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世間に転がる意味不明:自分の足を食う蛸(賃金アップのまやかし)

世間に転がる意味不明:自分の足を食う蛸(賃金アップのまやかし)

ちょっともやっとするのでコメント。
浮かれる気分になっていて大丈夫かな?

■景気が良いとは思えない現実

2024年度は賃上げのニュースでわいた。

○連合の春闘賃上げ率、3次集計は5.24% 中小組合健闘で高水準維持
2024年4月4日

賃上げ率は1991年の5.66%(最終集計)以来33年ぶりの高水準。会見した芳野友子会長は「新たな経済社会へのステージ転換に向けた大きな一歩になっている」との認識を改めて示し、この先も交渉が継続していく中で高い水準が維持されることに期待を示した。

https://jp.reuters.com/business/RKUQRCP5IFN6XNTRX5CDEOFTKA-2024-04-04/

しかし、これが実感できる状況ではないことは実質賃金がマイナスの状況が続いていることから明らかであろう。節約志向は続き、日銀が言うような「物価上昇と賃金上昇の好循環」などは幻想ではないかと感じる。

○実質賃金2月1.3%減 23カ月マイナス、過去最長に並ぶ
2024年4月8日

厚生労働省が8日発表した2月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上の事業所)によると、1人あたりの賃金は物価を考慮した実質で前年同月から1.3%減少した。マイナスは23カ月連続。物価の伸びに賃金が追いつかない状況が続く。

実質賃金の減少率は1月の1.1%から拡大した。23カ月連続のマイナスはリーマン・ショック前後の2007年9月〜09年7月以来で、比較可能な1991年以降の過去最長に並んだ。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA052RB0V00C24A4000000/

賃上げができない企業での従業員や非正規労働者の苦境は拡大するばかりである。
では、企業の先の見通しはどうかと言えば、それも芳しくはない。

○大企業製造業の景況感4四半期ぶり悪化、自動車生産停止で-日銀短観
2024年4月1日

日銀は先月の金融政策決定会合で、マイナス金利解除など大規模緩和の見直しを決めた。33年ぶりの高い賃上げ率となっている今年の春闘などを受けて、賃金と物価の好循環が確認され、2%の物価安定目標の実現が見通せる状況に至ったとした。市場の関心は今後の利上げペースに移っている。日銀は今後の自動車生産の回復など経済・物価動向を慎重に点検して、利上げのタイミングを判断していくとみられる。

  SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストは、「製造業の悪化はいくつかの自動車関連の不祥事によるものであり、その影響は一時的」と指摘。全体的に日本経済が今後も緩やかな回復を継続を示唆する内容だとし、「今回の短観で日銀の政策スタンスが変わるということはないだろう。次の利上げが早まったとか遅くなったとかはない」との見方を示した。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-04-01/SAZFLUT1UM0W00

安定とはほど遠いだろう。

■減税にすがる企業

そうした中でふと目についた記事がある。

○日産自動車、賃上げ税優遇の資格喪失 下請法違反問題で
2024年4月6日

賃上げ促進税制は法人税負担を軽くするための税優遇で、優遇率は企業の規模や賃上げの幅などの条件で決まる。大企業では2024年度以降、給与の増額分の最大35%が法人税から差し引かれる仕組み。22年度は約21万5000件が適用され、適用額は5150億円だった。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC0606A0W4A400C2000000/

賃上げ税制については中小企業庁の下記のサイトに掲載されているが下記の記事の方がわかりやすい。

○賃上げ促進税制とは 条件に応じて3段階で優遇
2023年9月2日

中小企業の場合は雇用者全体の給与総額を前年度と比べて1.5%以上増やせば、増加分の15%を法人税額から引く。給与総額を2.5%以上増やせば税額控除は30%になる。教育訓練費を10%以上増やすと上積みされ、最大40%の控除が受けられる。大企業の場合は前年度から継続して雇っている人の給与の総額で判断し、法人税の税額控除は最大で30%に設定している。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA018OA0R00C23A9000000/

こうした企業への減税措置は安倍政権から続いている政策であり岸田内閣でも踏襲している。こうした減税資金を基にして賃上げが実現しているとしたら、賃上げは企業業績とは関係なく、税の還元と言える。

まやかし以外の何者でもない。

なぜなら、政府の活動が税金で行われるものの、その税金を取るべき所から取らないで戻し、市民からの税収で賄うという発想にしか過ぎず、仮に、その一部が従業員に戻ったとしてもその恩恵にあずかれない人々は単に物価高と増税に苦しむだけである。政府の収入のつじつま合わせのために従業員の社会保険料などが増えるのであれば、何のことはない、税金の流れが変わるだけであり、何も構造は変わっていない。

もっとも、企業の60%から70%が税金を払っていないという状況が続いているのがここ10年の流れであろう。アベノミクスは、企業が税金を払わなくて済むようにし、市民からは税金を増やすという側面を否定できない。賃金が上がるからと言うが、これはまるで自分の足を食べる蛸のようなものである。

■税金に焦点を当てた議論

ただし、上記の様な論は実際のデータを基にしていないので正しいとは言えない。単に感覚的な話である。しかし、今年の経済の話題が「賃上げ」に終始し、政府の経済運営には触れていない。

仮に「賃上げ」が税制優遇の結果であれば、来年は賃上げを期待できない。正確には、この優遇措置(税収の一部の放棄)が続かない限り来年は賃上げが止る恐れもある。いったん上げた賃金は下げられない。資金がなくなればリストラになる。

こうした税制のゆがみで今年の春闘が支えられているという現実に焦点を当てて報道して欲しいと思うのは私だけなのだろうか。

(2024/04/10)

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