翻訳:The Next Usability Frontier
Web3とユーザビリティやUXの関係を論じていることに興味を持って,“Vivid & Vague” に掲載されたMarc Geffenの記事 “The Next Usability Frontier” を翻訳してみました.わかりにくい文章で翻訳に苦労しましたが,文責は渡辺にあります.間違いのご指摘など歓迎します.
2022年5月21日,渡辺隆行
原文:https://vividandvague.substack.com/p/thenextusabilityfrontier?s=r&utm_campaign=post&utm_medium=web
ユーザビリティの次のフロンティア
Web3がインタフェースを多様化しながら「摩擦レイヤーモデル」をどのように変えるのか,そして,それがなぜ重要なのか.
Marc Geffen
April 4
はじめに
1年以上前,私は「摩擦レイヤー」と名付けた考え方について書いた.要点:ほとんどの製品は,ユーザー体験の様々なレイヤーで生じる摩擦を減らす機会を逃している.各レイヤーは,製品が利用される際にユーザーのデータ,ドル,アイデアの交換を参加者間で仲介する際の,インタラクションが生じる可能性があるポイントかモードのセットを表わしている.
この記事を書いている時点でWeb3は,少なくとも「Web3」と言う言葉で整理されたアイデアとしては一般的に知られておらず,まだ得体が知れない存在だった.でも今現在は,実態を伴っている.私は,Web3は「摩擦レイヤーモデル」に対応づけられると思うが,大きな意味を持つようにこのモデルを変化させると考えている.
長すぎるという方のための要約:Web3の世界での「摩擦レイヤー」
1.「所有」と秘密鍵に責任を持つというパラダイムシフトによって,Web3は摩擦レイヤーモデルを反転させて,一般人のユーザー体験に大きな摩擦を再びもたらす.
なぜそれが重要なのか?:ユーザビリティが再び差別化要因になる.
2. Web3は(コンポーザビリティによって)インタフェースをデータベースから切り離すので,開発者やデザイナーがユーザビリティのような特定の摩擦レイヤーに集中して取り組めるようになる.
なぜそれが重要か:Web3はデザイン上の革新を必要としていて,革新をユニークな方法で可能にし,その結果,数十年来の構成原理を打ち破る.
3. Web3はインタフェースの多様性を増やし,ユーザーがウェブをユーザー体験するときの選択肢を増やす.
なぜそれが重要か:インタフェース,ブランド,参加者の関係がますます密になり,製品のインタフェースに根ざした文化における製品の位置づけを我々は決めるようになる.
I.Web3が再び摩擦をもたらす
平均的な人間,たとえば一般的なインターネットユーザーは暗号(通貨)を知っているかもしれないが「Web3」は意識していない.そして,今Web3に参加しているアーリーアダプターのほとんどさえも,Web3に基礎レベルで参画するための学習は難しい.時にはよく知らず危なっかしい.自分が管理しているこのウォレットやアドレスを用いて自分が行っていると思っていることを私は行えているのか? これはきちんとバックアップされているのか? 取引が成立したことをどうやって確認できるのか? ここでセキュリティのミスを犯そうとしているのではないか,どうやって安全だとわかるのか? 多分Web3の操作をするときに,あなたも私のようなためらいをたくさん経験したことがあるのではないか.
何故かというのは明白かもしれないが,もっと細かく考えてみよう.
Twitter:cdixon.eth @cdixon
読み,書き,所有する (📖, 🖊, 🔑)
December 19th 2021
237 Retweets2,113 Likes
@cdixonや他の人が書いているように,Web3によって,ウェブを所有する時代に一歩踏み出した.我々の多くは,この時代には無限の良さがあると信じている.所有によってユーザーに,そして人々に,とてつもない利益が与えられるのだ.しかし,所有権を持つ時代への飛躍は,ユーザビリティの世界でのパラダイムシフトにユーザーが適応する能力があるかどうかによって決まる:この飛躍は,ユーザーが自分の秘密鍵に責任を持つことを要求する.なにか美しいが危険なものがそこにある.
