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南伊豆での時間の流れとこれからの時代のスタートアップについて

8月のお盆の連休、先月誕生日だった自分のお祝いに奥さんと南伊豆旅行をしてきた。今年で32歳。小さい頃暗記するくらい読んでいたプロ野球名鑑にいた2003年のダイエーホークスの鳥越裕介さんの年齢。選手生命が限られているプロスポーツでいうともう充分ベテランの域。
一方プロスポーツではない生活の中では、まだまだ集まりによっては最年少にもなったりするある意味中途半端な年齢。ただ最近は逆にちょうど良いというか下もいたり上もいたりという中で何かを始めやすい年齢な気がしており、今年一年も目一杯楽しんで過ごしていきたいと思う。

さて、今回で三度目の南伊豆。
初めて来た時から慣れてきて故郷感すら感じるような気もするのだが、夏に来たのは初めてで、いつも必ず寄る道の駅もお盆で帰省した方々で大混雑。
南伊豆の大人気ビーチの弓ヶ浜には行かなかったが、おそらくビーチの方がとてもたくさんの人が来ていたと思う。

道の駅で大量に買ったバジルは帰ってすぐにジェノベーゼにした

南伊豆のいい感じの宿で一泊した次の日、今回も南伊豆でお弁当屋さんをやっている夫婦に会いに行った。このお弁当屋さんの老父婦の話はこちらにも詳しく書いている。

前回は突然行っていなかったりしたので、今回は事前に連絡して会う約束を取り付けた。
約束の時間が11時に家に行くというものだったが、早めに行けそうだったので、「どうせいるだろう」という目論見のもと、10時くらいに到着、やっぱりおじちゃんの方しかいなかったので、「おばちゃんが来るまで待ってろ」とのことで家の庭で待つことにした。

おじちゃんは最近始めた畑仕事を本当に楽しそうにやっている。今回も最近苗から育て始めたという聞いたこともないような珍しい品種をたくさん紹介してくれた。

おじちゃんは最近畑を始めるまで、板金塗装の仕事を40年以上やっていたらしい。南伊豆のお弁当屋さんの自宅にも自分で作ったという作業場兼倉庫がある。一時期は東京の会社でも働いていたらしいが、挫折して地元の南伊豆に帰ってきたと言ってた。

おじちゃんと仕事の話をしている中で特に印象的だったのは、畑をやるまでこれまでこれまで40年間やってきた板金塗装の仕事はずっと苦しかったと言ってたこと。基本的に納期に追われ続け、だんだんと大手の業者にお客さんが流れていっていなくなりずっとどこか不安な中で仕事をしていたとのことで自分の性格的には向いてなかったと言ってた。やっと楽しい仕事見つけたって言ってたけど、逆に向いてないこと40年やってたんだなと笑ってた。
おじちゃんがもっと早く畑仕事と出会ってたら楽しい人生だったのか、それともその40年があったから今があるのか、そんなことを考えながら話を聞いてた。

10時半を過ぎたころに奥さんと自分の間で「そろそろ帰ろうかな」という空気になった。のんびり話している中でも頭の片隅にちらつくタスク的なものがあり、早く家に帰って片付けたいなという気持ちがあったのかもしれない。
おじちゃんにもそろそろ帰ろうか伝えたところ、「おばちゃんが帰ってくるから、ほんの30分くらいだから待ってろ」って言われてたので言われた通りに待った。
30分あれば色々できるなと思ってしまうが、おじちゃんにとっては何もできずに過ぎるだけの一瞬の長さなのである。

おじちゃんに言われた通り待ったら、おばちゃんに会えたので結局とても幸せだった。(結局予定の11時から大幅に遅れて11時半ごろにおばちゃんが現れたので1時間くらい待った笑)
もし30分を惜しんでたら次何ヶ月後に会うまでおばちゃんには会えなかったので、そう考えると何ヶ月と30分という比較もできる。都会と田舎、今いる場所の時間に合わせた方が幸せなんだなと思った。

おばちゃんを待っている間、畑しごとで使う井戸水を引っ張ってきているホースで水撒きをしてた。
おじちゃんが「水道水だったら金かかるから絶対ダメだけど、井戸水はタダだから一生撒いてていいぞ」と言うので、おじちゃんや奥さんと3人で話しながら、水まきを無心でやってた。
水を撒くと暑さが和らぐのでおじちゃんも自分達も嬉しい。
家の敷地から道路にはみ出るくらい遠く撒いたり、近くが乾いてきたら近くに撒いたり遠くに撒いたり、途中から車を移動させて洗ったり。
一見すると何もない無駄なように見えて何でもない時間だったが、なんだかとても贅沢な時間だった。

次は収穫を手伝いに行くと約束

色々書いてきたが、改めて今回感じたことは、都会と田舎での時間の流れの違いだ。
今自分で起業してスタートアップ的な成長を目指す中でそこの時間は田舎とはまるでスピード感が違う。
ただしスピードを早めることで何かを犠牲にして我慢しているような感覚もある。この何かとは、自然と触れ合ったり水撒きのように無心になれたり、かけがえのない時間を味わったりするような本質的で、人間性を取り戻す行いみたいなもの。
そして色々なことを我慢や犠牲にしたからといってスタートアップが成功するとは限らないし、これまで過去成功してきたようなスタートアップのやり方をそのまま実行して、これから先うまくいくという保証ももちろんない。

今自分がこの時代に起業した意味みたいなことを日常的にもよく考えている。
その中で、これまでのようなやり方でのスタートアップではなく、田舎的で人間性のあるようなスタートアップに取り組むの面白いのではないかと思う。
そしてこれは決してスピード感を落として大きな成功を諦めるのではなく、むしろこういったアプローチの方がこれからの時代、関わる人にとって求められ、社会に大きなインパクトを残したりするのではないかとも感じる。

南伊豆の滞在期間で読んでいた本で、『人間主義的経営』というイタリアが誇る、人間性と職人技を重視するラグジュアリーブランドの象徴的なリーダーブルネロ・クチネリ氏の本を読んでいた。この方が創った会社が本当に素晴らしい。
詳細はこちらのnoteがわかりやすかったが、何がすごいかというと、こういった社会善や人間主義を貫く会社で且つ上場もしているところ。これからの時代資本主義っぽくないことをした方が結果として資本が集まってくる、そんな気さえした。
自分もこういったチャレンジをしていきたいし、その道中の色々を味わいたいなと強く思う。そしてこのブルネロ・クチネリ氏が実践する人間主義的経営のヒントが南伊豆にあった気がした。

南伊豆から日常に戻り元通りの忙しい時間を過ごしていくと思うが、今回のことはしっかり覚えていきたいので所信表明的にnoteに残しておきたいなと思った。
また忘れてスピード感Maxのアクセル全開な日々に慣れてしまったら、おじちゃんとの水撒きを思い出して、また本来のスピードを取り戻しに南伊豆へと旅に出たい。

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