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世間に転がる意味不明:技術革新がもたらす職業の衰退(そして誰もいなくなった)
技術の革新は止められない。それでも人間自身がもたらすものが失われるわけではない。
生身の人間に対するニーズがなくなるわけではない。それは何だろうか。
※長いよ
■電話交換手
技術革新でなくなった職業の代名詞としては電話交換手があるだろう。かつては電話はpeer-to-peerで回線をつなぐ必要があり、これを人手が行なっていた。多くは女性が行ない花形の職種だったと聞く。
技術革新とまでは行かないがエレベーターガールもついぞ見かけることはなくなった。エレベーターの安全性工場が背景にあるかもしれない。
革新とまでは行かなくとも、少しづつの製品改良や習慣の変化はそれまで普通にあった職業がなくなることを後押しするものであろう。
なにげに「受付嬢」も見なくなった。男女に関しての差別撤廃などの意識変化やコミュニケーション機器の高度化が後押ししているかもしれない。
これに加え、近年のIT技術の高度化は、これにますます拍車をかけるかもしれない。
■誘導員/監視員
○駐車券なしゲートなし“性善説”で大丈夫? 「ナンバープレートで管理する駐車場」が増える“意外な理由”とは
2025.01.04
このタイプの駐車場ですが、ゲートが存在しないのをいいことに、未払いで出庫してしまう車両などはいないのでしょうか。
以前、「ゲートレス駐車場」のシステムを開発・管理する会社の担当者にこの懸念について聞いてみると、「未精算車両の割合は、カメラによる抑止力もあり、ゲート式よりもむしろ低下しています」と驚きの回答が返ってきました。
例えばこのシステムの場合、誤って未払いで通過してしまった車両に関しても後日利用した際に精算機で未払い分を精算してもらう仕組みがあるそうです。また、故意に駐車料金を払わない悪質なドライバーについては、その車両ナンバーを登録し、次回来場した際には店側の関係者へメールで通知するシステムも備えています。
https://trafficnews.jp/post/500468
かつて駐車場と言えば入り口付近にゲートがあり、監視員が切符を切ってゲートを開け閉めしていた構図を思い出す。今はゲートがあっても人はおらず、さらに言えばゲートすらなく、車止めすらないスーパーも多くなった。
混雑時には誘導員がいる場合もあるが、いずれセンサーや誘導灯を改良してそうした人手も必要なくなる時代が来るだろう。
都心の大型オフィスビルではロボットが巡回し、警備員が立っている必要も無くなってきている。いざというときに駆けつける要員はいるが、それは現場ではない。
プールの監視員も今は昔の光景になるかもしれない。
■バス運転手
2024年問題に端を発した人手不足問題は、運転手不足を引き起こし運送業やタクシードライバー、バス運転手の不足やそれに付随した争奪戦を引き起こしていると聞く。しかし、こうしたことに皆が指をくわえて途方に暮れているかと言えばそんなことはなく、特に自動運転への取り組みには目を見張るものがある。
○NTT、名古屋で自動運転シャトル便 一般道で時速48キロ
2024年12月6日
NTTグループは名古屋市で自動運転のシャトル便の定期運行を始めた。運転手なしで運行が可能になる「レベル4」の実現を見据え、交通量の多い都市部の幹線道路を走る。2025年3月までの定期運行を通じて自動運転を市民に身近に感じてもらい、社会の受容性を高める。
シャトル便は10月に開業した日本最大のスタートアップ育成拠点「ステーションAi」と名古屋駅の間の往復9.3キロメートルを走る。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC063040W4A101C2000000/
まだ限られた条件内での実証実験の段階であるが、いつかはこれが一般化するだろう。少なくとも今のような人数を確保しなければならないことはなくなるかもしれない。自動運転はタクシードライバーの有り様を変えるだろうし、すでに自動運転のトラック専用レーンの実証実験も始まろうとしている。
二種免許が必要な職種は減ってくるだろう。
■研修講師
知的活動だと自負する人たちの職種も怪しくなってきている。
○ みずほ銀行、AIアバターで研修 営業担当2500人育成へ
2025年1月31日
みずほ銀行は営業担当者を対象に、人工知能(AI)アバターによるロールプレイング研修を2024年12月から試験導入している。対人による従来の研修では年に2回しかなかったロールプレイングの機会がAIアバター活用により実質的に制限がなくなり、一人でも自分の顧客対応の練習を点数にして振り返りが容易になった。今後AIアバターのロールプレイング研修を活用し、約2500人の営業担当者を教育する考えだ。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC165930W5A110C2000000/
「一は全、全は一」という言葉が彷彿される。AIは個々の独立した何かではない。お互いに情報を共有し学習してゆく可能性を秘めている。彼らが最適な何かを模索する過程はコンサルタントがその知識を研ぎ澄ます過程に似ている。
AIに知的活動は無理だというのは幻想に過ぎない。
研修講師だと今の地位にあぐらをかいていると足下をすくわれかねない。
■教師
一人一人に寄り添うことが難しいのは、教師が同時に多くの子供たちと対峙しなければならないからだ。そもそも、勉強を同じペースでしなければならない理由は何か。同じ教室に集まらなければならない理由は何か。こうしたことを問いかける必要がある。
共同で暮らすことや、何かの行事を行なう集団生活が必要だというならば、それは学習と分離すべきである。
○ デジタル教科書、通信トラブルや検定対象の範囲に懸念残る…学習効果不明のまま推進
2025/01/19