注:話を単純にするために,この記事[注1]では,秘密鍵とシードフレーズを同じ物として扱う.また,読者が暗号と秘密鍵がとても重要であることを理解していると仮定する.一言で言うと,@unenumanのこの投稿が好きだ:そこで彼は,「秘密鍵は個人に力を与えるための重要な技術である.支配は力を持つので,暗号はあなたにデジタルな力を授ける.秘密鍵は,あなたが自分のお金やデータやアイデンティティなどを真に所有する未来を開く.」と書いている.
ウェブでの「所有」は,ウェブでの「読み書き」が対応するようには,インターネットではないアナログ世界に対応しない.我々は皆,読み書きしながら成長し,身についた読み書きのスキルを(もちろん,複雑さを取り除くためのインタフェースに大いに助けられているが)ウェブを利用する行為に適用する.しかし,秘密鍵を管理運営し,そのリスクと意味を理解することは,一般の大勢の人たち[注2]に前例のないユーザビリティの課題をもたらす.確かに,慣れ親しんだWeb2のUXとフィアット・ランプ(不換貨幣の交換)を使って,ユーザーがこの負担から逃れてWeb3に慣れさせる資産管理サービスもある.しかし,Web3の本当のビジョン,自分が資産を管理する(non-custodial)経験,に焦点を当てたい.
私は,「読む>書く>所有する」がWeb3に対して我々が持っている最も簡潔なメンタルモデルであることに賛成する.しかし,「所有する」は,ユーザーに求められる考え方や態度を適切に捉えていない:「所有」は受動性を示唆している.もし私が「所有」をユーザーが実際にしなければならないことという立場で言い換えるなら,もっと不細工な言葉で呈示するかもしれない.たとえば,
読む
書く
責任を取る
Web3は私たちをトラストレスなシステムの世界に参加するように招待する.この世界に参加するためには,最小の実現性がある摩擦障壁[注3]を受け入れる必要がある:自分自身の鍵の管理人になり,もしシステムのUXがとても複雑だったり所有している物が失われたり誤って送信されたりした場合のセーフティネットない場合でも,認証と取引を行う.この文脈での「所有」は,ウェブに対する新しいタイプの方向を必要としており,それは「所有」という言葉には暗に示されてはいない.
Twitter:Benedict Evans @benedictevans
これは消費者向け製品を作る態度ではない
===
Twitter:MetaMask 🦊💙 @MetaMask
@RevokeCash @etherscan
これが大変な作業のように聞こえるなら,その通りだ.😅
自分の資産と金融主権を完全にコントロールすることは大きな仕事だ.そこには,あなたを居心地良くして窮地から抜け出させてくれる媒介人はいない.
自分自身の銀行であるということは,自分自身のセキュリティ,コンプライアンス,等すべてであることを意味する!🏦
12/
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March 4th 2022
15 Retweets213 Likes
Web3が鍵を開けて解放するのと同じくらい,そうすることで新たな責務をユーザーに負わせることになる.これはユーザビリティのパラダイムシフトである.Web3が,Web2を改善した素晴らしくて変わりやすいユーザー体験を提供しないということではない(提供している):重要なのは,ドアを開けてWeb3の世界に入るだけで認知的なコストが発生し,一般的な消費者は今はその準備ができていないということだ.歴史的には,我々のほとんどが理解できていない複雑な技術的なシステムとインタラクションして関与するためのインタフェースとして,我々は様々な仕組みに依存してきた.しかしWeb3では,これと同じような手厚い支援を与えることはない.
これは,@moxieのWeb3の私の最初の印象と異なるが関連している重要な点だ:「人々は自分独自のサーバを運営しようとは思わないし,これからもしない.このことが十分強調されているとは思わない.それは人々が望むことではない.」多くの人は,「所有者モード」が自分たちに何を求めているかわかったら.(少なくとも現在のWeb3のUXの状態では)ウェブの「所有者モード」に切り替えたいとは思わないだろう.
