世間に転がる意味不明:栄華盛衰(建築土木の50年という月日の流れ)
■花形産業の斜陽化
1970年に新宿に京王プラザホテルが建設された。今から50年以上前である。
当時は、建築・土木は花形であり、大学にしても建築学科は人気の学科であった。
父親が建具職人であり、建設現場にも着いていったこともあり、大学は建築・土木系に進んだ。
もっとも、何の縁か知らないがIT系に行くことになったのは不思議な巡り合わせであった。
節目を感じたのは、その10年後ぐらいだっただろうか。大学の教授が卒業生の進路が確保できずに悩んでいた気がする。建設関係の企業が採用枠を減らしていた気がする。当時から斜陽化が進んでいたのかもしれない。
もちろん、当時はまだ主要産業でもあり、人気の産業ではあったと思う。
国土交通省が四全総などをまだぶち上げていた時代である。
しかし、時代はいつの間にか、自動車産業、IT産業にシフトして行き、産業の影を落としていたのではないだろうか。
公共工事が十分に用意されなければ建築・土木は事業として安定しない。海外に活路を見いだせるゼネコンでなければ地方の建設関係の企業は苦しくなる。
■地方の建設会社の倒産がもたらすもの
地方のニュースではあるが、こうしたニュースもなにげに目にするようになった。
○「高橋建設」が破産手続き開始決定 負債額およそ5700万円 公共工事の予算削減により発注量が減少
2024年11月7日
帝国データバンク鳥取支店によりますと、高橋建設は1952年に設立された土木工事業者で、日野町など地元の官公庁から国道、県道の維持・修繕、河川改修、堰堤などの各工事を手がけ、1999年には年間の売上高およそ3億1500万円を計上していました。
しかしその後は、公共工事の予算削減により発注量が減少傾向となり、2023年5月の年間売上高は、およそ6200万円にまで落ち込み、採算性も十分に確保できず、財務内容は債務超過に陥っていました。
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/bss/1536080?display=1
建設業の苦境は常態化しているようで、今後に期待ができるのかと言えば不安である。
○建設業の倒産、過去10年で最悪ペース 人手不足→人件費高騰の悪循環で大打撃
2024年11月08日
中小建設業の苦境が続いている。帝国データバンクが調査結果を発表し、2024年10月末までに建設業の倒産が1566件あったことが分かった。8年ぶりの高水準を記録した2023年を上回るペースで推移しており、通年として過去10年で最多を更新する見込みだ。
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2411/08/news040.html
こうした自力のない企業の退場は仕方が無いとしても、多くの副作用をもたらす。
①災害時対応
東日本大震災の時にも問題になったが、地元に建設会社が少ないために重機が足りないと言うことを聞いた気がする。また、能登半島での地震について、別の地方の建設業者に「応援には行かないんですか」と聞いたが、事情は言えないが「ゆけない」そうだ。
結局、人手も足りない、重機もないという状況が発生する。地元の建設業者が仕切るので債権に恐ろしく時間がかかる。
②体制の確立ができない
大手ゼネコンが実行部隊を持っているわけではない。業者に発注する。しかし、下請け業者が調達できない。結果として応札できないと言う状況が発生する。
資材の高騰、人手不足だけではない。いわゆるサブコンの調達もできない。受注してくれる地方の建設業者がいない。となると、工事案件が積み残しになる。国土強靭かどころではない。
■リスクの色々
①下請法の強化
いわゆるフリーランス新法が施行された。建設業界は多重下請けで構成されており、一人親方も多い。昔は電話一本で来てくれた時代もあるが今は無理である。管理コストの増大は無視できない。
下記記事も参考にして欲しい。
○フリーランス新法で「建設業者」は「何を」すべき?「義務付け7項目」など徹底解説
2024/11/08
建設業者が特に留意すべきなのは、「偽装1人親方」の存在です。偽装1人親方は、本来であれば発注事業者が「雇用」しなければならない人を「外注(業務委託等)」している場合を指します。なぜ、あえて雇用ではなく、外注にしているのでしょうか。
https://www.sbbit.jp/article/st/151691
②人の命
先日黒部ダムに行ってきた。この工事では多くの作業員の命が奪われ、慰霊碑が建てられている。現代では許されるものではない。にもかかわらず、先般の東京オリンピックでは過労死などが発生している。社会の目が厳しくなり、大阪万博でも事故が起きるたびに工事は中断し、納期が延びる。
納期が延びてもヒトは拘束される。しかし、これに伴い工賃が増えることはないだろう。
体力にない事業者は持たないのではないかと危惧する。
■諸行無常
今は栄華を誇る企業も10年先は分からない。
下記を他山の石としない方が良い。
○ついに「経済大国ドイツ」の空中分解がはじまった…EVシフトで大失敗「大失業時代」を招いたショルツ政権の誤算
2024/11/05
ドイツ最大の労働組合である金属産業労組IGメタルが10月28日に明らかにしたところによると、同国を代表する世界的な完成車メーカーであるフォルクスワーゲン社(VW)は、今後、国内の工場を少なくとも3つ閉鎖すると、IGメタル側に説明したようだ。その結果、少なくとも数万人規模の雇用が整理される見通しだという。
https://president.jp/articles/-/87757
2024/11/11
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