1曲を1000回、1冊を100周する「リピート癖」は何の役に立つのか?
「くりかえす」
聞き馴染みのいい言葉である人もいれば、そうでない人もいるでしょう。それくらい「くりかえす」ことに対しては、極端に好き嫌いが分かれるはずです。でも、日本人の根底に「くりかえすことは大事」だと刷り込まれているのではないでしょうか。おそらく学校教育が原因でしょう。
「何度もやって覚えなさい」
「繰り返し復習しなさい」
普通、同じものを食べたり、同じことをやったりするのは飽きが来ます。たとえば、昼食のメニュー。その日の朝食やそのときの気分によって変えますよね。前日と同じものは食べない。だからこそ、何かをくりかえす人は奇妙に思われる事が多いです。1,2回ではなく、狂ったように、桁外れのくりかえしを行う人は特に。このように狂うほど同じことをくりかえす人を「リピート癖」があると呼んでいます。
先日、妻にこんなことを言われました。
「飽きないの? そこだけは理解できない」
もう10年以上一緒にいる彼女にすら理解してもらえないこととは何か。
昼食のメニューが同じ。
スタバで頼むメニューが同じ。
ある曲を1000回聞いた。
ある本を100周読んだ。
そう、「くりかえし」をしすぎて、もっとも近しい人間にすら理解されなくなってしまったのです。これはものすごく悲しいことのように思えます。(上の発言だけ見ると、確かに悲しい……)しかし、くりかえすと良いこともあります。
「リピート癖」の持ち主はレアカードになれる
教育改革実践家の藤原和博さんが「100万人に1人のレアカードになれ」とおっしゃいます。
「レアカード」はビジネスの文脈で使われる言葉ですが、日常生活でもレアカードの存在は目立ちます。
お昼に行くお店の店員さんからは「あの方がいらっしゃった」と思われています。というのも、すぐに顔を覚えてもらえるからです。顔を覚えてもらえば、店員さんと親密になり、いろいろとスムーズです。たとえば、そのお店では会計後のレシートを渡すのが普通なのですが、ぼくは「いらない」と認知されているので、そもそも渡されません。また、目当ての商品がないと、お店に入った瞬間に「今日はないんです」と言われます。時間が短縮できますね。
スタバでも同じようなことが言えます。今ではメニューを言わずに即会計に移ることができます。新商品の入荷情報やお気に入りの商品のことをこっそり教えていただくこともあります。他の人より早く情報を入手できます。
ある曲を1000回聞いていれば「あの曲ならこいつだ」と思い出してもらえますし、ある本を100周読んでいれば「あの本のことならこいつに聞け」と思い出してもらえます。何かの分野で顔を一番に思い浮かべてもらうというのは損なことはありません。
同じものには安心感がある
我ながら「なぜこんなにくりかえす人なのだ」と思うことがあります。その根底にあるのは安心感です。同じものは絶対に裏切らないという安心感。同じ曲や本に触れることで自身への定着につながるという安心感。時間の短縮や新情報の入手などは結果であって、自分としては安心感を求めているのだと考えています。
飽きよりも安心感を取る自分にとってその原点とは何かを探ってみました。一つ思い当たるのはこの本です。受験生の間では「英頻」と呼ばれる一冊。(ぼくが取り組んでいたのはもっと古いバージョンのものです)
ぼくが高校生の頃に通っていた塾の先生が「これがいいからくり返せ」と言っていたのを今でもよく覚えています。「その先生の言うことならば間違いない」と思って愚直に取り組んだ結果、英語の成績が伸びたのです。晴れの日も雨の日も持ち歩き、寝食を共にした一冊です。おそらくこの成果が「くり返せば間違いない」という安心感を与えるキッカケになったのだと思います。その安心感がぼくの中にあるからこそ、同じメニューを頼んだり、同じ曲を聞いたり、同じ本を読んだりする行為につながっているのでしょう。たとえ人から理解されなくとも。
「くりかえす」ことは大変なことのように思えますが、苦労した分だけ大きな見返りが待っていることがある。くりかえしたいのであればくり返せばいい。自分の「リピート癖」を恥じずに、どんどん公にしていきましょう。そうすることで、レアカードになることができますから。
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渡邉 淳/porpor(英語学習コンシェルジュ)
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