暗号全体に関しては,調査によると,一般の大勢の人たちではすでに認知されているが,Web3の普及曲線でいうとかなり初期の段階にある.漏斗の絵,頂点が「認知度」で下に行くほど「所有」「利用」と進む,を描くとしたら,各段階で人数を大きく失なわねばならず,一般の大勢の人たちから更に遠ざかることになる.
認知度
米国成人の86%が暗号通貨に関してこれまでに少しは耳にしたことがある.
所有
米国成人の16%(~3300万人)はこれまでに暗号通貨に投資または取引したことがあると言っている.この割合は,18-29歳の男性では43%に跳ね上がる(2021年11月).
世界的に見ると,暗号通貨の総所有者はおよそ2億9500万人で,そのうちおよそ2300万人はETHの所有者であると推測される.
l 利用(定期的な活動)
非管理型ウォレットの代表であるMetaMaskは2021年にグローバルなMAU(1ヶ月当たりの利用者数)が1000万人を突破した.
Web2の代表として使えるかもしれないインスタグラムのMAUは10億(100倍)を超えている.
MetaMaskのようなWeb3の主要アプリが急成長しても,この1年間の一日のアクティブな(固有)ETHアドレスは60万程度で推移し100万を超えることはまだない.
Web3ユーザーの母体数は比較的少なくて,アーリーアダプターの利用頻度も限られている.
ユーザビリティ-主要な問題の例
(不可逆的なユーザビリティに関する話の深刻さを定性的に示すためにいくつかの例をあげる.ここではユーザーのエラーに焦点を当てる.これらの例はハッキングや詐欺やその他の脆弱性に関するものではない.)
自分たちの秘密鍵の管理を間違った人々によって数十億ドル相当のビットコインが失われた.
12,000以上のETHが,タイプミス(存在しないアドレスに送金)により永久に失われた.
30万ドルのBoared ApeのNFTが,指が太くてタイプミスしたために所有者によって誤って売られた.
コロンビア特別区に住む家族が580万ドル相当のETHにアクセスできなくなった.:イーサリアム財団の法務担当部門は,「イーサリアムにはウォレット,パスワード,秘密鍵の紛失に対する責任はない」と回答した.
全般的な所有率と使用率は急速に成長していて,勢いがある.しかし現在,Web3に参加する準備ができていて参加する意欲がある人の数-非管理型アプリのアクティブユーザー(例えば,自分の秘密鍵を自分で管理している人)は,Web3がいたるところで大きなユーザビリティの摩擦をもたらす[注4]ため,漏斗の下側に行くに従ってかなり減る.
Twitter:holyn 🔅 @holyn
トークン・ゲート(トークンによるコンテンツへのアクセス・コントロール)を用いたオンボーディングなプロジェクトをたくさん見るが,これは人々がETHで設定したウォレットを持っていることを意味する...ならば正確に言うと誰をオンボーディングしているのか?
March 29th 2022
7 Retweets104 Likes
二要素認証を採用することを考えると,これはユーザーがユーザー名とパスワードの組み合わせという基本的な認証を一歩超えることを要求する.Duoのこのレポートを参照すると,以下のことがわかる:
79%の人々(米国と英国の成人)はこれまでに二要素認証を利用したことがある.これは,前年比で大きく成長(2017年の28%から増加)した高い普及率と考えることができる.
しかし,「回答者の少数(32%)だけが,2要素認証を提供しているすべてのアプリケーションで2要素認証を利用していると回答している...たとえば,銀行口座では2要素認証を有効化しているがメールでは無効にしている回答者も何人かいる.」なので,ほとんどの人は2要素認証を選択的に使用しており,ウェブ・ログインのデフォルト体験として用いる準備ができていない.
