【超短編小説.17本目】一般的な社会

 「ここは学校じゃないんだからな…ちゃんと事前に確認しとけよ。一般社会じゃ通用しないぞ。」
わからないことがあったので、先輩に尋ねたらそう言われた…。
「わからないことをわからないまま放置する奴の方が一般社会では通用しないと思います。それとも、先輩は後輩に何かを教えることもできない雑魚ってことですか?」
と言いたい気持ちをグッと堪える。こんなことを言ってしまったら、余計に先輩を怒らせてしまうだけだ。フィクションの世界やスカッとジャパンだったら、ズバッと言い返すと良い方向に物事が進んで行くが、一般的な社会では目上の人に言い返して良いことなんて一つも無いのである。
 仕事終わり、家で一人でビールをグビグビと飲み干す。一般的に、仕事終わりのビールは一番美味いとされている。でも、別に心のモヤモヤやイライラは無くならない。一般的な社会では、毎日この感情と付き合っていくしか無いのである。
 次の日、俺は辞表を出していた。
「は?え、なんで?」
「すみません。この会社でやっていける気がしなかったので…。」
「そうか…。」
俺はどうやら、一般的な社会では生きていけない人間だったようだ。それから、半年間、俺は家に引き篭もった。やりたいことも特に見つからなかった。しかし、生きていくにはお金が必要である。貯金が底をつき、仕方なく再び就活を始め、なんとか新しい会社に就職することができた。

 「あのさー、ちゃんと給料貰ってるんだから、責任持って仕事してくれよ。」
と先輩に言われた。
「『ちゃんと』は貰ってませんけど。安月給ですよね?給料分の働きはしてますよ。」
と言いたい気持ちをグッと堪える。『普通に生きやすい社会』が『一般的』になればいいのにな…などと思いながら、今日も働く。

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