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高知県から結婚を考える#02

新しい年が終わります。元号も変わりました。昨年度何もできなかったことを反省して,今年度から新しいこととしてコラム連載を始めました。

ですが4月に更新して以降,全く更新できていませんでした。相変わらずなペースですが,今年も終わりになるので,その前に一度,更新しておきたいと思います。

結婚を考える#3:高知県の女性は元気な気がします

というわけでまずはコラムの内容です。2019年5月に発行された『サポーター通信』に掲載されました。

高知県では未婚化だけでなく,晩婚化も全国に比べて進んでいます。すなわち,高知県では結婚しない人が相対的に多く,結婚する場合でも比較的遅い年齢で結婚する人が多いようです。ところで,日本の女性の就業パターン(年齢別の労働率)はM字型と言われています。つまり,20代前半は働く女性が多いものの,結婚・出産が近づく年齢になるにつれて働く女性が減り,育児が落ち着いた頃に再び働き始めるというパターンです。しかし,高知の女性の就業パターンはフラット型と言われ,結婚・出産が近づく年齢になっても働く女性の割合がほとんど減りません。また,私の肌感覚ですが,居酒屋で女性の集いをよく目にするのも高知の特徴だと思います。とりとめもなく書きましたが,何を言いたかったかと言うと,高知の女性は「元気」な気がします。そして,この女性の「元気」さが高知の「結婚」の特徴と関わっているように思っています。

このコラムのポイントは以下の4つかなと思います。
・高知県では未婚化,晩婚化が進展
・高知県女性の年齢別労働率はフラット型
・高知県では居酒屋に女性が多い
・女性の「元気さ」と高知県の「結婚」が関連

未婚化・晩婚化の定義

高知県の未婚化,晩婚化の状況についておさえる前に,まずはそれぞれを定義しておきます。

未婚化とはある集団の未婚率(結婚していない人の割合)の増加をさします。この中でも,結婚のタイミングが遅れていくことを晩婚化,ある年齢時点で定義した未婚率が高まることを非婚化と分類することができるそうです。

なお,未婚という呼び名は結婚することが前提となっており(未だ結婚していない=未婚だから),結婚しないことを選んだ人に言及できていないことから未婚も非婚と呼んだ方がいいという指摘もありますが,本稿ではわかりやすさのため,結婚していない状態を未婚と呼びます。

さて,未婚化の定義は「ある集団の未婚率(結婚していない人の割合)の増加」です。本稿では,生涯未婚率の推移と,年齢別の未婚率の推移から未婚化をみていきます。晩婚化の定義は「結婚のタイミングが遅れていくこと」です。本稿では,平均初婚年齢の推移からみていきます。

なお,晩婚化については違った形で定義している研究もありますので,注意が必要です。と言いますのも,実はこのことを意識していなかったことで,コラム内での晩婚化については正確ではない書き方になっています。

高知県の未婚化の状況

高知県の未婚化の状況を確認するために,まずは生涯未婚率の推移についてみていきます。なお,生涯未婚率とは45-49歳と50-54歳未婚率(配偶関係不詳を除く人口を分母とする)の平均値であり,50歳時の未婚率を表しています。

生涯未婚率の推移

図1. 生涯未婚率の推移。国立社会保障・人口問題研究所からデータを抽出し作成。なお,高知県の1925年,1935年,1955年,1965年,1975年はデータを見つけられなかったので,前後の調査年の平均を代入している。

全国的にも1970年代頃から徐々に生涯未婚率が高まってきており(=未婚化が生じ),2015年の生涯未婚率は男性23.37%,女性14.06%です。高知県も同じような軌跡をたどっていますが,全国よりも,未婚化が進んでいることがわかるかと思います。

次に,20代と30代の未婚率の推移をみてみます。

男性の年齢別未婚率

図2. 男性の年齢別未婚率。e-stat「都道府県・市区町村のすがた(社会・人口統計体系)」からデータを抽出し作成。

女性の年齢別未婚率

図3. 女性の年齢別未婚率。e-stat「都道府県・市区町村のすがた(社会・人口統計体系)」からデータを抽出し作成。

男性の20-24歳はほぼ未婚なので,未婚化が生じていない様子がわかります。しかし,男性の25-39歳,女性の20-39歳では未婚化が進展していることが読み取れます。

