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世間に転がる意味不明:エピソードを積み上げても統計データにならない(ライドシェアを考える)

世間に転がる意味不明:エピソードを積み上げても統計データにならない(ライドシェアを考える)

■安易な報道

事実かも知れないが事実ではないかもしれない。

○ライドシェアで年収1,000万円も!自動運転&MaaS、気になる求人4選【

愛知県名古屋市のフジタクシーグループでは、ライドシェア夜勤ドライバーを募集している。勤務時間は19:00~翌6:30(休憩2時間26分)でシフト制、総労働時間は1週あたり45時間となっている。

夜勤のみの勤務のため日勤よりも給与設定が高く、月給は一律手当を含み30〜95万だ。最大月給の95万を得られるとするなら、年収1,000万円超えも夢ではないということだ。求人情報には「社歴や年齢に関わらず頑張った分しっかり還元!」との記載がある。

https://jidounten-lab.com/u_47972

ここで分かる事実は、
・勤務時間は19:00~翌6:30(休憩2時間26分)でシフト制
・総労働時間は1週あたり45時間
・月給は一律手当を含み30〜95万
で募集していると言うことだけである。

誰でもが1000万円を手に入れられるわけではない。
考えてもみて欲しい、仮に週45時間、50週を働いて1000万円が支払われるとしたら、時給換算で4500円近くなる。

仮にそれだけの報酬を得られるならば、普通に募集したらいくらでも人は集まるだろう。
一方で当たり前のタクシー運転手の募集で人が集まらない現実を無視してはならない。

■運転手不足の本質

ライドシェアの話題の発端は2024年問題があることはすでに知られている。これは、現在のドライバーに過剰な時間外労働を強いていることや、そうでなければ生活が維持できない程度の報酬しか手に入らないことを意味している。

そういう労働環境に飛び込む人は限られており、これが運転手不足につながる。
タクシー運転手は多くの技能的な要求や安全運転を当然とした接客なども必要であり、大種免許や技能的な試験の延長線上に一部の人々に許された職業でもある。

そうであれば、資格を緩くして誰でも参入できるようにすれば良いと言う発想は悪くはない。安全面やサービス面でのトレードオフをどこかで許容するかの話なので、タクシー会社の管理下の元で運用するというのは不合理な話ではない。

参入障壁が下がり、比較的高収入であれば参画を望む人々もいるだろう。

○タクシー不足解消へ! 福岡でもライドシェアスタート
2024/06/12

福岡市に住む井野和弘さん65歳です。

木戸優雅アナウンサー
Q.なぜ、ライドシェアの運転手になろうと思った?

ライドシェア 運転手 井野和弘さん
「1年前に(定年)退職して、いつ寝てもいいという夢の生活だったが飽きてしまって働きたいなと。でも毎日は嫌だなと」

https://www.tvq.co.jp/news/news.html?did=2024061200000004

しかし、こうしたエピソードを積み上げても実態は分からない。
ここで言う「実態」とは、「タクシー不足が解消されたかどうか」である。

■誰でも参入できることの弊害

ライドシェアに関してはタクシー業界が色々反対していた。
プロのドライバーではないことにより
・事故の危険性
・犯罪の危険性
・接客レベルの低下
などいくつか挙げられている。
しかし、事故の危険性はプロかそうでないかよりは高齢ドライバーでのそれの方が問題であることは指摘されている。それはプロかどうかではない。

現在のドライバーは高齢化を迎えていることや十分な訓練がされないままで送り出されるリスクなども指摘されている。

先日乗車したタクシーでは、行き先を告げても場所がわからないと云い、ナビの操作方法もよく分からず、決済も端末機に不慣れなのかもたついていた。現在のタクシードライバーであっても万全ではない。

とはいえ、参入障壁が下がればいろいろな人々が参画するわけであり、そこにトラブルが発生しないわけではない。

○ライドシェア、採用側も驚いた応募者殺到の理由
平均年齢は50代、学生がバイト感覚でも
2024/06/09

「弊社の場合、男性9割・女性1割といった感覚です。年齢層は20~60代と幅広く、平均年齢は50代となります。大半は、本業が昼以降に始まる自営業や、時間の余裕がある経営者の方ですね。

共通しているのは、運転が好きということでしょうか。一方、ここ数週間では、学生さんの応募が非常に増えて、10人に1人ほどの割合で、大学生を中心とした若い世代が働くようになっています。アルバイトとしては条件がいいですし、徐々にそうした認識が浸透し始めているのでしょう」

https://toyokeizai.net/articles/-/759738

■データで話をしよう

何らかのエピソード的な情報はいつも胡乱げに見るようにしている。特に公共メディアの報道である。

当然、それなりに権威のある報道機関のニュース内容については敬意を払う。しかし、そうした報道内容をそのまま信用してよいかと言えばそうはならない。仮に、報道内容が事実だとしても、時間と場所を入れ替えれば重大にミスリードに巻き込まれる。

湾岸戦争時でのオイルまみれの鳥の映像などは今でも忘れられない。
政治家の失言などを、都合のよいように切り取って、それらしい写真を添えれば、メディアが臨む印象が作り上げられる。戦争の報道も「肩入れ」すれば、特定の場面だけが繰り返し流される。

それらが「ウソ」だと言っているのではない。我々が知り得る一つの側面であり、保管する情報を探さなければ、誤った判断になりかねないと言うことを言っているのだ。

何度も言うようなのだが、タクシー不足については
①タクシー不足を判断する客観的指標が示されない。
②従ってマスのデータ(統計データ)がない。

せいぜい運転手数や稼働タクシー台数のデータがあるくらいだ。しかしこれらのデータも、運転手が高齢化して運転手がいなくなりタクシー会社が遊休タクシーを抱えているなら、それは当然の帰結であり、一般車道で稼働しているタクシーが減るというのは当然であろう。それは、利用者が「利用したい」と思っているときに「利用できる」かという潜在的な要素ではあるが、本当にそうなのかが分からない。

上記に示したように、条件を緩くして運転手を確保するのは有効かもしれないが、これも統計データが無い。そうした中で、一部の人の声をサンプリングしても実体は分からない。

運転手の需要と供給をモニタリングできなければ、エピソードは話半分以下の情報にしかならない

エピソードを一つピックアップしても実体は分からない。

・応募者に高齢者が多くなると,その分事故の危険が多くなること
・十分な報酬が得られないので、早晩ライドシェアをする人は限られてくること
などは、いくつかの記事で指摘されている。

こうした事象を統計的に確からしい水準までデータを集めなければ議論は出来ない。
エピソードはエピソードにしかならない。

2024/06/27

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