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1万時間の法則

マルコム・グラッドウェルのベストセラー『Outliers』で提唱された「1万時間の法則」

物事を一流のレベルで成し遂げるには10,000時間の努力の積み重ねが必要

というもの。

賛否両論あるだろうが、少なくともプロとしての演奏においては私はこれが大原則だと信じている。

歌は、中には初めから身体と繋がっている幸運な人がいて、そうならば1万時間の1/10で済むかもしれないとも思うが、その人が声楽の道を選択する確率はまたグッと低くなるし、初めは身体と繋がっていたのにトレーニングのやり方で台無しにされる例だってある。初めから身体と繋がっていただろう人が、しかも器用で(初めから身体と繋がっている人は器用な人が多い)正しいトレーニングを積み重ねプロの歌手になってしまうと、明らかに群を抜いた存在になる。

声楽を選択する無数の人たちのほとんどは身体と繋がっていない。その中で日本を見ると本当に器用な人は見つけられないに等しいと実感する。私は不器用の代表格だ。

一方、1万時間の法則に異議を唱えた人もいる。
「最初の20時間」

https://youtu.be/5MgBikgcWnY

ただ、ここでも言われているように、何か物事を習得する時間として20時間あればというだけで、1万時間は優れた専門家になるための時間なのだ。

特は声楽は必要な筋肉を鍛えていくので、先ほど書いたように「正しいトレーニングを積み重ねて」「その演奏に様式を備え」の1万時間である。

大学で自分よりちょっと上手く歌えるように聞こえる他学生と自分を比較して落ち込む学生がいるとしたら、もっと先に目を向けなさいと言いたい。

3時間X10年だよ。10年先のあなたたちの結果なんて今、誰にも分からない。

やり方を間違えれば、その1万時間だって無駄になる。恐ろしいことだ。正しいトレーニングと正しい努力を重ねていこう。

歌は単旋律で一般の人でも歌うものなので、歌えたと勘違いしやすい。フランコ・マウリッリが編纂した「イタリアオペラアリア名曲集」の冒頭にあるマリア・カラスの言葉でこの投稿をしめたい。

Nel canto, tutti, siamo studenti fino alla morte.
Maria Callas

歌に関して言えば、私たちはみんな死ぬまで、学生なのよ
マリア・カラス


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