【映画感想】君たちはどう生きるか(ネタバレ)
娘が十数回目のムビナナを観ている裏で観た。
辞める辞めるサギとも言われた宮崎駿監督の最終作「君たちはどう生きるか」を見てきた。
この映画、事前のプロモーションはなく、このポスターからわかる情報だけだった。嘘かホントかわからない噂では、宮崎駿監督は鈴木敏夫プロデューサーに「宣伝してよ」と言ったらしい。観た人も何も言わない。映画評価のサイトは☆1と☆5に分かれるくらい賛否両論で「最低」とこき下ろす人もいる。
これは観るでしょ。
カリオストロの城も、コナンも、ナウシカも、ラピュタも。長編映画で監督作品は映画館で観てきたので「最終作」とも言われる映画であればなおのこと行くしかないので、娘がムビナナを観ている裏で観てきた。
さて、本当に遺作なのかなと半信半疑で映画館には入ったけどね。
なんて言ったって、ポスターが鷺=サギだから(汗)
ここから先は、ネタバレが多くなると思うので、見てない人は引き返した方がいい。
映画を観た最終的な感想はコレ
まだこの文章が見えていて、ネタバレが目に入りたくない人用に最初に感想を書いてみる。
まず間違いなく面白かった。
映画としては満足したのか自信がないけど、宮崎駿監督作品としてはとても満足した。もう一度観たい気もするけど、まだ観たくない気もする。風立ちぬでは感じなかった「最後」を強く感じた。そういう意味で、最後のスタッフロールを観ながら目頭が熱くなった・・・。
【追記】
岡田斗司夫のYoutubeで「好きじゃないけどブルーレイは買って、一時停止しながらニマニマ観る」みたいに言っていたが、激しく同意する。
さて誰に向けた映画なんだろうと考えた
職業病からか、映画を観ながら「この映画は、誰に向けて(ターゲットの客層)何を伝えたいんだろう?」と、いつもの宮崎駿を想像し考えながら見ていたけれども、結局それが鈴木敏夫プロデューサーの手のひらで踊らされていたのだろうと思う。
どこを切っても宮崎駿のという金太郎飴作品で、あらゆるところにちりばめられた過去作品のオマージュが「そうそう」という鉄板のシーンを作り出している。
これは事前に知識を入れて観てはだめだ!何も知らないで観るから価値のある映画もあると思う。事前の広告すらも邪魔になるだろうよ。
私の考えるターゲット層は、未来少年コナンから風立ちぬまで、宮崎駿監督作品を楽しんだオジオバで、年齢的には40代から60代。もういい加減「宮崎駿監督作は惰性で観ているけど知り尽くしているよ」という人たちじゃないかな。ターゲットがニッチすぎる。
観始めても混乱は続くよね
最初の火事のシーンから、高畑勲監督を少し感じつつ、これはどんなストーリーなんだろうとじっと見ていると、急にシーンが飛び(たぶん)戦争の影響で引っ越しをしたんだろうな、と思うが全く説明がない。
主人公の父親が動く姿がどこか懐かしさを思い出す。あれ?他の映画にも同じ人いなかったっけ。
母親が火事で亡くなったのだろうが、急な再婚相手の登場シーンに混乱する中で、主人公の眞人がふと漏らす「母さん」って何よ。
父親は偉いのか?金持ちなのか?と思うが、大混雑のバスに乗りに行くし、眞人と夏子は延々と田園風景の続く道を移動していく。
無言でゆっくり移動する輪タク。
キレイな自然の中を移動するシーンもどこかで見たような懐かしさと、穏やかさを感じる。ん?
着いた先のお屋敷で「最初だから正面から」という言葉で、ここは夏子の家なのだとわかるけど、入ってみると誰もいない。
静かに屋敷の中を進むシーンでは、ほかの人の気配を感じない。そのうち、正面に人が集まって何かしている・・・でも、不思議と人の気配という感じ方ではない。
急展開すぎるし、説明が少ないし、異様すぎる。
夏子については、どうも死んだ眞人の母親の関係者らしい。
が、はっきりと明言されない。動きや表情から怪しさを醸し出しているが、「これはいつもの宮崎駿監督の罠だ。引っかかってはいけない」と感じながらも違和感がぬぐえない。
屋敷にいる人たちも老人が多い。「戦争」を意識させるけど、そのキャラが重い空気を感じさせない。どこかで見たことのある老人たち、不思議なデジャヴを感じる。
そして住まいは母屋から離れている洋館。きれいで豪華だけど、明らかに本家ではない雰囲気がある。母屋には何があるんだ?いや、ここは何?
ここに至っても説明が少なすぎる。
そしてサギ。
ここにきて、徐々に鳥の存在感が増してきてる。
現代ものじゃなかった。ファンタジーだった。まるで夢だけど夢じゃなかったみたいな。ん?
ここから先は、説明はしたくない。
なぜなら(勘違いかもしれないけど)気が付いてしまった。宮崎駿監督と鈴木敏夫プロデューサーの罠に。たぶん。
Don't think, feeeel!
これは宮崎駿監督作品の集大成だ。本当に最後なんだと思う。テーマなんてない(たぶんある)。あっちにもこっちにも、宮崎駿監督作品に出たキャラクターがいる。あからさまも、匂わせるだけも。懐かしい。すごい。楽しい。ワクワクする。
何故か、あの時見たカリオストロ伯爵の嫌味な顔も、ラピュタの豪快なドーラも、もののけ姫のサンのきりりとした雰囲気も。ハウルも千と千尋も、ありとあらゆるところで懐かしいシーンを思い出す。
駅の喧騒、輪タクの運転手、移動の静けさ、大自然。
ダットサンの動き、アオサギの怪しさ、森を抜けるシーン、塔の壁の模様、あからさまに怪しい塔の主人。
豪快な女性、白い不思議な生き物。鳥、鳥、鳥。火。料理人。兵隊。
最上階の壮大な風景。塔の主人。積み木。そして風。
インコ帝国から換気口をたどって逃げるシーン。外に出るときにツタを取り払うのどっかで見たことあるんですけど??
何だよ王様、そのシュシュシュって橋をサーベルで切るシーン。懐かしくないか??
この映画は事前知識があって観ると、この感動は無いと思う。
まさに考えるな、感じろ。のままに。
いろいろ解釈があってそれがいい
主題を重く見せ、サギで軽く感じさせ、塔で現実味を薄くし、最後のシーンで現実へ戻す。戦争と貧困。田舎の原風景が近代に変わる中で失うもの。宮崎駿監督作品では一貫して感じるところも十分見どころとしてあるのだろうと思う。
でも、普段の宮崎駿監督作品ではもう少しわかりやすい。まるで故高畑勲監督を偲ぶような奥深く大胆なシーンもあるし、新海誠監督を意識したような水の見せ方もある。
ありとあらゆるところに宮崎駿の全てが詰まっていて、でも説明がない。
時間がここまで飛び飛びなのは初めてじゃないの?
きっと鈴木敏夫プロデューサーは「人によって解釈が違うのがいい」と思っているに違いない。私なりの最終結論は、この映画は宮崎駿ワンダーランド。最後の最後まで。隅の隅まで宮崎駿でした。
「君たちはどう生きるか?俺はこう生きた」
スタッフロールを観ながら宮崎駿監督がそう言っているようで、目頭が熱くなった。
【追記】
そうそう、twitterで「カヘッカヘッカヘッ」って書いてあったけどなんだよあれ!言わないじゃん!(笑)