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スタエフ文藝部『綴』提出作品

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stand.fmで活動する文藝部 スタエフ文藝部『綴』 へ提出した作品です。
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記事一覧

短編小説 / dawn girl

短編小説 / dawn girl

 寝癖うざい。
 なんでだろ、寝相良い筈なのに。
「眠、」
 真夜中の冷たい空気は好きだ。いつも私を攫ってくれる。早く真夜中になって欲しい。星なんて出なくていい。ただ、あの冷たい真夜中になって欲しい。なんて、まだ夜明けすら来てないのに。
 だから私はおひさまが嫌いだ。
 目が覚めちゃったらとりあえずベランダに出て煙草。空気を吐いて風を浴びながら、なんか色々考える。在り来りなこと。世界が止まってるみ

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短編小説 / 某日

短編小説 / 某日

 朝七時の快速は殺伐としていた。
 いつもと違う電車で、いつもと違う出勤。けれどそこに面白みはない。
 久々に会ったツバメはおとなになっていた。悪いのはアイツだって何どもを私を慰めてくれて、人の前でなんて何年振りだっただろう。たくさん悪口を言ってたくさん泣いた。
『また会いに来てよ』
 朝遅刻して仕事もミスって、『もういいよ』って上司に笑われて、会社入ってほぼ初めて定時退社した昨日。嬉しくも寂しく

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短編小説 / いない君へ

短編小説 / いない君へ

「ごめんな、中々遊んでやれなくて。今度どっか、海でも行こうな」

西暦2124年 春

「私が人間であることを証明してください」
 昼下がりの街角で、少女は極めて真剣な表情をしていた。
「そんなこと、急に言われても」
「サクさんはあそこの研究所で働く研究員なんですよね?なら人間の細胞も調べられますよね?そこの案内所のとこに書いてありました!!!」
「まぁ、ま、お、落ち着け一旦、」
 声を張るマイに

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短編小説 / かえり道の記憶

短編小説 / かえり道の記憶

 その日もココが選ぶ道を、いつもと同じ様に歩いていた。一本のもみじの木は家から畦道を歩いた先にあって、誰もいない山あいの田園には勿体ないくらいに目立っていた。
「かわいい子犬だね」
シワシワの白シャツと黒いワイドパンツ。肌が白くて、透けているみたいで怖かった。名前は、と私へ尋ねながらしゃがんで、その勢いで漏れた息が風を押して聴こえる。
「ココです」
「ココくん。いい名前」
変だと思った。性別を知ら

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