文部科学省が、紙の教科書の「代替教材」としているデジタル教科書を正式な教科書に位置づけたうえで、紙とデジタルのどちらを使うかは各教育委員会が決める「選択制」の導入を検討していることが18日、わかった。実現すれば、デジタルだけで学ぶ児童生徒が出てくることになる。学校教育の基盤となる教科書のあり方を大きく転換するもので、議論を呼びそうだ。
https://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/kyoiku/news/20250119-OYT1T50007/
非難めいたことに目を向けるべきではない。
教師の負担を減らすこと、一人一人に寄り添った学習環境を整備すること。こうしたことに目を向けるべきである。
勉強を強いる教師は不要になる時代を夢想してみるのも良い。これまでの教師は不要になるかもしれない。新しい教師像を作るべきである。
■通訳
こうした、IT技術の革新はプロフェッショナルの有り様も変えるだろう。
○80カ国語ペラペラ、原稿ノーミス?“AIアナウンサー”に現役アナも驚嘆「人間じゃ無理」
2025/01/23
AIアナウンサーは日本語だけではなく、英語、韓国語、ロシア語など80カ国以上も話すことができ、アバターの外見や声の質、トーンなども自由に変更が可能だ。その対応言語の多さに楪アナは「もうスーパーハイパーウーマンじゃないですか。まず人間じゃ無理」と驚嘆した。
このシステムは、今月22日から、沖縄の琉球朝日放送で導入され、実在するアナウンサーの声と姿が似たアバターがニュースを読み上げる予定だという。
https://times.abema.tv/articles/-/10160598?page=1
すでに空港などでは、自動翻訳をパネルに映し出すサービスが実用化している。みどりの窓口でもスマフォに自国語で音声入力し、翻訳した内容を相手に見せて意思疎通を図っている現場を見ている。
人型ロボット、あるいはアバターを介して自動翻訳が行なわれれば、通訳なども不要になるかもしれない。観光地でのガイドをロボットに任せて、いわゆる観光地を案内する人も不要になるかもしれない。
■コンサルタント
AIに負けないと自負するプロフェッショナルの居場所もなくなるかもしれない。
○ウォール街から20万人分の雇用消失も-AIが人間の役割侵食
William Shaw
2025年1月10日
世界的な金融危機後、業務プロセスの高速化とコスト削減のためにIT(情報技術)システムの更新に何年も費やしてきた銀行業界は、生産性をさらに改善させると期待し、新世代のAIツールをこぞって採用しようとしている。
シティは昨年6月のリポートで、AIは他のどのセクターよりも銀行業界の雇用を奪うとの見方を示した。それでも、多くの企業は、人間が完全にAIに取って代わられるのではなく、テクノロジーによってその役割が変化すると強調。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-01-10/SPT8T4T1UM0W00
人は誰でも知らない事は多々あり、それを教えてくれる相手や不安に思ったときに助言をしてくれる人を探している。未来は誰にも分からないのであるから、未来について助言するコンサルタントが正解を出すわけではない。確からしいと言うことになれば、それが人であってもAIであってもかまわない。
徐々にそれが一般化してくるならコンサルタントは不要になってくるだろう。
■特殊車両の運転
専門技術も怪しい。
すでに土木建築の世界では国土交通省が提唱する「Construction2.0」が推進され、重機を始め建設機械の自動運転化が進められている。
○自動運転ブルドーザーで土木工事の無人化へ 清水建設
2024年3月29日
清水建設は、土木工事の無人化施工の実現に向けた技術開発の一環として、盛土工事に従事するブルドーザーの自動運転システムを構築、実機を用いた実証試験を通じて、建機の運転制御や物体検知、緊急停止など要素機能の実効性を確認したと発表した。
https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/1580444.html
違った意味での専門家は必要であろうが、こうした重機の運転技術を持った人間は今までと異なった職種になるだろう。
人が介在しなければならない場面はどんどん変ってくる。
■そして誰もいなくなった
事業を行なう場面では「アート・クラフト・サイエンス」がそれを支えると言われている。しかし、これらを人間が関わるという局面がどんどん減ってくるかもしれない。
昨年、アメリカで脚本をAIにさせることに対するストが起きた。日本では、声優が勝手にAIに学習させ代替することに対する著作権法上の懸念を表明している。
考えてみれば、娯楽作品をAIに自動生成させることも可能である。
アート作品に人が介在しないものも出てくる可能性もある。
料理もロボットにさせる子余も可能な時代である。
もう人はいらないのだろうか。
おそらくはそんなことはない。
人が人と接していたいと言うことは本能であろう。
感情的な部分がある以上は、その対象が人である必要がある。
鉄腕アトムで天馬博士が成長しないアトムに怒りをぶつけるのは当然のことだと感じる。
スポーツや芸術作品、娯楽作品も「不完全な人間」が何かを成し遂げるからこその感動がある。生身の人間である事を凌駕することは価値観の転移であり、それはまだできないと思っている。
しかし、そうしたニーズは限られたものであり、一大産業になるためには工夫が必要である。ラグビーのワールドカップ、F1レース、アイアンマンレースなどは巨大産業にはちがいないが成功者は限られる。
安穏とした働き方では市場にとどまれない。多くの人は「そして誰もいなくなった」市場には入り込めない。
自らを変革できる人だけが生き残れるという厳しい社会に移行するかもしれない。
2025/02/12