ダイの大冒険 ポップに学ぶ、ふつうの人が大きく成長する秘訣
この記事は、フィードフォース Advent Calendar 2020 の8日目です。多種多様なテーマでわいわいするのが フィードフォース Advent Calendar なのですが、わたしは「人事なので人材育成に関する真面目な話を書きます」という宣言をしました。宣言どおり、真面目な記事です!
30年ぶりに再アニメ化した名作 『ダイの大冒険』
30年前に週刊少年ジャンプで連載していた『ダイの大冒険』がテレビ東京系列で再アニメ化しましたね。懐かしい思いで観ている人も多いかと思います。
『ダイの大冒険』は、国民的人気ゲーム「ドラゴンクエスト」の世界観と設定を元にした漫画です。単行本全37巻という当時としてはかなりの長編でありながら、最初から最後まで一貫して「大魔王を打ち倒す」というシンプルなストーリーをブラさず描き切った名作ですね。
この記事では、『ダイの大冒険』の中でも屈指の人気キャラ、ポップの成長に焦点をあてます。
※ネタバレありまくりなのでご注意ください
「武器屋の息子」が大魔王討伐に大きな貢献
大魔王打倒を目指す勇者一行であるアバンの使徒は5人います。勇者ダイ・武闘家マァム・戦士ヒュンケル・賢者レオナ・魔法使いポップの5人です。
彼ら5人の血筋・生い立ちを整理してみると下記のとおり。
他の仲間が血筋・生い立ちともにエリートであるのに対して、ポップだけ「武器屋の息子」とごくごくふつうの人です。そのためか、最初からある程度強い他の仲間に比べて、序盤のポップはとにかく弱く臆病で、仲間を見捨てて敵前逃亡することもしばしば。
ダイを見捨てて逃げるポップ
(『ダイの大冒険』稲田 浩司 三条 陸)
しかし、そんな弱くて臆病なポップが戦いを重ねるうちにメキメキと成長し、大魔王打倒に大きく貢献することになるのです。
この記事では、生まれも育ちも一般人のポップがなぜここまで成長できたのかを考察します。
成長できる環境は自らつかみとる。家出してアバンに弟子入り
ポップ成長の秘訣、最初のポイントはアバン先生への弟子入り経緯です。
アバンの使徒のうち、ポップ以外のメンバーはほとんど成り行きで弟子入りしているのに対して、ポップだけは100%自らの意志でアバン先生に弟子入りしているのです。
(『ダイの大冒険』稲田 浩司 三条 陸)
血筋も生い立ちもふつうのポップですが、「憧れのアバン先生のようになりたい」という思い一つで押しかけ弟子になる行動力がポップ急成長の大きな要因です。
アバン先生の弟子という、成長するうえではこのうえなく恵まれた環境に身を置いていたポップですが、そのきっかけは自ら行動してつかみとったものなのです。
役割が異なる複数の師匠(メンター)がいる
ポップには複数の師匠・メンター的存在がいます。アバン先生・大魔導士マトリフ・ニセ勇者一味まぞっほの3人です。
ここでのポイントは師匠が複数いること。そして、師匠ごとに役割が異なることです。
アバン先生からは主に正義の使徒としてのマインド面を教わります。
身につけた力は何のためにあるのか。本当の勇気とは何なのか。これらのマインドは勇者アバンだからこそ教えられたものであり、アバンと別れた後もポップの心の支えとなりました。
正義の使徒としてのマインドを教えるアバン
(『ダイの大冒険』稲田 浩司 三条 陸)
そして、大魔導士マトリフからは魔法使いの専門スキルを教わります。
ルーラ・ベタン・メドローアなど実戦で使える呪文のほか、「無数の呪文と知識で皆の危機を払うのが魔法使いの役目」といった魔法使いの心がまえを叩きこみます。本職魔法使いだからこそ教えられる専門的な教育ですね。
魔法使いの心がまえを説くマトリフ
(『ダイの大冒険』稲田 浩司 三条 陸)
最後に、ニセ勇者一味でマトリフと兄弟弟子のまぞっほは、2人の師匠の教えである「勇気」を思い出させる役割を担いました。
クロコダイン戦で、ダイとマァムを見捨てて逃げてきたポップにマトリフの教えを伝え、クロコダインに立ち向かうきっかけを与えたのです。
逃げ出したポップに発破をかけるまぞっほ
(『ダイの大冒険』稲田 浩司 三条 陸)
まぞっほ自身はニセ勇者一味の小悪党です。弱いし卑怯だしで、お世辞にも尊敬できる対象ではありません。
だからこそポップにとってのまぞっほは、将来なるかもしれない自分でもありました。当時のポップには、アバン先生のような「手の届かないすごい人」からの言葉よりも、まぞっほのような自分に近い存在の言葉こそが響いたのでしょう。
このように、複数の師匠・メンターがいたおかげで、ポップは急成長できました。
現実でも、マインド面の師匠・スキル面の師匠・手が届く身近な存在のアドバイスなど、複数の師匠(メンター)がいるとメキメキ成長できそうです。
