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ZORN「LIVE」目前に、アルバム「RAP」全曲雑感

ラッパーZORNが本日11月3日(木・祝) 、「LIVE」と銘打ったワンマンライブを行う。場所はさいたまスーパーアリーナ。

昨年9月の横浜アリーナ公演で曲中に「スーパーアリーナやっからよ!」と公言し、その1年2ヶ月後に有言実行したかたちだ。

このライブに先駆けて9月28日にアルバム「RAP」が発売されたので、ここに全曲の雑感を添えてみたい。

このアルバムを以ってZORNさんは完全に、従来の「ラップが好きで好きで堪らないヘッズがマイク1本でのし上がろうとする」<生活の中にラップがある>スタイルから、完全に<ラップの中に生活がある>「好きでも嫌いでもやるしかない」職人ラッパーになった。

1.「Intro」
前作「925」、前々作「新小岩」に続き、本アルバムも全トラックはBACHLOGICが担当。ん?キックの音がスカスカじゃない、、?大丈夫かな?

2.「Still Here」
「知らない知り合いもう帰れ、関係ない関係者もう帰れ」と口火が切られるこのアルバムが、ライブを前提としたものであることが判る。実際にアルバム全編通して「さいたまスーパーアリーナ」を表すワードがたくさん用いられる。

3.「I'm A Rapper」
スクラッチが入り2000年代を彷彿とさせるトラック。「パンチライン」と「三姉妹」で韻踏むのエグイ。けれど使い古された「マイクチェック、ワン、ツー」「Put Your Hands in Air」のワードチョイスにはびっくり。ラップにTwiGyみがあり、先人達の曲を改めて聴きなおし、自らのものとして再インストールした感がある。

4.「Leave Me Alone」
ZORNさんの人間性が伝わってくる1曲。「クラブなんか行かねぇ向かうカフェ」は前々から語られていたが、いや、たまには行った方が良いんじゃ、?と聴いているこっちが心配になる。制作に集中、は解るんですが、先人達、売れても、クラブに行けば普通にフロアで酒飲んでたし。。。その現場直結のところがヒップホップシーンの良さだったりもしたし。。「いくら俺がホットでも」はダサい。

5.「Just A Feeling」
2015~2017年あたりの過去作のテイスト。けれど「明日何しよう?まずは生きようか」のリリックに、世の中もご本人の状況も、当時とは次元の違うシリアスなものが映る。

6.「パンケーキ feat. 鋼田テフロン」
文節をまたいで韻を踏むのがZORNさんの最大の売り。だけれど、韻にこだわりすぎるあまり、文節と単語の音節がむちゃくちゃになっているので、何言ってるのか判らないというジレンマ。韻のためにリリックを紡ぎ、文章として一貫しているかも精査し、さらに何度も何度も練り直す、という、めちゃくちゃ高度な作業を経ているのは判る。が、それが曲としてかっこいいかどうかは別物、という、とても難しい話の、好例。「Have A Good Time feat. AKLO」や「Letter」をセルフサンプリング。

7.「交通公園」
「ローファイ hip-hop type beats」で検索するとじゃんじゃん出てきそうなチープなビート。なので返って、自分ならどうラップを乗せるか?このビートなら職人ZORNはどう乗るか?参考になりやすい。これでイケるなら俺にもできる、、!という気持ちになれる。

8.「渋江公園 (Skit)」
中盤にこんなSkit入れてくるなんて、往年のK.O.D.P.のアルバムみたい。

9.「In The Neighborhood」
「ウルフギャングよりビリー・ザ・キッド」など、ライブのMCが反映されててニンマリする。この曲もしかり、アルバム通して、エここで終わり!?という潔い(短い)曲が多い。等身大、という意味では、会社立ち上げて、その会社の話とか、歌詞に反映されても良かったのになぁとも。

10.「GOAT」
アルバムの中で唯一、未来を歌う、良曲。日本語ラップクラシック「証言」を踏まえて、「何番でもいい、証言を繋ぎ」と歌うのは震える。上記3で書いたように、自らのステージが変わった時、先人達はどうしていたんだろう?と日本語ラップクラシックを聴き返しまくったんだろうなと想像。その上で、「偉大な物語の一説であることを誇りてぇ」と自らも日本語ラップの大きな流れの一部であるという自任、そして、次は自らも伝えていく側に回っていくという自覚。「これは呼び出し、バックレんなよ」でしめる。やる気になるわ。これを聴くと、次のアルバムはやはり若手ラッパーを多数客演に招いてフックアップしていって欲しいなと願わずにはいられない(それについては以前コチラで書いた)。ちなみに筆者がコロナ禍で書き溜めていたリリックと出だしがそっくりで、同調に嬉しくもあるが、先にやられた、という悔しさが。ZORNさんご本人も仰っているように、俺にもできる、と思わなきゃ、始まらないからね。出す出す詐欺にならないよう、来年こそは世に出そう。

11.「隣の芝生は青い」
まず人物AからみたB、次に人物BからみたA、という二人称で、どちらもどちらを羨ましがっている(隣の芝生は青い)という短編。これまでになかった手法。最後に「幸せは気づくもの」で結ぶ。

12.「いたいのとんでけ」
アルバムから最初に先行公開された1曲。悲痛。自分Aが自分Bを慰めている応援歌。前作「925」でも苦悩を歌っていたが、今作に至るまでその苦しみは持ち越されてさらに増幅している。この曲を聴く人がこんな苦しみを共感しませんように、と歌う。一家の屋台骨で、立ち上げた会社の命運はその双肩に重くのしかかっていて、矢面に立つのもステージに立つのもすべて自分。つらすぎるだろ。そんな頑張らなくていいよ、あなたの命の方が心配だよ。。と思うも、この破竹の勢いのままスーパーアリーナまでは駆け抜けたいよね。。と心情もわかる。今夜のライブでどうか「全国ドームツアーやっからよ!」なんて言いませんように。

13.「拍手の雨」
完全にライブのアンコール対応曲。歌詞一言ひとことが沁みる良曲。だけどすごく切ない。大音量で聞いたら泣いちゃいそう。「いつも頭ん中製作(中略)ほとんど病気、ほんとその通り」の言葉に、そう、そこまで追い込まなきゃ出来ないよな、と胸が痛くなる。

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ライブを前に新しい動画も公開された。

即、実物見に行ってきた。

そしてグッズも公開。

うーーん今回もダサい!去年の横アリに続いてまたもZORNさんの顔面推しだよ!!でもSupremeの服みたいに、カタログじゃ信じられないぐらいダサいけど着るとかっこいい、みたく、なるの、、、か。なぁ。。

さて、なんだかんだ楽しみすぎるさいたまスーパーアリーナ公演、今から向かいます!!


<了>

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