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開催記録|【第1回】<特集「Conceptualizing Psychological Concepts」を読む@オンライン>

(2020.09.15に書いたブログ記事の転記です)

 先日,特集「Conceptualizing Psychological Concepts」を読む勉強会をオンラインで開催しました。10名の方にお集まりいただき,充実した勉強会になりました。「構成概念とは何か」を考えることは,心理学とは何かを考えることでもあり,自分たちが研究しようとしている対象(=「人間」)とは何かを考えることでもあるなと改めて感じました。

 第2回は10月11日(日)14時に決まりました(詳細な案内は後日お知らせいたします)。参加にご興味のある方は仲嶺までご連絡ください。

 以下は,第1回の簡潔な記録です。

第1報告

On the Ambiguity of Concept Use in Psychology: Is the Concept “Concept” a Useful Concept?
─ 報告者:三枝高大(二分法的思考)

 本論文の目的は,心理学(と関連科学)における「概念」に関する主要な理論の歴史的・哲学的レビューです。主要な理論の長所と限界を示し,これらの理論を存在論(概念の性質や意味)と認識論(概念が個人によってどのように獲得されるか)の観点から考察しています。その後,心理学の言説における概念の様々な使用とそこで受け入れられている見解を確認し,日常言語学的な解釈から概念について検討しています。

 心理学における概念がいかに曖昧に使われているのかを指摘し,それを乗り越えるためには存在論的な観点での位置づけが必要であること,有用な使用を考えるためには「名詞」ではなく「動詞」で位置づける必要があることなどが提案されます。

 個人的感想ですが,概念使用に関するこれまでの研究の整理という側面が強い論文です。ただし,(1)科学哲学的な背景をおさえていないと読みにくい,(2)発達・認知における概念に寄っている(報告者からの指摘),という部分はあります。

第2報告

Meaning of Words and the Use of Axiomatics in Psychological Theory
─ 報告者:上條菜美子(社会心理学,生活科学)

 本論文の著者Jan Smedslundはノルウェーの心理学者で,心理-論理psycho-logicという体系をほぼ一人で構築してきた(Helstrup, Rogenes, & Vollmer, 1999)と言われています。本論文は,psycho-logicが科学的心理学にとって必要であることを説き,その実例を提供することを目指した論文です。
 科学的心理学においては心理学的概念に定義をつけること,またその定義には不変的な意味がないと概念を扱うことは困難です。その際に操作的定義は使えず,現象学的定義を採用することが望ましいと言えます。言葉が意味を持つというのは,その言葉に含意(implication)が含まれる(つまり,論理的構造が成立する)ということです。意味元素(ほかの言葉では定義できない言葉)を用いて,心理学的概念を論理的に記述することで,定義は不変的な意味をもち,科学的心理学の中で使用することができます。そのような心理学的概念を公理系で整理することで人間の行動は予測可能になります。

 以上が本論文の概要です。

 著者は執筆時点で80歳超で,それまでに多くの論文を書いてきています。本論文だけではその意義をうまく汲み取りにくい部分がありますのでpsycho-logicの紹介として読み,詳細は『Psycho-Logic』にあたると良いかもしれません。

第3報告

Constructing an understanding of constructs
─ 仲嶺真(心理学論,恋愛論)

 New Ideas in Psychology誌の特集“On defining and interpreting constructs: Ontological and epistemological constraints.”のエディトリアルです。この特集の説明,寄稿論文の概要紹介と分類を行なっています。

 この特集号の勉強会は2020年11月以降に実施予定です。現在報告者を募集していますので,ご興味のある方はご連絡いただけますと幸いです。

What’s in a name? Psychology’s ever evasive construct
─ 仲嶺真(心理学論,恋愛論)

 第1報告On the Ambiguity of Concept Use in Psychology: Is the Concept “Concept” a Useful Concept?と同じ著者が書いた論文です。

 「構成概念」という概念の起源と展開を紹介し,構成概念の定義・使用法,それが意味していることを批判的に検討していきます。そして,構成概念につきまとう概念的混乱を整理することで,(1)構成概念の問題は複雑なので実証的研究から何かを言うというよりも概念的研究が必要という主張,(2) 心理学的構成概念はどの程度有意義なのかを議論する概略的な根拠の提供(の試み)を行うという論文です。

 著者らは概念的混乱の整理を行い,心理学にとって有用な概念使用をみんなで考えていきましょう,ということを目指しているのかなと思います。

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仲嶺真
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