プロジェクトに資源を投じる。だが、遅れは正しく評価されず、不安定につながることが多い。

すべてのフィードバック・プロセスには何らかの形で遅れがあると言っても良い。だが、その遅れが認識されていないか、良く理解されていないことが多いのである。これが結果的に「行き過ぎ」を招き、望ましい結果を得るのに必要なレベル以上に進んでしまうのである。

(「学習する組織」 P148)

■中国のコンテナ問題

そんな馬鹿なと思う人もいるかもしれない。
そんなことは分かっているという。しかし、世界はそうではない。

○【ルポ】中国「空きコンテナ山積み」の現場を歩く
仕事激減にあえぐトレーラー運転手の悲哀

浙江省の寧波舟山港は、コンテナの年間取扱量が3300万TEU(20フィートコンテナ換算)を超える中国最大級のコンテナ港だ。なかでも同港の「北侖港区」は、広大な埠頭に多数のガントリー・クレーンが立ち並ぶコンテナ輸送ビジネスの中心地である。

2023年3月上旬、北侖港区を訪れた財新記者の目に飛び込んできたのは、色とりどりのコンテナが港区内に溢れ、積み上げられた高さが6~7段に上っている光景だった。

これらはすべて貨物が入っていない「空き箱」だ。なぜなら、貨物が入ったコンテナは(重量上の制限で)5段までしか積めないからだ。

https://toyokeizai.net/articles/-/665805?utm_source=smartnews&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=article

需要の予測は間違っていないのかもしれない。しかし、今足りないからと言ってたくさん作っても、定常化したときには過剰在庫になるか、生産過剰になるのは目に見えているはずなのに多くの企業がその誤りにはまると聞く。

■遅れを最小限にする取り組み

採用した日から優秀な人材として活躍できる訳ではない。
特に新卒ではそうだろう。しかし、中途であればその遅れは発生しないのだろうか。

○三井住友は7割増・三菱UFJは5割増…メガバンクが中途採用の大幅増で獲得したい人材
2023年04月15日

メガバンクは2023年度の中途採用数を大幅に引き上げる。三井住友銀行は、23年度に22年度比7割増となる約170人まで採用数を拡大する。三菱UFJ銀行も同5割増の約200人を採る。22年度に326人を採用したみずほグループ主要3社は、23年度に同水準以上を採用する計画。新卒に偏向していた採用方針を転換し、デジタル領域をはじめとする中途専門人材の採用を急ぐ。新たな金融サービスの開発やビジネスモデルの変革につなげる。

https://newswitch.jp/p/36616

他者で優秀な人材は、その会社での固有技術が発揮できるから優秀なのであろう。中途だからすぐに成果を出せるとは限らない。せいぜい、見極めの時間的余裕を短くできる程度であろう。

システム思考の「遅れ」を意識した戦略であることを願う。

<閑話休題>

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