川口聖加 / 歌と身体の研究室
※私はオンラインサロン「川口聖加のうたサロン」に毎日エッセイを書いています。年会員だと1ヵ月約1,666円。歌や声や演奏にまつわる話、私の日常など。 https://lounge.dmm.com/detail/3847/ noteにも時々、その中のエッセイを紹介しています。 ................................... この声が作った声なのか、自然な発声なのか、わからない方も大勢いると思います。 作った声は一つでないので、説明が難しいですが
安定した声を出すために「良い姿勢で」と言われますが、そもそも良い姿勢って何?ということになります。 背中を拡げて、重心を落として踏ん張った上で、腰に近い部分の背筋を引っ張りながら歌うと、大抵の生徒の声は安定に向かい、音程が良くなります。こういった音程の崩れは、崩れた箇所だけ支えが弱くなっているパターンなので、生徒も自覚しやすいようです。 背筋の引っ張る方向は生徒によって少しずつ違い、それに応じて上体をどの程度起こすかなどで支えを強めたりして調節しています。
最近レッスン生になった方が初回のレッスンで、ある新聞の切り抜きを持っていらっしゃいました。 「レッスンをお願いした理由の一番は、これを読んで対策をしなくてはいけないと思って」 この記事によると、若い頃の張りのある声は、整体の萎縮で徐々に弱々しいかすれ声に変わってしまい、やがて廊下は喉を全体に及び、嚥下障害などのより深刻な問題を引き起こす、このかすれ声が第2の声変わりとのこと。 続きは 川口聖加のうたサロン https://lounge.dmm.com/detail/38
教えていて考えることは、生徒はどこまで知りたい、どこまで望んでいるかです。 声楽の道は果てしなく、一つ何かをそれなりにクリアすれば、さらに先の道が見えるようになっています。それはキリがないのですが、一つ一つ前より出来ることが増えることで、断然、楽しくなってきます。もっともっとその先が見たいと思うようになります。 私の生徒で、とても不器用で、とても熱心な生徒が二人います。お二人とも5年は通っていると思います。お一人は身体が硬く、こわ張りやすい。もう一人はある部分でとても強い
最初から少し厳しい言い方をしてしまうのですが…まず横隔膜のアプローチ無しには何も始まらないと思います。横隔膜が下がっていないと、音程は一瞬もはまりません。"その音のあたり"を歌っているようにしか聞こえません…上ずるか、上がりきれないか、押さえつけているかにしか聞こえません。横隔膜を下げる必要性の程度の差はありますが、どのジャンルも一緒だと感じています。 また息の長さに決定的な役割を果たすのも横隔膜です。横隔膜にアプローチしないまま息が続いてしまうタイプの方も中にはいます。そ
昨日の話ですが、朝オンラインで「足裏リセット体操」なるレッスンを受講しました。 最初に立ったり歩いたり屈伸したりして、身体の様々な部位の感覚を確認し、その後20分強の足裏マッサージや、足の指のストレッチ、足の骨の矯正を行い、終了後に、最初と同様立ったり歩いたり屈伸したりして感覚の違いを確認して終了です。 たったこれだけの事なのに、想像以上に明らかな変化があったことに驚いています。 まず私の場合は足首が極端に硬いのですが、これは足首の中にある距骨が固まっていることも原因で
先日、府中の森芸術劇場ウィーンホールという素晴らしい音響を有する音楽ホールでモーツァルトのモテット<Exsultate, Jubilate 踊れ、喜べ、幸いなる魂よ>をオーケストラ伴奏で歌わせていただく機会がありました。 この曲はコロラトゥーラと呼ばれる、速いパッセージに細かい音が沢山並ぶ高度な技巧を要する部分が多くを占めています。 全3楽章を演奏会で歌ったのはこれで2度目。前回は弦楽合奏版で歌い、本来のオーケストラ編成で全曲歌ったのは今回が初めてでした。 本番も、それ
歌のために行きついたのは3つの支えです。 1. 腰の位置に近い背中部分 横隔膜を広げ、支えるために必要な筋肉は前面より背面に3倍集まっていると言われています。最も効率が良く、支えをキープしコントロールするためにも背筋をメインに土台を作ります。安定した歌唱、隅々まで隙のない美しい響きや統一した音色のために不可欠な支えです。 2.アンダーバストの部分(実際は身体の軸)を上に引き上げる力 1で土台を作ったら、それだけでは身動きが取れなくなるので、自由に音を動かすために、1をキ