ここで面白いのが,全国と比べた高知県の年齢別の未婚化の進み方です。

1980年代から2000年代まで20代の高知県男性の未婚率は全国に比べて低い水準でした。1980年代は例外ですが,20代の高知県女性も同様です。しかし,2010年以降は男女ともに全国と同じくらいの水準にまで未婚率が上昇しています。他方,30代の高知県の男女は全国と比べても未婚率が高く,とくに30代後半は男女ともに1980年以降常に全国と比べて未婚率が高い状況です。すなわち,少し前(2000年代頃)までは若いうちに結婚する人が全国と比べて多かったものの,近年(2010年以降)は20代も30代も結婚しなくなっている,という状況がうかがえます。とくに高知県の若者(20代)が結婚しなくなっていると言えそうです。

高知県の晩婚化の状況

ですので,高知県は晩婚化も進んでいるのではないかと考えられます。すなわち,平均初婚年齢が遅くなってきているのではないか?ということです。

平均初婚年齢推移

図3. 男女別の平均初婚年齢推移。e-stat「都道府県・市区町村のすがた(社会・人口統計体系)」からデータを抽出し作成。

平均初婚年齢の推移を確認してみると,高知県では,2015年に全国と比べて平均初婚年齢が一旦遅くなりますが,全体としては,全国よりも早く初婚を迎えている様子がうかがえます。

高知県の未婚化と晩婚化の状況のまとめ

高知県は全国と比べて,20代,30代での未婚率が高いことを確認しました。すなわち,未婚化が進んでいます。

一方で,初婚年齢は全国よりも早いことを確認しました。すなわち,晩婚化は進んでいません。コラム内で「晩婚化が進んでいる」と書きましたが,実はこれは別の定義によって確認した結果によるものです。つまり,平均初婚年齢よりも遅い年代=30代での未婚率が全国平均よりも高いことをもって晩婚化と判断したために晩婚化が進んでいると書きました。ですが,晩婚化の定義は「結婚のタイミングが遅れていくこと」ですので,平均初婚年齢で判断する方が良いのかなと思い直しました。ですので,高知県では晩婚化は進んでいないと訂正させてください。(すみませんでした)

未婚率が高まっているのであれば,初婚年齢も遅くなりそうなものですので,一見すると直感に反している気がします。なぜこういうことが起きるのかに関して考えてみましたが,可能性の一つとして離婚(と再婚)が関わっているのかなと思います。

高知県は実は全国と比較して離婚率が高いです。年齢別に見てみないとわかりませんが,ここから推測できるのは,若いうちに結婚して20代あるいは30代で離婚するために「全国と比べて平均初婚年齢は早いが20代や30代の未婚率は高い」という状況が現れるのかなと思います。

年次別の離婚率の推移

図4. 離婚率の推移。国立社会保障・人口問題研究所からデータを抽出し作成。

また,高知県は婚姻数に占める再婚の割合(再婚率)も全国に比べて高いです。全国と比べて高知県では,結婚をしたことのない未婚者よりも,結婚経験のある(離別・死別をした)未婚者の方が結婚(=再婚)しているため,平均初婚年齢を遅くする可能性が小さいのかなと思います(これも年齢別に確認してみないとわかりませんが)。すなわち,30代で結婚する場合は再婚の方が多いから,平均初婚年齢が遅くならないのかなと思います。

夫妻別の再婚率2017年

図5. 2017年度の夫妻別の再婚率。再婚率は夫妻別の再婚件数を婚姻件数で除した値。e-stat「人口動態調査」からデータを抽出し作成。

おわりに

今回は高知県の未婚化と晩婚化の状況をおさえました。

・高知県の未婚化は全国に比べて進んでいる
・高知県の晩婚化は全国に比べて進んでいない

調べていくうちに新たな検討課題も生まれました。

・離婚の多さが未婚者の多さと関連している?
・離婚の多さが平均初婚年齢が全国と比べて早いことと関連している?(若いうちに結婚して20代30代で離婚している?)
・再婚率の高さが平均初婚年齢が全国と比べて早いことと関連している?(30代以降での結婚は再婚が多い?)

これらの検討課題はいずれ検討するとして,次回は高知県の年齢別の労働率について確認してみたいと思います。

相変わらず遅々としていますが,今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


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