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開催記録|【第2回】<特集「Conceptualizing Psychological Concepts」を読む@オンライン>

(2020.09.18に書いたブログ記事の転記です)

 先日,第2回の特集「Conceptualizing Psychological Concepts」を読む勉強会をオンラインで開催しました。約10名の方にお集まりいただき,充実した勉強会になりました。

 発表者の方のコメントですが,「本特集は心理学者が扱う構成概念(パーソナリティ,感情,思考)をどのように扱うかについての議論ではなく,心理学者が扱う構成概念という構成概念をどのように扱うかという問題に対しての議論」であり,構成概念について直接的に議論したものでありませんでした。しかし,「ある特定の構成概念の意味を議論する際にどういう点が論点になるのかを知る上で示唆に富」み,「構成概念の議論についての1つの実例として」捉えることができる特集号でした。

 本特集についての勉強会は今回で終わりですが,せっかくですのでもう少しだけ構成概念について考えるために,次回からの3回,特集「On defining and interpreting constructs」の勉強会を開催いたします。詳細な案内は後日お知らせいたします。

 以下は第2回の簡単な記録です。今回取り上げたのは,Slaney and Racine(2011)へのコメント論文ですので,同論文との関係から各論文を位置づけます。

 まず,Slaney and Racine(2011)の論文では概念に対する捉え方として2つの見方があるとされます。

  1. 構成概念とは心的表象である

  2. 構成概念とは語の使用である

 Slaney and Racine(2011)は,心理学では1が主流派であることを主張し,それと対比的である2について考えることで,構成概念という概念の輪郭を浮き彫りにしようとした論文と考えることができます。

A better philosophy for a better psychology: Comment on Slaney and Racine (2011)

 Slaney and Racine(2011)に反対する立場です。本論文の著者は,構成概念を1の見方で捉えて十分問題ないこと(Slaneyらの批判は過去に提起された批判の繰り返しであり,既に克服されていること),2の見方で考えること自体が誤りであることを論じます。

“Concept” is a useful concept in developmental research

 Slaney and Racine(2011)に反対する立場です。前論文でも同様の指摘がなされていましたが,Slaneyらが既存の発達研究の成果を十分に取り扱えていないこと,それらを踏まえれば,概念という概念が発達研究にとって有用であることを論じます。

On the concept of concept

 Slaney and Racine(2011)に反対はしないけれども,賛成もしない立場です。構成概念についての1の見方には問題がある一方で,Slaneyらが提示するような2の見方にも問題があることを説明します。2の見方ではなくても,十分に構成概念を扱えることを別の論文で論じているから詳しくはそれを読んでくれと締めくくっています。

Conceiving concepts and conceptions: A cultural-historical approach

 Slaney and Racine(2011)に反対派しないけれども,賛成もしない立場です。Slaneyらは(限定的だけれども)概念という概念について議論する出発点を提供したという点で評価されうるが,文化-歴史的アプローチという視点が足りないし,その視点をとることが,概念という概念の再構成(破壊と再構築)につながるのだと主張しています。

On the ambiguity of concept use in commentaries

 本論文は著者らからの応答です。コメントが勘違いに基づいていることや,著者らの原論文の意図を取り違えていることを指摘し,元々どのような意図で原論文を書いたのか,どういうことについて議論していたのかを明確に述べています。

 全体として「議論が噛み合っていない」ような印象も受けました。それぞれが独自の前提に基づいて主張・批判を行っていることから,批判先の意図をうまく読み取れないままに議論を進めているように思いました。そういう意味では,特集の内容もさることながら,議論の仕方についても学べる良い特集号であったなと思いました。

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仲嶺真
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