SMSと電子メールは人々が2段階認証として用いる選択しとして飛び抜けて多い.しかし,これらの認証要素は他の関係者や機関から便利に送信され,簡単に再生利用できる.-失ったり忘れたりしても認証要素を再送信できる.
一方,セキュリティキーやハードウェアトークンのような他の要素の採用は大きく出遅れている.私はここに重要な兆候があると思う:SMSや電子メールとはかなり異なるこれらの要素はWeb3のトークン(秘密鍵やウォレットのシードフレーズ)にとても似ている.つまり,これらの要素は知っている(誰も12単語のシードフレーズ[注5]を記憶していることを期待されない)と言うより持っている必要があって,他の関係者から送信されたり他人によって復元されたりすることはできない.
これらの2要素認証に関するデータを,Web3(トラストレスな認証)の主要なメカニズムがユーザビリティのチャレンジをもたらすという代理的な証拠として解釈できるかもしれない.Web3に「ログイン」して安全に参加するためには,おそらく扱い方を知らない[注6]であろう鍵の責任を負わなければならないのだ.
私は@jackbutcherのこの画像が好きだ.この画像で彼は,Web3で改善されたUXの有望さの裏返しを示している.我々はアプリケーションにシームレスに接続して,より洗練された形のID認証と新しいユニバーサルなログインを用いて取引することになるだろう.
これは正しいが,トラストレスなシステムを一般人がこの程度に使いやすいと感じるために埋めなければならない隔たりは全く自明でない.私はこれが実現することに賭けていてそのための努力に貢献しようとしているが,私が思うに,これは避けがたいことではない.パラダイムシフトに多くの人が適応することは,実際には決してそうならない.私たちは,ユーザーが大規模に間違えやすいこと,かつ,暗号の不変性がこのウェブの物理法則の一部であるようなウェブをどのようにデザインすれば良いのか?
ユーザビリティが再び差別化要因になる.そして,このことが摩擦レイヤーモデルに再び目を向けさせる.
簡単な要約(Web2バージョン).摩擦レイヤーの各層に品質を割り当てて,それに対して製品やブランドを評価すると以下のようになる.
Web3はこのモデルをほぼ全面的に反転させて,より「高度な」レイヤー群である信頼性,明瞭性,流動性,での摩擦を減らす.その一方で,一般ユーザーには,ベースラインにあるUXに大きな摩擦を再びもたらす.Web3のユーザビリティは必要最低限ではなく,一般の大勢の人たちの参加は与えられていない.
Web3の摩擦レイヤーを新たに描くと,元のモデルが残っている程度と,単純に反転していることが衝撃的だ.
Web3の摩擦レイヤーの基礎となる信頼性は,このモデルをアップデートする際に新たな定義が必要となるレイヤーである.Web2の用語で言うと,信頼性レイヤーはデザインを通して信頼を生み出すことに関する.UI/UXは派生したものではなく,ブランドやクリエータが効率的(流動的な価値の交換を可能にする)かつ感動的(価値や意味を伝える)なインタフェースを提供する能力を示している.最近のミームで例えると,Web2の信頼性は,単にwordceling(訳注:高い言語知能を持つのにそのスキルにあった報酬を得られていないと感じること)するだけでなく,確実に形を回転させる(訳注:STEM分野で高い能力を持ちながら自分はもっと尊敬に値すると感じている)ことに関連する.Web2の信頼性は,本物であることを証明する精巧さに関する.
Web3では,信頼性レイヤーはハードコードされ,プロトコルの一部となっていて,システムをトラストレスにすることができる.Web2の逆で,デザインしなければならないのは今度はユーザビリティレイヤーになる.
Web2の世界を考えたとき,私は元の摩擦レイヤーの記事では,「設備投資(capex)をゼロにする条件で流動性が設計されて配布される世界では,より良いユーザビリティを守ることはできない.」と書いた.これは,ウェブを所有する時代への段階的変化とそれに伴うだろうユーザビリティのパラダイムシフトを考慮していなかった. Web3では,ユーザビリティが再び差別化要因になるだろう.
