戦略人事:優秀な人材が欲しいという呪い(採用戦略の欠落)
■採用担当者の苦悩
かつてバブルの頃、ノルマとして採用者数を割り当てられてた人事担当者が、その応募者の多さにノイローゼ気味になり、「応募書類をぶん投げて、遠い方から採用するか」と自嘲気味に言ったのを思い出す。
採用戦略の相談を受けたときに、人事担当者が「優秀な人が欲しい」と云う言に「貴方より優秀な人をどうやって見抜くんですか」と揶揄したことがある。
最低限の採用基準があっても、それ以上のことは入社してからでなければわからない。いわゆる採用試験は昔からあったが、せいぜいは基礎知識と素養しか分からない。明らかにムリだなと云う人以外は五十歩百歩だろう。
そのような事情の中でも、採用者を絞り内定を出さなければならない。その人に能力があるかどうか「分からない」のにである。
結果として、出身大学で差別してしまう風土ができあがる。
○「学歴フィルターはあります」──関係者が次々に明かす、日本のヤバい採用現場
2023年02月07日
中堅物流会社の人事担当者は「Web説明会でも特定の大学に分けて開催しています。Web説明会でも学生の質問を受けたり、こちらから質問をすることもあります。当社の社員とグループ分けした学生との双方向の意見交換の場を設けているので、人数を限定せざるを得ません」と話す。
2021年にマイナビが「大東亜以下」と題したメールを就活生に誤送信した問題で「学歴フィルター」ではないかとネット上で騒ぎになったことがある。実は今も大学フィルターによる選別は今も続いている。都内の私立大学のキャリアセンターの担当者もこのように明かす。
「説明会に申し込むときに大学名を入力させる企業は多いです。学生からも複数の人気企業に申し込んでもすぐいっぱいになるという話をよく聞きますし、大学フィルターをかけている可能性は高いと思っています」
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2302/07/news074.html
■採用に関わる事件は何を意味するのか
一方で、採用試験も併用される。絶対基準ではないかもしれないが、一定の判断基準となるだろう。しかし、それを不正に対応されたのではたまったものではない。
下記の記事は、いろいろ考えさせられる内容ではある。
○不正横行ウェブテスト 就活生約1割が「不正した」 採用側も「倫理観任せ」
2022/11/22
企業の採用試験のウェブテストを就職活動中の大学生に代わって受験する「替え玉受験」をしたとして、警視庁が関西電力社員を逮捕した事件。
ウェブテストは監視の目がなく、21日に私電磁的記録不正作出・同供用の疑いで逮捕された関西電力社員、田中信人容疑者(28)が関与したような「替え玉」や、仲間で協力しての受験、カンニングなど不正が横行しているのが現実だ。ディスコが3年7月に就活生1200人に行った調査では、8・4%が「自分が受験した企業で不正の経験がある」と回答。「友人などの受験企業を手伝った」としたのも9・3%だった。
https://www.sankei.com/article/20221122-AWWKSZNEOZLPVMV3KCKEH6HPWM/
■採用戦略の欠如
企業に利益をもたらしてくれる優秀な人材が欲しいというのは呪いのようなものである。それはプロ野球での金満球団がお金のちからで他球団から選手を奪うのと大差ない。
優秀な人材がいれば企業が成長できるという思い込みは「戦略」ではない。
もちろん、優秀な人材は不要といているのではない。
企業が成長を続けるには、多様な人材を適材適所で配置するという戦略が求められる。
人には得手不得手もあれば、能力の発揮の仕方も変わる。これをあらかじめ見極めることはできない。
したがって、採用戦略は「多様性を重視する」でなければならない。
「人数ありき」の採用戦略は意味が無い。
<閑話休題>
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?