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世間に転がる意味不明:ソフトウエアを無視するハードウエア偏重の政策(ギガスクールの混迷)

■Windows10のサポート切れ

○ライフサイクル

Windows 10 は 2025 年 10 月 14 日にサポート終了となります。 現在のバージョンである 22H2 は Windows 10 の最終バージョンであり、すべてのエディションはその日まで毎月のセキュリティ更新プログラムのリリースで引き続きサポートされます。 既存の LTSC リリースでは、特定のライフサイクルに基づいて、その日以降も引き続き更新プログラムが受信されます。

https://learn.microsoft.com/ja-jp/lifecycle/products/windows-10-home-and-pro

いきなりWindows10が使えなくなるわけではないがセキュリティの観点からはWindows11への移行は計画せざるを得ないであろう。これが」一般の企業の対応であろう。しかし、行政がこの点をしっかり考えているかと問われればとても心許ない。

■なにげなニュース

○学校配布の中国製タブレット3500台以上故障 バッテリー膨張など…「発火」疑いも
2023/10/31

 徳島県の学校で配布されたタブレット端末3500台以上が相次いで故障し、対応に追われています。
 徳島県 後藤田正純知事:「中高一貫のところは県が管轄していますが、そこで(端末が)発火したといった話があった」

https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000322146.html

IT機器を使用した教育は、それが最先端であるかのような印象がある為に華やかなニュースとして取り上げられる。一方で、こうしたIT機器を使った教育を誰でもできるわけでもなく、教師の質が問題視されることが多々あると聞く。

そんな中で、大量の端末が故障する(使えなくなる)というのは、教育現場にはどんな混乱を持たすのかと危惧される。
そして、こんなIT端末のトラブルは局所的な話ではない恐れもある。

○徳島の「学校タブレット大量故障」にみる、GIGAスクールの“想定外” なぜそんなに壊れるのか
2023年11月10日

 10月27日に朝日新聞が報じたところによれば、徳島県教育委員会が手配した約1万5000台のWindowsタブレットのうち、3500台以上が故障で使えなくなり、授業に支障が出ているという。追ってJRT四国放送の報道では、11月2日の時点でさらに増え、3782台となっている。

・・・

小中学校で導入された1人1台端末の修理費については、22年から23年にかけて大きな問題となりつつある。埼玉新聞が昨年報じた例では、埼玉県久喜市のタブレット修理代が、1000万円を超えたという。埼玉県全体の話ではなく、久喜市だけでの話だ。修理費に国の補助はなく、市の独自予算で対応するという。

https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2311/08/news152.html

これが、まだ行政側が対応するのであれば良いが、下記はいかがなものかと感じてしまう。

○県立高の1人1台パソコンが自己負担に 来年度新入生から
2023年11月23日

県立高校で生徒1人に1台貸与されているパソコンについて、群馬県教育委員会は2024年度入学の生徒から個人で用意してもらうと決めた。推奨機種の購入には5~6万円がかかるため、県教委は購入費の支援などを検討している。

https://www.asahi.com/articles/ASRCQ72XNRCQUHNB001.html

■想定内であるはず

当たり前の話であるが、どんなものでも壊れないものはない。大事に使っているならともかく、ヒトから与えられたものであれば、そしてそれが子供が扱うのであれば、想定より早く壊れることは当然である。

ハコ物(ハードウエア)だけ整備しておけば良いと言う発想は間違っている。維持管理のための計画、故障時の対応、バックアップ体制の整備、問い合わせ窓口の運営管理など、いわゆるソフトウエアではないものの、ハードに対するソフトという意味では重要である。

特にOS関連のセキュリティパッチは必要で、これを怠ればサイバー攻撃を受けやすい。
しかし、こうした維持管理に対する配慮は行政はどう考えているのだろう。

「令和元年度補正予算・令和2年度第1次補正予算を合わせた全体像GIGAスクール構想の実現」
https://www.mext.go.jp/content/20210118-mxt_jogai01-000011648_001.pdf
を確認してみる。

■アドホックな予算化

先の資料では下記の記載がある。
①「1人1台端末」の実現2,973億円対象:国・公・私立の小・中・特支等国公立:定額(上限4.5万円)私立:1/2(上限4.5万円)

これに対しては、購入に当たっての補助金であろうか。上限は「4.5万円定額」である。企業ユーザーであれば、これは最低限のハードウエアの調達であり、OSやオフィスソフトなどは自前で調達しなくてはならないことを意味する。とてもではないが、予算が限られる地方自治体では負担が増すだけあり、冒頭のようなことが起きても不思議ではない。