II.コンポーザビリティが摩擦問題の解決を助ける
読む・書くから所有するへの飛躍は基本的なユーザビリティのチャレンジをもたらすので,我々はWeb3を用いる段階の早期にいる.まだ決まっていないのは,時間的(年単位)に言うとどの程度早い段階にいるのかと言うことだ.Web3のイノベーション速度はこのデザイン上のギャップを比較的速く埋めることができるだろうか?
一般人にトラストレスなシステムを十分使いやすくすることは避けられないことではない.規模を拡大してユーザーが間違えやすいことと暗号の不変性は,Web3の大勢の人たちにおいてなんとかして共存する必要があり,この緊張関係を解決することは,ウェブの物理学を再構築しようとするような困難な問題だ.では,この新しいデザインのフロンティアに人々を向かわせるのは何だろう?
コンポーザビリティ.この言葉を聞いたことがあるだろうか?Web3に詳しい人の話を聞いたり読んだりしたことがあれば,おそらくこの言葉なしにはいかなかっただろう.なので,私の話をするのはやめておく.私が興味あるのは,どのコンポーザビリティが摩擦レイヤーと関係するのかということだ.
簡単な知識あわせを少ししよう.コンポーザビリティは,ブロックチェーンの共有インフラを強化し,互換性があって許可が不要な積み木要素に,プログラムごとに開発者がアクセスして使用することを許可することだ.詳しくは,@dazuckのデータのコンポーザビリティ:それは何で何故重要かを読んで欲しい.この投稿からいくつかのアイデアを拾って,簡潔に逐語的にポイントを説明する:
もしデータベースの機能がサイロ化されておらずオープンだったら,どんなアプリでも同じデータを使ってアプリを構築できる.どのアプリもデータの門番にはならない.これにより“許可不要なイノベーション“が可能になり,誰でもどんな新しいサービス(ロジック)や新しいインタフェース(アプリ)を同じデータレイヤーの上に構築できる.
核となるイノベーションや価値は主に一つか二つの層から生まれるのに,なぜすべての潜在的な可能性を持つビジネスがこのスタックの3層すべてを構築する必要があるのだろうか?
これで話を摩擦レイヤーに適用できる:インタフェース-ロジック-データベースのスタックをバラバラにすることで,チームは,4層に渡る摩擦を相手に実現不可能なことをやろうとする代わりに一つの摩擦の能力に集中するチャンスを得る.また,トラストレスでコンポーザブルなシステムは,その性質上,より“上位の”レイヤーである信頼性,明瞭性,流動性での摩擦の多くを解消するため,より多くのエネルギーをユーザビリティレイヤーに投入できるようになる.
Web2とは逆に,階層の中ではユーザビリティがより上位のニーズとなり,Web3の実現はユーザビリティに依存する.この目標に向けた多くのデザイン活動は現在はウォレットで行われている.なぜなら,ウォレットがWeb3の「鍵」が保存されている場所だからだ.根本的に,(最も好意的な意味で)ウォレットが使いにくければ,一般の大勢の人たちがWeb3の波に乗ることは決してない.だから,「第一原理のウォレット」がどのようなものかについて,皮肉も本気も含めてたくさんのうわさがある.
Twitter:regynald @negroprogrammer
「財布を第一原理から再設計しました」という1年を楽しみにしている.January 31st 2022
155 Likes
Twitter:Sarah Tavel @sarahtavel
私には,暗号通貨のウォレットはすべてスキュアモ-フィックなデザインに思える.オフラインの財布の概念をそのままオンラインのウォレットに持ち込んでいるものがほとんどだ.Web3のウォレットがどうあるべきかを第一原理から再考することに取り組んでいる人が誰かいるのか?
