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世間に転がる意味不明:ヒトとは何か、働くとは何か(AIが突きつける幻想)

■生産性向上の局地

「世界中の食料 例えば 人の手を介さず、すべてまかなえるとしたらヒトは何をすべきなのか」と問いかけたのは、すでに30年以上前の若いときの議論だった。
答えがあるわけでもなく「非現実的だ」と一蹴されたことは覚えている。

AI技術の発展とロボティクスの高度化、そして2024年問題に端を発した人手不足問題への対峙は、あらゆる場面での自動化を促している。

ずいぶん前から「工場のロボット化での無人工場」「自動倉庫」「スマート農業」「土木の自動化」などは進んでおり、それがどんどん加速している。配膳ロボット、自動精算機などは飲食業でのフロアスタッフの退場を促しかねない。

そうなった時に人は何を考えるべきなのか。

○VW、ドイツ労働者約6.6万人がスト参加-労使対立に解決見えず
2024年12月2日

ドイツの自動車メーカー、フォルクスワーゲン(VW)では2日、およそ6万6000人の労働者が同国全土でストライキに参加した。「フォルクスワーゲン」ブランド部門におけるコスト削減策を巡る労使の対立は解決の糸口が見えていない。

  今回はいわゆる警告ストライキで、交渉が難航した際に経営陣に圧力をかけることを目的とした一時的なストだ。ドイツ国内の1カ所を除く全てのVW工場でストは実施され、「フォルクスワーゲン」ブランドのEVを生産するツウィッカウ工場がまずストに突入した。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-12-02/SNV4UXDWLU6800

現在の産業のほとんどは「ヒト」が介在する余地が多く、こうしたストは有効であろう。しかし、未来は分からない。そうなったときには再びラッダイト運動が起きるのであろうか。

■AIのコピー性能の脅威

そうした時代は技術的にはすぐそこに来ているのだろう。
現在のAIは、元ネタさえあればコピーをすることもアレンジすることも容易にできる。
これは、自らの知的創造だけでなく、自らの肉体的リソース(声や風貌、体型)さえも対象となりうる。

しばらく前にアメリカで脚本家たちが映画会社にAIで脚本を作ることを禁止させることに成功したと聞く。その脅威は、声優にまで波及しているのかと驚くニュースもあった。

○AIで音声など無断生成 声優らがルール作りを訴え啓発動画
2024年10月21日

声優らが加入する日本俳優連合によりますと、アニメのキャラクターの声で好きな歌を歌わせたり、朗読させたりするなど、生成AIを使って無断で作られた音声や映像がネット上に投稿されたり、販売されたりするケースが確認されているということです。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241021/k10014615291000.html

生成AIの技術は高度化の一途をたどっており、下記の様なサイトのデモを見ると驚く。

○runaway

Gen-3 Alpha は、大規模なマルチモーダル トレーニング用に構築された新しいインフラストラクチャ上で Runway によってトレーニングされた最初の次世代基礎モデルです。これは、Gen-2 に比べて忠実度、一貫性、動作が大幅に改善されており、一般的な世界モデルの構築に向けた一歩となります。

https://runwayml.com/research/introducing-gen-3-alpha

景色も作りだすことが可能であり、そこにAIで生成した人物を配置して演技させることも可能である。そこでは、物語のプロットだけで映画ができあがる世界がある。監督さえ要らない。プロデューサー、あるいは企画する人間だけいれば良いだけになる。

■経営者さえ要らない時代

バリューチェンでは基幹プロセスに、企画、設計、調達、製造、出荷、販売、サポートを軸として、研究、人事、法務、購買、総務などの支援プロセスがある。これらにそれぞれAIがサポートし、ロボティクスで自動化したとしたら人はほとんど要らなくなる。少なくとも今と同じ役割の人材は不要である。

その中には「経営者」も含まれる。
およそ利益を出すだけをミッションとする経営者などは不要である。
「年度計画」「3年計画」程度の事業計画はAIに任せれば良い。

経営理念は、「なぜ我々はここにいるのか」を基に「未来をどう描くか」を言語化したものである。それを基にした経営計画は「10年計画」「30年計画」「100年計画」であるべきである。そのぶれない基軸に責任を持つ存在は必要である。

経営計画の方向性をを制するのは「倫理観」であり、これは最終的には人が行なう必要がある。なぜなら、間違いを起こさない存在などないのだから。

手塚治虫氏の「火の鳥 未来編」をご存じだろうか。完全なる存在など無いと感じる作品の一つである。

こうした、AIによる完全自動化が進んでくる世界では、改めて「ヒトが何かを活動する」と言うことの意味を考える必要がある。「なぜ」を突き詰める能力を人間が高め無ければならない。

・完成と言うことはない
 今手がけているこの作品は完成しているわけではない。完成を見たい。
・もっと良くした
 今のこの世界が最良というわけではない。もっと良くしたい。何かできるはずだ。
・もっと高見に行きたい
 単に優れた程度では満足できない。プロフェッショナルになりたい。

この世界は不完全だ。だからこそ、私たちがいる価値がある。
こうした思いにならなければ経営者にすらなれないかもしれない。

■考える習慣

「なぜ」を常に考えることが働くことの前提条件だとすれば、我々はこうした素養を身につけるための教育を受けていない。

現在、多くの企業は社員に「課題発見力 課題解決力」を求める。
しかし、思い出して欲しい。私たちは小さい頃から、「先生の言うことを聞く」(疑問を挟まない)「100点を目指す」(あらかじめ答えが決まっている問題しか解かない)教育を受けている。「なぜ」を突き詰める訓練をしていない。

突然「課題発見力 課題解決力」など身につかない。
「世界は何か」「ヒトとは何か」を議論させるところから始めるべきである。
さもないと「仕事とは何か」の再定義もできないだろう。

三つ子の魂百まで。侮ってはいけない。

2024/12/03

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