それでも予算化がされるのはまだマシなのか。

○GIGA端末更新に国が30万台超の補助へ
2024年度予算で1台当たり4万5000円、全体の3分の2が対象
2023.09.01

文部科学省は8月30日、2024年度(令和6年度)の概算要求を公表した。この中で「GIGAスクール構想の着実な推進~1人1台端末の更新~」として、約148億円を新規に要求している。GIGAスクール構想で児童・生徒1人に1台ずつ整備されたコンピューターは、早い自治体では2024年度から更新時期に入る。既に故障率の上昇やバッテリーの劣化といった問題に直面している。そうした地方自治体からは、端末更新の国費負担を求める声が上がっていた。

https://project.nikkeibp.co.jp/pc/atcl/19/06/21/00003/090100482/

問題なのは、改めて予算化しなくてはならないことだろう。当然状況が変わることがあり、費用の増減はあるだろうが、当初計画を入れておかなければ計画がたたない。当然である。あらかじめ「いつ予算化される」ことが分かっている場合と「予算化されるか分からない」では行動が変わってしまう。

■パフォーマンスを無視される

同資料では下記の記載もある。

②家庭学習のための通信機器整備支援147億円Wi-Fi環境が整っていない家庭に対する貸与等を目的として自治体が行う、LTE通信環境(モバイルルータ)の整備を支援

これに対しては、下記の指摘がされている。

○家庭学習のための通信機器整備支援事業により整備したモバイルWi―Fiルータ等について、事業主体に使用が低調となっている理由を確認させた上で家庭学習における使用を促進するための方策を検討して周知したり、家庭学習以外での有効活用を図るための方法等を検討して周知したりして、使用促進や有効活用が図られるよう意見を表示したもの
令和4年10月19日付け 文部科学大臣宛て

上記の242事業主体について、3年度末までの事業主体ごとの最大貸与率(2年度に補助事業により整備したルータ台数に占める最大貸与台数の割合。以下同じ。)の状況をみると、表2のとおり、193事業主体(全体の79.7%)において、最大貸与率が50%未満と低調となっていた。さらに、上記193事業主体のうち31事業主体(全体の12.8%)においては、整備したルータが家庭学習に全く使用されていない状況となっていた。

このように、家庭学習における使用を目的として整備したルータの最大貸与率が50%未満と低調となっている193事業主体において、ルータ計101,614台分(補助金相当額9億1706万余円)が、納品から1年以上にわたって家庭学習に使用されていない状況となっていた。

https://report.jbaudit.go.jp/org/r03/2021-r03-0099-0.htm

簡単に言えば、「家庭学習のための通信機器整備支援」はうまくいっていない。なんとかしろと云うことである。

残念ながら行政にはコストパフォーマンスという概念はない。予算は使うものでありアウトプットは評価指標にはならない。政治家が無責任なばらまきをする結果である。

■企業は他山の石とするなかれ

ISO9001:2015での認証のために審査先に訪れることがある。

○これどうしたんですか?
 新型コロナの影響であろうか、モバイル環境への対応と云うことでノートパソコンを導入した事例がある一方で、デスクトップなどは使わなくなり、部屋の片隅に積まれる姿を見ることがある。「これどうしたんですか?」は「使わなくなった」ではあるが、企業としては利益を生み出さない資産の放置である。

○いい加減買い換えて欲しい
 かつてのパソコンよりはマシになったが、やはり使い続けるとメモリー内に余計なデータが蓄積され動作が重くなる。これに一役買っているのは定期的に行なわれるOSなどのパッチであろう。
 感覚的には、快適に使える期間は3年である。しかし、これは中々頭がいたい問題である。考えてもみて欲しい。300人規模でパソコンを3年ごとに入れ替えるのと5年では雲泥のコスト差が発生する。

しかし、ことが起きてから対応するというのは経営計画がないのと同じである。かつて、WindowsXPのサポート切れに、サポートが切れる直前に右往左往していたことが思い出される。Windows10でも繰り替えされるのか。

企業は行政のように天からお金が降ってくることはない。あらかじめの資産計画を立てておかないと組織のパフォーマンスが悪くなる。

とはいえ行政もソフトウエアの理解がなければ予算化も難しい。
混乱は続く。

(その他の関連記事)

○徳島県立高のタブレット端末大量故障 納入の四電工が謝罪
2023/11/22
https://mainichi.jp/articles/20231122/k00/00m/040/215000c

(2023/11/27)

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