昨日の内村航平の引退会見をご覧になった方も多いと思います。 今日、バリトンの吉江忠男先生とお話しする機会があり、先生はこのようにおっしゃいました。 「彼は着地を一番大切にしていると言っていたよ」 「僕も、歌にとって大切なのは着地だと思っています」 歌で言う「着地」とは、つまりフレーズの最後の声です。この声の状態を聞くと、それまでのそのフレーズをどう歌ってきたかが分かると思います。 中途半端な支えで歌ってくると、最後の声は抜ける(支え切れない)。 力んで歌ってくると、最
昨年は大晦日も、今年の元旦もレッスンをしていました。もちろん大勢は来なかったのでゆったりと。 そのうちのお一人が、以前から私も含め何人かの先生方に"発音がこもる"、"声がこもる"と言われがちな方で、その日も様々なアプローチをしている間に「ようやく気付いた」とおっしゃり「こもらないようにするために、あまり口の奥を開けずに浅く歌っていた」ことを話してくださいました。 口の奥や喉を開けるといっても千差万別です。開けたつもりが、逆に狭くしている状況に頻繁に遭遇します。 実際は正
発声に関して、日常での鼻呼吸、鼻という口より高いポジションでの呼吸を強くおすすめします。特に、年齢が上がってきた歌手たちにとって、鼻呼吸と口呼吸でさらに顕著な差が出てくると思われます。また若いうちからその大切さと理由を理解しておけば、その先、その点では苦労が減るのではと思っています。 高音を歌わないのであれば、なかなか気付きにくいかもしれませんが、普段口呼吸中心の方は高音ですぐ詰まりやすい。ポジションが落ちているのです。 ただし、大切なのは 日常では鼻呼吸・歌う時は主に
マルコム・グラッドウェルのベストセラー『Outliers』で提唱された「1万時間の法則」。 というもの。 賛否両論あるだろうが、少なくともプロとしての演奏においては私はこれが大原則だと信じている。 歌は、中には初めから身体と繋がっている幸運な人がいて、そうならば1万時間の1/10で済むかもしれないとも思うが、その人が声楽の道を選択する確率はまたグッと低くなるし、初めは身体と繋がっていたのにトレーニングのやり方で台無しにされる例だってある。初めから身体と繋がっていただろう
「音程がはまらない」。 それは完全に音感や和声的感覚が弱いことから来ることもありますが、発声が安定しないことで上手くはまらないケースがとても多いと思います。 身体や喉のバランスが崩れると「上がりきらない」状態や、逆に「上ずってしまう」状態に陥ります。 「上がりきらない」状態は、主に身体の上部(アンダーバストから上の、肩、首、下顎、舌)に余計な力が入り、固まるときに起きやすいと思います。 「上ずってしまう」状態は、主に身体の下部(アンダーバストから下のインナーユニット)
オンラインサロン「川口聖加のうたサロン」 10月よりDMMオンラインサロンをプラットフォームにしてスタートします! 歌や音楽を生きる糧とする方々と、本物の文化芸術について考え、実現していくことを目標にしているサロンです。提供コンテンツや会員特典は以下の通りです。 主な提供コンテンツオンライン ・「月1サロンライブ」ライブ配信視聴(サロン会員は無料) ・「月1サロンライブ」過去のライブ配信アーカイブ(サロン会員のみの特典) ・川口聖加のエッセイ(不定期) オフライン ・
歌手として本物のテクニックが備わっているか、私なりに見分ける(聴き分ける)コツがあります。それはppの声をどれだけ美しく出せているかです。「良い声ですね」「立派な声ですね」という方もppを出してもらうと、とたんに硬くなり(そういう方はmfもfも硬いことが多いのですが)声が引っ込んだだけになってしまう場合は、あるいは風に吹かれて飛んでってしまうようなか細い声になるなら、mfやfならよく声が出るとしても、その「立派な印象だった」声はうまく機能していないと言えると思います。 私の
ある生徒さんは「歌を習っているのは健康のためでもある」とおっしゃいます。 肺を使って深い呼吸をしながら、身体を駆使して心を開放して歌う。生きることは呼吸すること。歌には質の高い呼吸が必要で、常に身体と対話しながら歌います。曲に集中しても、身体のことを忘れることはほとんどありません。 常に楽器として万全な、しなやかな身体であるように心がけています。 上手く息が吸えない 高い声が出ない 喉が締まる このようなストレスがあったのでは心を開放して歌うことができません。 その