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使わないけれど捨てられないもの

引き出しを整理していたら、懐かしいものが出てきた。
システムダイアリー。数年前に使っていた手帳だ。

手のひらにすっぽり収まるサイズ。ワイシャツの胸ポケットにもしっくりくる。あの頃はスマホを持っていなかったし、仕事もスケジュールやら売上数値やらを管理していた営業職から内勤に異動になったために、大げさなスケジュール管理は必要なく、ちょっとした予定とメモが書ければ十分だった。そういうシンプルさが心地よくて、毎日この手帳を開いていた。

表紙をめくると、過去の自分がそこにいた。
打ち合わせの日程、思いついたアイデア、何気なく書いた一言メモ。走り書きの文字には、その時の気持ちがうっすらと滲んでいる。忘れていた出来事が、一気に蘇る。

また使ってみようか。そう思った。

でも、問題があった。

リフィルの入手が困難である。

一般のシステム手帳などと違い、リフィルを綴じるための穴は8つという独自のものだ。よく使っていた当時から、一部の店舗にしか扱いがなかった。通販なら手に入りそうだが、いつも使っている通販サイトでの取り扱いはなく、この手帳のサイトからしか買えないらしい。でも、そこまでして使うか?と考えると、少し気が引ける。

手帳を持つ習慣が消えたわけではない。今はスマホがあるし、別の手帳も使っている。でも、このシステムダイアリーには、あの時の自分が詰まっている気がして、簡単には手放せなかった。

結局、また引き出しの奥に戻した。

けれど、こうして時々取り出して、思い出に触れるのも悪くない。
過去の自分と、少しだけ会話をするような時間。

それはそれで、大切なものかもしれない。

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