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世間に転がる意味不明:閉店に群がる人々(タクシー会社の存続意義)

■不思議な地元の人々の声

結局のところタクシーとは何だろう。
多くの公共機関が、停車場をつなぐ路線での運行が前提となり、そこから目的地が離れていれば代替手段を使うしかない。それはポイントツーポイントという点をつなぐ手段であり、そこにタクシーの意義がある。

そのニーズはアドホックであり、事前にルートを予測できるものでもなく、需要予測も難しい。勢い、状況に合わせた台車を用意するしかない。当然、企業経営である以上、損益分岐点がありそれを満たさなければ事業は継続できない。

簡単に言えばお客さんがいなければ事業を廃止するしかなく、地方のタクシー会社の苦悩はここにある。

○青森市で相次ぐタクシー廃業…背景は? “青森県最古”珍田タクシー破産開始決定に市民困惑
2024年11月11日

青森市タクシー協会によりますと、先月には「一番・リンクタクシー」が営業を終了。
今回の珍田と合わせ市内のタクシー台数は60台ほど減少するということです。

★青森市民
「大変だよねタクシーも少なくなれば」
「びっくりですね」
「バスも便数が少なくなってますしね」

https://news.ntv.co.jp/n/rab/category/society/rab2d8b4bef5d24d29bd31c08ad8b81e2e

デパートなどの商業施設の閉店などで最後の日にヒトが殺到するときに「よく利用していたのに残念」と言った声が聞くが「うそ」である。利用する人が減ったから閉店するのである。同じように、タクシーの利用者が安定的にいないから廃業するのである。ゼロではないが困るヒトは少ない。

弱者救済は別の方法ですべきであろう。タクシーの会社が行なっているのは慈善事業ではない。

■窮すれば通ず

交通弱者への対応は、政府からのトップダウンで行なうことは現実的でない。なぜならば、「やれ」と言ってできることは既存の単一政策の延長線上でしか発想が生まれないからだ。縦割り行政とはそういうものである。

従って、複数の利害関係者の知恵の出し合いからしか解決策は生まれないし、まずは「小さく始める」を実践するしかない。

下記などがよい事例になることを祈る。

○沖縄で徐々に浸透する「mobi」、高齢者から学生まで利用する日常の移動手段に
2024年11月6日

 mobiは、KDDIとWILLERが出資するCommunity Mobilityが運営する乗り合い型の移動サービス。スマートフォンアプリから乗車を希望でき、AIで最適なルートを設定しつつ運行される。南風原町の場合、30日/5000円の定額プランのほか、6回乗車/2500円、1回乗車/500円のプランが設定されている。

 mobiアカウント登録数は600(一部町外含む)ほど。開始から3カ月間での利用回数は4000回に上る。町担当者によれば、滑り出しとしては好調。ショッピングセンターや運動施設などでの利用が目立ち、高齢者から「外出の機会が増えた」「買い物しやすくなった」という声が聞かれているという。

https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/1636875.html

■制度設計をしっかりすること

では需要があるから供給をそれに近づければよいかと言えばそんなことはない。
インバウンドの影響でリゾート地ではタクシーが不足するという。
その対策として「ライドシェア」が注目されている。

○リゾート地もタクシー不足 長野で「公共ライドシェア」実証実験へ
2024/10/16

JR東日本などは11月1日から「公共ライドシェア」の実証実験を長野県野沢温泉村で始める。全国有数のリゾート地として知られる野沢温泉村でもタクシー不足が社会問題化しており、地元観光団体などと共同で、観光客や地域住民の足としての活用を検証する。

https://mainichi.jp/articles/20241016/k00/00m/020/139000c

しかし、これは視点がずれている。

まず一点目は、タクシー会社はピーク時に合わせて台車を用意できない。なぜならば、ピーク時で無ければタクシーは余ってしまい、その間ドライバーをクビにはできない。二点目は、多くのタクシードラーバーは歩合制である。閑散期では生活できない。したがって、タクシー会社は余剰のパワーを保持できない。

インバウンドで観光客が多い時期にだけタクシーを増やすことができない。タクシーが不足するのではない。そもそもタクシーの需要がピーク時と閑散期で差がありすぎることが問題なのである。

これをライドシェアで埋めようとするが、考えてみるとこれも難しい。なぜならば、観光シーズンは自分も他の観光地に出かけている可能性がある上に、そもそも十分に稼げないから皆が敬遠するのである。一時的な解決になっても恒常的な解決策にならない。

三点目は、会社が運営するという発想は悪くないが、リスクと費用負担の考え方を整理しないままでの以降は同床異夢を発生させかねない点である。

これまでのタクシードライバーは二種免許を取得し専門的な訓練を受けている。これに対し、一般ドライバーは一定の教育を受けているとしても素人である。事故時対応や、深夜の犯罪対応、酔っ払い対応などはプロのドライバーに任せたい。幸い「ライドシェア」は起点と終点が定められており予約制でもあり、決済も済んでいるのでドライバーに負担が少ない。ライドシェアのドライバーには軽量なサービスを、プロのドライバーには今までと同じサービスをということで「ダイナミックプライス」を導入すべきである。

今までと同じタクシーサービスを求めるならば今よりも運賃負担を顧客に求めるべきである。従って、現在の運賃を政府が許可する仕組みも廃止すべきである。

こうした政策論議が出てこないのは残念である。
2024/11/13

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