February 17th 2022
37 Retweets619 Likes
(これらふたつのツィートとも「principles」を「principal」とタイポしているが偶然なのだろうか? よくわからない. )
多くのチームが第一原理に立ち戻って同時期にデザイン問題を考え直すことは,この特定の問題に取り組むために十分なリソースが解放されてきたことを示している.この場合,Web3の性質が摩擦レイヤーモデルを揺さぶり,ユーザビリティをより高位で高い差別化要因となるポジションに押し上げる:そしてWeb3のコンポーザビリティによってチームがインタフェースレイヤーに特に集中し,スタックの残りの層(ロジック,データ)にエネルギーとリソースを使用することなくユーザビリティ問題に取り組むことを優先することが可能になる.
Twitter:Jordan Singer @jsngr
バックエンドを分散化させれば,誰でも最高のフロントエンドが勝つようにフロントエンドを作る機会を得る.
November 20th 2021
46 Retweets457 Likes
私は,急成長していてファンに支持されているウォレットの名前を見るだけでも,これについてヒントを得ることができると思う:我々は.「MetaMask」の世界から,もっとフレンドリーな「Rainbow」や「Family」や暖かい感じの「Glow」といった世界に移行し始めている.
Web3によって,一般の大勢の人たちの趣味に合わない過酷な摩擦が戻ってきた.これは,ほとんどの人にとって全く直感的でないものを,アクセシブルで安全でユーザーフレンドリーと感じさせるデザインのイノベーション(新鮮に感じるUIパターン,埋め込まれた教育など)を触発する.:そして,コンポーザビリティによって,この領域の開発者がインタフェースデザインへの投資を倍増することが可能になる.Web3には何十年もの常識を打破するだろうデザインが必要であり,独特な形で可能になる.
III. インタフェースの多様性とWeb3万華鏡
前章ではWeb3がユーザビリティとコンポーザビリティにパラダイムシフトをもたらすと仮定した.この章では,それが何をもたらすかを探る:それは,トラストレスなシステムのプロトコルによる信頼性に根ざした,インタフェースのカンブリア爆発だ.
私はこれを,万華鏡的なインターネット体験のようなものとして考えてきた.万華鏡の一端には「物の区画」があり,そこには映し出される物が入っている.これはデータレイヤー,ブロックチェーンで,その中に入っているものは転がり回ったり展開したりするかもしれないが,中に入っているもの自体は誰が見ても同じであり,オープンに認識可能で検証可能だ.万華鏡をのぞき込んで万華鏡を回転させるにつれて,見えている絵を変えて中に入っている物とのインタラクションに影響を当てて,インタフェースを変えることができる.このように,同じデータからほとんど無限と言って良い数の目新しいパターンと体験が生み出される[注7].
@balajisが言うように,インターネットは多様性を増す.Web3によってインタフェースの多様性が増すだろう.「最高のフロントエンドが勝利しますように.」これは,デザインの世界にエキサイティングな新時代をもたらす以上のことであり,製品がその参加者との関係をどのように形成するかに対して深い意味を持つ.
今のところ,「データベースは基本的にサイロ化されており,すべてのアプリケーションが独自のデータベースを持っている.」[注8]これは,我々はユーザーとして,アプリケーションに力をもたらす基盤となっているデータとどうインタラクションするかに関してほとんど選択肢がないことを意味する;我々は,データベースを覆う物が何であれ,対応するインタフェースをただ受け入れる必要がある[注9].
インタフェースの大規模な多様性は,ウェブの見方やウェブとインタラクションするやり方に豊富な選択肢を生み出すことができる.Web3の魔法は,我々の選んだモダリティにかかわらず,保存されているのは,我々がインタフェース接続する,多数が同意したリアリティだ.今や,二人が同じ情報にアクセスし利用することを望んだという理由だけで,世界(ウェブ)の見方やその中でどう行動するかも同じにしなければならないわけではない.人々は,インタフェースが彼らの特定のユーザビリティのニーズや好みなどにあっているかどうかに基づいてアプリケーションに引きつけられるのかもしれない.
