世間に転がる意味不明:「お金は大事だよ」(パフォーマンス指標のない大阪万博の混迷)
手段と目的の混同は統制のとれないお金の使い方を招く。
よーく考えようー、お金は大事だよー
■お金の問題を説明しないことのリスク
予実管理は企業活動では当然行なわれる。
それはお金についても同じである。
どのぐらい使う予定であるのか。実際はどうであったのか。
これを確認しなければコントロールされた資金運用などはできない。
しかし、こと国のイベントになると話がおかしくなる。
みな、おかしな思惑で動いてしまうからだ。
○つまずいた札幌オリンピック招致、要因は30年大会への後ろ倒し
2023年12月7日
開催が決まれば、五輪は国家プロジェクトになり、開催に伴う関連工事にも国費が投入される。念頭にあったのは、1964年の東京五輪に間に合うように突貫工事で完成した東海道新幹線の東京―新大阪間の開通だった。
https://www.asahi.com/articles/ASRD65DZ6RD6IIPE00N.html
インフラ整備が目的であり、オリンピック開催は手段である。
インフラ整備に国費が投入されるので、招致活動にお金をかけても元が取れるという算盤であっただろう。
これ自体は間違っていない。
しかし、そうであるなら、こうした思惑を公開すべきであろう。さもないと、なぜ税金が使われるのかの納得性は得られない。
■インプットとアウトプット
1969年の東京オリンピックは、日本を元気にするなどの国策があり開催すること自体が目的であり、評価指標は「開催」そのものであっただろう。当時の開催を進めるためには、ホテルなどの宿泊施設の確保や、世界でも例を見ない「都市内部への高速道路の整備」などが必要であり、これは結果ではなく開催のためのインフラ整備である。インプットになるとともに制約条件である。
したがって、開催できたこと自体がパフォーマンスの証であることは理解できる。一方でこうしたイベントの評価指標として「経済効果」を持ち出しているがこれは正しくない。なぜなら、経済効果の数字は識者の都合の良い数字であり客観性に欠けるからだ。すなわちインプットとアウトプットの因果関係が主観的すぎると考えている。
■大阪万博の混乱
一体いくら必要なのか。全体像が分からないのは混乱を招く。
○首相、万博費用「早急に全体像」 省庁に作業指示
2023/12/08
岸田文雄首相は8日の参院予算委員会で、25年大阪・関西万博の整備費増額問題を巡り、会場や周辺インフラの整備など費用の全体像を早急に示す考えを示した。
万博は会場整備費が当初見込みの1.9倍となる最大2350億円に増加。これとは別に、国の負担が約837億円に上ることも判明している。
https://nordot.app/1105774866595365473
また、負担に関しても大阪府知事の発言は二転三転する。
○万博運営費の増額 「赤字でも大阪府市は負担せず」 吉村知事ら
2023年12月11日
2025年大阪・関西万博の運営費が1千億円超に引き上げられる見通しとなったことをめぐり、大阪府の吉村洋文知事と大阪市の横山英幸市長は11日、運営費に充てる収入が不足した場合の対応について、府と大阪市が公費負担することはないとの考えを示した。
運営費は主に入場料収入でまかなうことになっているが、不足した場合の対応は決まっていない。約1200億円の赤字となった00年のドイツ・ハノーバー万博では、政府と地元自治体が穴埋めしている。
https://www.asahi.com/articles/ASRDC64WDRDCOXIE038.html
「運営費は主に入場料収入でまかなうことになっているが、不足した場合の対応は決まっていない。」は驚くばかりである。
■目標を達成するための施策の計測可能性
目的は何なのだろう。
関西圏の経済の活性化というのであれば国費を使う正当性はない。仮に使うとしてもパフォーマンス評価をするべきである。
しかし、アウトプットとインプットの因果関係を無視してはならない。たとえば、アウトプット指標として「経済効果」を持ち出すのは正しくない。
経済効果と云うが、こうしたイベントの直接的な効果は恣意的に行なわれることが多く、少なくとも納得性はない。なぜなら、あくまでも推測であり事実データを積み上げたもので検証した例がないからである。
インプットにしても「夢洲という埋め立て地」の活用と云うことを問題に混ぜると混乱する。それは、大阪万博とは無縁であるからだ。それでも費用はかかる。
○IR建設予定地の夢洲、液状化対策工事始まる 万博会場隣接地
2023/12/4
本体工事の着工は25年春ごろの予定。隣接地では同年4月に大阪・関西万博が開幕することから、工事が同時並行で進むことによる車両の渋滞や安全面など万博への影響が懸念されている。
液状化の恐れは事業者の調査で判明し、土地を所有する市が、液状化▽土壌汚染▽地中障害物――の対策費として計788億円を上限に負担する。
https://mainichi.jp/articles/20231204/k00/00m/040/131000c
システム思考を無視し、因果律を無視すればパフォーマンス評価はできない。
それは単にイベントを開催したいという欲望だけの具現化に終わるからだ。
2021年の東京オリンピックは日本国という枠組みでは何も残していないことに思いをはせるべきである。
(2023/12/13)
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