SPOILMAN野外フリーライブに見るレーベルの介在価値について

企画のフライヤー

事前の予報は大きくはずれ、これぞ冬の空、これぞ野外ライブ日和と言わざるを得ないほどの快晴。持ってますね。

すんげー人の数

本記事はライブレビューではないので、そういった類のものを探している人は他所を当たってください。
なぜ今こんなことを書いているかと言うと、記憶がフレッシュな内に今日思ったことを整理しておいた方が自分の為にもいいと思ったから。あくまでメモ的な内容なので軽い気持ちで読んでください。
※推測と自分の考えのみなので裏とか取ってません。鵜呑みにしないで下さい。

前回の区民センターでのフリーライブに続き、今回も大成功と言っていいでしょう。

では、何をもって成功と言うのか。
今回の大きなポイントは2点。「フリーライブ」であること「野外」であること。この2点です。

まずは「フリーライブ」であることについて。
バンド活動、レーベル運営において、基本的にはその場での対価が発生し、ライブを見るにもお金を払わなくてはなりません。しかし、今回はフリー。裏を返せば、企画した時点で赤字確定ということです。なぜそんな一見無駄なことをするのでしょうか?それはその日だけで見た利益だけが実益ではないからです。
今日が解散ライブなのであれば搾り取れるだけ搾り取るべきだと思いますが、バンドは明日も明後日も続いていきます。そう考えた時に今日のフリーライブはただの通過点。要はゴール設定がもっと先にあるということです。
では、今日の狙いは何なのか?それは"トピック"を作ることでしょう。
見てみてください。今日、SNS上で「SPOILMAN」というバンド名を見ませんでしたか?そういうことです。今日の経費は広告宣伝費。バイラルマーケティングなのです。投資をする、そこに人が集まる、それがまた別の人に情報として伝達される。これは極論ですが、苦情が来て中止になっても最悪いいわけです。今日、あの場にいなかった人にまでSPOILMANという名前が届く。これって価値があると思いませんか?普通のライブや音源リリースの告知だけでは成し得ない広告効果があったはずです。この時点でチケット代を取るよりも実益が大きいわけです。

次に「野外」であることについて。
前回の区民センターの時もそうでしたが、「フリーライブ」と聞くよりも「"野外"フリーライブ」と聞く方がなんかワクワクしませんか?これはこの企画にどういう見出しを付けるのかという話で、言わば"いつもと違う"ということをどう演出するのかということです。SPOILMANも毎回のライブにこれだけの集客があるわけではないでしょう。でも、今日は王子の公園に何人の人が来てましたか?それが答えであり、結果なわけです。"何かが起こるかも" "見ておいた方がいい気がする" こう思わせた時点で3LAの戦略勝ちと言わざるを得ません。日々これだけのライブが乱立している中で頭一つ抜ける為に「今日のライブはいつもと違うよ」と思わせる、それが見事にハマったのが今回の例でしょう。(バンド単体にめちゃくちゃ客がついてれば全く関係のない話ですが。)

GEZANはこういったことに前々から長けていると思います。好きか嫌いかは一旦別として「事件」を生むことが非常に上手。本人達が意図していない内容も多々あるでしょうけど、それも含めてバンドやレーベルのポテンシャルなのかもしれません。

前段が長くなりましたが、今回の本題は、掲題の「レーベルの介在価値」についてです。
個人での発信力がこれだけ容易に手にすることが出来る今、レーベルに属することの意味って何なんでしょう?
カタログに名前が載る?レコーディング費用が負担される?
その人によってメリットをどこに感じるかという違いはありますが、正直、めちゃくちゃ名前があるレーベル以外に属する意味って個人的にはないと思っています。インディーレーベルは特に。
しかし、今日の出来事を見る限り、それは間違っていたのかもしれません。レーベル主導でここまで大きな話題を作ってくれるのであれば、それはもうレーベルに属した価値と言えるでしょう。本来、バンドが第三者と手を組む場合、それはバンド単体では遂行出来ないことを遂行出来るようになる。これが主なベネフィットです。今、これを実現出来ているレーベルって実際どのくらいあるんでしょうか?

水谷氏は以前よりアンダーグランドなシーンにおけるお金の話について持論を発信しています。これって多分、人によっては「守銭奴」という印象を持ちかねない内容かと思いますが、要するに「持続可能(サステナブル!)なものを作っていく為に最低限のお金は必要じゃない?」という話だと僕は理解していて、お金を顧みない姿勢 = パンクみたいな構図とかもうよくないですか?ってこと。だったらやりたいことは曲げずに知恵を使いましょうよと。お金のことを話すのは野暮、お金のことを話さないのが美学というステレオタイプな思考が生産性を下げてませんか?という提言なんだと思います。
そう考えた時に、その知恵を使った案の一つが今回の野外フリーライブでしょう。バンドからすると、レーベルがここまでの場を設けてくれる。多分、他のレーベルでは実現出来なかったこと。明確なベネフィットがここにあるわけです。

空が綺麗だね~

ダラダラとしてきてしまいましたが、要は明確なビジョンと新しい発想が掛け合わさった時にこういった一種の爆発が起きるわけで、これがレーベルの介在価値の一例だよなと改めて思わされたという話です。ただリリースするだけなら今や誰でも出来るし、金銭的負担だけするのってもはやスポンサーじゃねーかよって。本来、レーベルってそういうもんじゃないでしょと。所属アーティストをより高いステージに上げる為にレーベルは存在しているはずなのに、なぜかそこが形骸化してきてない?と考えさせられたわけです。

そういった意味で今日は色々と気付きがあったし、何よりいい空気感でしたね。個人的には、大きい音も暗所も苦手でライブハウスが嫌いな我が子が急に手を引っ張ってきて「前で見たい」と言ってきたのがとても印象的でした。そうだよな、音楽って理屈じゃないよなと。でも、だからこそ理屈も必要なんだよなと。
もしかすると、こんな小さい子でさえ何かいつもと違うものを感じていたのかもしれないと思うと面白くも意義深い一日でした。

取り急ぎ、水谷氏、お疲れ様でございました。


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