【超短編小説.7本目】一室にて
「大丈夫ですか…?」
目を覚ますと、メガネをかけた綺麗な女性が、俺のことを覗き込んでいた。周囲を見回すと、真っ白な天井と壁に囲われていた。
「ここは…?」
俺が尋ねると、俺の背後に立っていた男性が口を開いた。
「わかりません。僕も、気がついたらこの部屋に居ました。」
「私も…。会社からの帰り道に、突然後ろから襲われて…。」
すると、どこからか声が聞こえてきた。
『みなさん…お目覚めのようですね…。』
「誰だ…!」
男性が声を上げる。
『みなさんには今から、生き残りをかけて、ゲームをして貰います。』
「なんだよこれ…ドッキリか?」
『ドッキリではありませんよ。今から行われるのは、本物のデスゲームです。』
「いやいや、ドッキリでしょ?」
女性も、声を上げた。
『ドッキリではありません。今からみなさんには、殺し合いをして貰います。』
「ドッキリじゃないんだったら、このカメラはなんなんだよ。」
男性が、部屋の隅にあった監視カメラを指差す。
『それは、モニタリング用のカメラです。』
「ほら、やっぱモニタリングじゃん。ブラマヨとかのやつでしょ。」
『あ、いや、今テレビ番組の話はしてません。』
「もしも、デスゲームに参加させられたら、信じる?信じない?」
『モニタリングじゃないって。番組の話してないから。』
「今日はラーメン屋さんお休みですか?」
『【角野卓造じゃねーよ】じゃないのよ。モニタリングじゃないから。スタジオの春菜に話しかけないで。』
「モニタリングじゃないんだとしたら。なんなんだよ。」
『それは教えられません。もしそれが知りたいなら、ゲームに生き残ることです。』
「助けは呼べないのか…?」
男がポケットからスマホを取り出す。
『無駄ですよ。この部屋は、電波が遮断されています。』
「クソっ!ダメだ!」
俺もポケットからスマホを取り出したが、圏外になっていた。
「あ、ここ電波入りますよ。」
女性が、部屋の隅で背伸びをしていた。
「え、マジで?」
「マジです。この部分だけ入ります。」
「うわ、マジじゃん。警察呼ぼ。警察。」
『あ、ちょっと待って。』
「え?」
『えっと、あの……えっと……。テッテレー!』
「は?」
『ドッキリでしたー!』
「うわ、やっぱドッキリじゃん…!」
「私、本当かと思っちゃいましたよ。」
『え、いや。そんなわけないじゃないですか。』
俺たちは無事に解放された。そして、二度とデスゲームが催されることは無かった。