小説落陽(老人ホームにおける実情を赤裸々に綴り問題点を提起したコメディ小説)
「桜島」
~それでも日はまた昇る~
一.日の出茜色に染まった空は、広大な湾の対岸に聳える雄大な桜島のシルエットを、くっきりと浮かび上がらせていた。一日に七回色を変えるといわれるこの山は、太陽を背に黒から始まり、青から緑に変化し、夕方は夕焼けで真っ赤に染まる。
薩摩人にとって、この火山は大きな存在である。この山を前にして自分と対峙し、自分の小ささを感じたり、「桜島がいつも見ている」「桜島に笑われないようにしなければ」「桜島よりもっと燃えなければ」と思うものである。
「今