この理屈に基づくと,インタフェースは,我々が時間を費やして注意を向け,ウェブのどこに自分の忠誠心を展開させるかの主要な選択基準になるだろう.そしてそれ故,製品がいかにブランドを育てて文化の中の価値を「伝える」かにおいて,インタフェースのデザインがより重要な役割を果たすことになる.あなたが感じるUI/UXがあなたの立ち位置になる(メッセージは依然として重要だが,価値提案に関する主張や説得は,その価値の多くが起因するデータベースを所有していない場合は強くヒットしないように私は思う).
Q:もし基盤となるデータや積み木要素がオープンでコンポーザブルならば,何が人々を万華鏡であなたの「チャンネル」へと回転させるのだろうか?
A:
特定のユーザー群に最も関連する摩擦の種類を解決する能力.
新しい体験の様式を解き明かす能力:特定の集団又は一般の大勢の人たちの瞬間(インタフェース時代の精神)に好まれる現象を満たすUXを提供する.
2020年に発表した「新しい主流派の人たち」という投稿で私は,「次に来る大きなすべてを統一するようなアイデアや付随するコンテンツのひとつを待っている間に,我々の関心はサブ・コミッティの間を賭け巡る:比較的小さくて深遠な排他的なものもあれば,数百人規模の大きさだがまだ大衆を代表しているとは言えないものもある.これは地域的な人気と考えることもできるだろう.ただし,新しい主流派(一般の大勢)の人たちにおける地方の境界は,地理や人口統計ではなく,共通の親近感やコンテンツの習慣やUXの好みによって分けられる.」
これはWeb3以前の考え方だが,ウェブの次のフェーズで我々が向かうかもしれない場所を指し示している.これからは,異なる方法で(現象論的に)参加者は分断化され,自己分断化されるだろう.しかし,我々はまだ消費者向けWeb3に至る閾値を超えてはいない.我々はインタフェースによって参加者が分断化される最初の段階にいる.暗号化/Web3のアーリーアダプターはあるレベルの洗練さを表している:少なくとも何らかのノウハウと秘密鍵を所有する能力に自信があり,交換を仲介する機関なしで「取引」に進んで参加しようとするような種類の人だ.
ユーザビリティの根本的な問題,参加する際の鍵となる摩擦レイヤー,は,一般の大勢の人たちがWeb3にオンライン接続する前にラスボスのように現れ,インタフェースの選択肢のロングテールが経済的に意味を持つようになる.読み/書きから所有に移行するためには,我々は,一般の大勢の人たちを,秘密鍵に習熟し平均的なユーザーが「責任を負う」ことを助けるために(Web3の世界に)搭乗させなければならない.
今週のV&Vを読んでくれてありがとう.Twitterで@marc_itと呼んでください.興味あるなら下記の脚注も読んでみて.
注1:技術畑でないユーザーがWeb3の世界に入るとき,秘密鍵が何であるかをよく理解しておらず,鍵/シードという語句に関して誤解しているかもしれず,これらの概念をウォレットやアドレスと混同していることが多い.そういう人はこの記事を読み進める前に以下の簡単な定義を見ると役に立つかもしれない:秘密鍵:デジタル署名を生成することにより,アカウントや契約の所有を証明する秘密の番号.ウォレット:秘密鍵を保持しているソフトウェアで,イーサリアムのアカウントにアクセスし管理するために使用される.アドレス:ブロックチェーン上の取引に必要な送信元(送信者)または送信先(受信者).より詳しい定義に関しては,ethereum.orgの用語集を参照.
注2:摩擦レイヤーに対する最初の考え,そしてこの記事の焦点は,摩擦の解消に関することがほとんどだ.しかし,暗号やWeb3の鍵となる摩擦の価値創造的側面も認めなければならない.単純な論理:所有は資産の安全性に依存し,安全性には摩擦が必要であり,それ故,摩擦が所有を可能にすることに重要な役割を果たしている.暗号とWeb3に関するこれらの原則が,暗号通貨を使用しないあらゆる種類のアプリケーション(例えば,アップル,メッセンジャー,Roam research)に渡るセキュリティ,プライバシー,ユーザー主権,データの「所有」に向けた幅広い技術トレンドとどう整合しているかについて我々が十分に話しているとは私は思わない.共通しているのは暗号化であり,あらゆる形態のウェブでその痕跡をより多く見るだけになるだろう.
