本物の着地
昨日の内村航平の引退会見をご覧になった方も多いと思います。
今日、バリトンの吉江忠男先生とお話しする機会があり、先生はこのようにおっしゃいました。
「彼は着地を一番大切にしていると言っていたよ」
「僕も、歌にとって大切なのは着地だと思っています」
歌で言う「着地」とは、つまりフレーズの最後の声です。この声の状態を聞くと、それまでのそのフレーズをどう歌ってきたかが分かると思います。
中途半端な支えで歌ってくると、最後の声は抜ける(支え切れない)。
力んで歌ってくると、最後の声は突っ張る。
フレーズを十分に歌ってこないと(理想的なフレーズが作れないまま歌ってくると)最後で物足りなくなって、フレーズの最後の音を必要以上に伸ばす。
フレーズの最後の音、声は一瞬の点ですが、それまでの流れからの着地点なのです。点だけを聞くわけではなく、点だけを意識するわけではありません。しかし点を聞いただけで、色々と分かることがあります。
着地が決まることは、そのフレーズが決まることです。
沢山の着地によって成り立つ歌。それぞれの着地が確実に決まることによって、歌が決まります。演奏が決まってきます。
帰ってきて早速、YouTubeでの会見映像を観ました。
https://youtu.be/ASsuHqdMGnQ
内村航平さんが言いたかったこともそうなのではないか。着地が決まることは、体操のその演技全てが決まること。どう動いてきたか一つ一つの演技の積み重ね、流れの結果が着地に出ます。「本物の着地」という言葉に内包された沢山の意味や想いを感じた会見でした。
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