「GE帝国盛衰史」を読む34 ーアムストルが抱える3つの重荷ー【失敗する企業買収の典型例】
「第39章今さらあとには退けない」510字
アムストルの買収に暗雲が立ち込めて来た。
1.規制当局である。
特にヨーロッパ(EU)当局は手強い。しかしイメルトにとってもEUに譲歩してもらうのは難しい。フランス当局の雇用を守ることや技術流出への懸念は突破できたが、EU当局は電力市場の統合がEUに及ぼす影響を懸念していた。寡占状態になるからである。
2.トラスト法違反になる可能性
アムストルはアメリカの子会社に発電用ガスタービン向けの主力部品を持っていて、これを手に入れると圧倒的な価格競争力をGEは持つことになる。しかしこれはトラスト法違反の可能性がある。
3.贈賄の容疑である
アムストルには海外の電力開発案件で賄賂を送っていた容疑がかかっていた。買収が確定すると10億ドル近い罰金を払うのはGEである。
こうしたことから譲歩を重ねれば重ねるほどコストが嵩み、事業価値が落ちる。あるとき、譲歩が大きすぎてもはや買収に意味がなくなっていることに気がついた。コストが利益を上回ったのである。
ここで買収をやめれば弁護士費用も不要になる。これを本社に報告したが、返答はこうだった。「これはジェフ(イメルト)の案件だ。いまさらあとには退けないんだよ」
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