注3:この記事で議論したWeb3の摩擦の主な「単位」は秘密鍵の保管(自分のシードフレーズに対する自分の責任)だ.これ以外にも,含めることができる複数の摩擦ポイントがある.例えば,コールドウォレットとホットウォレット利用のベストプラクティスやガス手数料を理解することなどである.これらすべては人々がWeb3を使いこなすための険しい学習曲線に関係する.しかし,ここで議論しているユーザビリティのパラダイムシフトの根本は,非管理型のWeb3は,ユーザーに秘密鍵を保管し管理する責任を追わせるという事実である.
注4:なぜ「いたるところで」とここで言ったのか? なぜなら,我々が議論しているパラダイムシフトの摩擦-秘密鍵に対するユーザーの説明責任,トラストレスな取引の実現-は,Web3のユーザー体験の標準化された部分であり,新しく張り巡らされたウェブの布のようにどこにでも存在するからだ.つまり,これは,特定のUIパターン,または特定のアプリや業界を悩ます独特の嫌なデザイン問題から生じる典型的な「ローカルな」摩擦ではない.
注5:確かに,献身的なユーザーなら記憶しやすいシードフレーズを覚えておくことは可能だ.しかし,平均的な人は覚えることに失敗するか,最初から覚えようとさえしないだろう.私はエンド・ツー・エンドの暗号化製品における私の研究でこれに関するデータを見たことがある:一般ユーザーが秘密鍵のパスフレーズ(記憶しやすいシードフレーズかそれに類する物)を保存して思い出すように指示したシミュレーションの研究では,成功率は実にひどかった.このことを直感的に考えてみると,これまでウェブを閲覧してきた生活の中で,あなたは忘れてしまったパスワードを何回リセットする必要があっただろうか?
注6:スケーラブルにユーザー体験を向上させるかもしれない注目に値する働き:Web3AuthとStytch.
注7:私のWeb3の第一印象に戻ると,私は「万華鏡効果」についてカジュアルに詩的に装飾しているようなものなので,@Moxieは,ここで記載しておくべき注意点をいくつかあげている.データの閲覧者(ユーザー)は直接・独立してデータベースを覗いているのではなく,必ずしも,クライエントがブロックチェーンとデータをやりとりするわけではない.-そこでは中央集権的なプラットフォームが関連し,APIを介してデータのトラフィックを指示している.例えば,「MetaMaskは実際にはたいしたことはしていない.これらの中央集権的なAPIが提供しているデータを見ているにすぎない.」とか「暗号化ウォレットが見せるあなたのNFTがOpenseaが見せるあなたのNFTだという状態に我々がすでにいることは驚くべきことだとは私は思わない.私は,Openseaが代替可能な「見せる」だけのものではないということに我々が驚くべきだと思わない...」
注8:データのコンポーザビリティ:それは何で何故それが重要か
注9:もちろん,ウェブにはたくさんの選択肢がある:何百ものソーシャルメディアのアプリの中から選ぶかもしれないし,UI/UXを考慮してTwitterかInstagramかTikTokのどれかに時間を費やすかもしれない.しかし,より確かなのは,私は,各アプリのユニークな人間関係かコンテンツが理由で,あるアプリを選んでいる方が遙かに多い.私は,UI/UXの好み(例えば,どちらのアプリが私が好きなプレイリストや音楽発見アルゴリズムを提供するか)に基づいてSpotifyかAppleミュージックを選ぶかもしれない.しかし,これらのサービスはデータレイヤーにおいて更に異なっている-音楽のカタログは同じではないし,ポッドキャストの内容も大きく異なる.
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