弱さを自覚し、いまできることをやる
原作既読者のなかには、ポップは実力以上の活躍をしているイメージを持っている人もいるかもしれませんが、実はポップが活躍しているシーンの多くは自分の弱さを自覚し、いまやれることに集中しているときです。特に、のちに説明する「覚醒」以前はそれが顕著です。
このように、最後のメドローアをのぞけば多くの戦いで裏方に徹していることが分かります。
大魔王打倒という身のほど知らずの目標に挑みながら、その実やっていることは堅実で、そのときそのときでできることを積み重ねているのです。
目標は大きく持ちながら、目の前のことは着実に。現実にも応用できる成長の秘訣ですね。
(フィンガーフレアボムズは真似してはいけません、絶対に)
マァムへの「最低の告白」が覚醒のきっかけ
ポップの成長を語るうえで欠かせないのが、「マァムへの告白による覚醒」です。大事なシーンなのでていねいに解説します。
メルル最期の願いを聞き入れ告白するポップ
(『ダイの大冒険』稲田 浩司 三条 陸)
覚醒して回復呪文を使えるようになったポップ
(『ダイの大冒険』稲田 浩司 三条 陸)
大魔導士になったポップは戦力的にも精神的にも大きく成長をとげ、覚醒することになります。
ではなぜ、マァムに告白したことでアバンのしるしが光り、覚醒することができたのか。
カッコつけることで成長し、カッコつけるのをやめたことで覚醒する
覚醒前のポップは、好きになったマァムに頼りないと思われたくなくて「カッコつける」ことが強くなるモチベーションでした。要は「いいカッコしたい」と思っていたのですね。
ポップが無茶してきたのは自分のせいと気づくマァム
(『ダイの大冒険』稲田 浩司 三条 陸)
カッコつけたい、人からよく見られたいという気持ち自体は悪いことではありませんし、そのモチベーションでも一定レベルまでは成長できるでしょう。しかし、アバンのしるしが光らなかったことから分かるとおり、それだけでは限界だったようです。
勇気を振りしぼってマァムに(最高にカッコ悪いシチュエーションで)告白したことで勇気を示したポップは文字どおり覚醒し、獅子奮迅の活躍を見せます。カッコつける必要がなくなったことで、一皮むけて覚醒したのです。
カッコつけることで一定レベルまで成長し、カッコつけるのをやめたことで覚醒する…これは多くの人にあてはまる成長の秘訣だと思います。
生まれも育ちもふつうの一般人だからここまで成長できた
こうしてポップ成長の秘訣をまとめてみると、ポップが特別な生い立ちでない一般人だからこそここまで成長できたのだと改めて分かります。
弱いからこそここまでこれたと諭すマトリフ
(『ダイの大冒険』稲田 浩司 三条 陸)
武器屋の息子という平凡な生まれだからこそアバンに強く憧れ、弱いからこそ今できることに集中し、好きな人の前でカッコつけたいという俗な理由でがんばることができたのです。
そして、臆病で弱いからこそ、“勇気“という魂の力を示してアバンのしるしを光らせることができました。
ここからは筆者の解釈ですが、ダイのような「元々勇敢な人」ではなく、仲間を見捨てて逃げてしまう弱いポップが奮い立ってこそ“勇気“という魂の力を示せたのだと思います。ナチュラルに勇気のあるダイでは示せない力なのだと。
“勇気“はダイではなくポップの力だった
(『ダイの大冒険』稲田 浩司 三条 陸)
弱くて臆病だからこそ、本当の“勇気“を示せる
そして迎える大魔王との最終決戦。このままでは大魔王を倒せない…いや、仮に倒せたとしても世界を救うことはできない…と、仲間の誰もが、あのダイですらも絶望したとき。ポップだけがあきらめず、立ち上がり、勇気を示しました(弱く臆病だったポップが!)。
このポップの踏ん張りが、大魔王を追い詰めるきっかけとなります。圧倒的な戦力を持つ大魔王に打ち勝つために必要だったのは、戦力的な意味での強さではなく魂の力“勇気“だったのです。
仲間の誰もが絶望する中、大魔王に啖呵を切るポップ
(『ダイの大冒険』稲田 浩司 三条 陸)
このポップの勇気が、ダイに力を与えます。
元々勇敢で強く、周囲に勇気を与え続けてきたダイの心が折れたとき。ダイに再び勇気を与え立ち上がらせることができるのは、冒険の最初から行動を共にし、弱くて臆病で卑怯で、それでもふんばり続けてきたポップ以外にいないのです。
(『ダイの大冒険』稲田 浩司 三条 陸)
以上、ポップ急成長の秘訣をまとめました。涙で画面が見えなくなってきたのでこのへんで終わります。最後までお読みいただき、ありがとうございました!
大魔王軍の組織格付けチェックもしています。
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