【超短編小説.8本目】一日一善
「一日一善って決めてたんで……。」
私が弁護していた被告人は、そう言ってヘラヘラと笑った。
「それが、あなたが犯した罪とどう関係があるんですか?」
検察官が、眉間に皺を寄せる。
「いや、その日、間違えてゴミを二つ拾ってしまったので、一日二善になっちゃうじゃないですか。僕は、一日一善って決めてたので、マイナス一善しないとな…と思って。」
「だから、罪を犯したんですか…?」
被告人は何も言わずに、ニッコリと笑った。
その後、私の弁護により、被告人は責任能力がないとみなされ、無罪となった。果たして、俺の弁護は「善」だったのだろうか…。