【日々のこと。vol.13|化粧】

久しぶりに化粧をした。
いつも、どすっぴんで出歩くくらい女子力というか、美容に対する意識が低い。
年頃をとうに過ぎているんだから、意識せねばいかんのは分かっているのだが……面倒臭いが勝ってしまう。
世の化粧する女性や男性には頭が上がらない。

そして、化粧する度に思い出すのは、数年前の撮影現場。



その日は、ノーメイク+顔に汚し、での撮影だった。
勿論、私はノーメイクに全然抵抗がなかった。

撮影が終わって、汚れを落とし、帰りのバスが来るからと準備をしている時、行動を共にしていた女性に、

「メイクしないんですか?」

と、聞かれた。
彼女は、鏡に向かってメイクをしていた。
私は、メイク道具なども持ってきていないし、後は帰るだけだから、気になどしていなかった。その旨を伝えると、

「ありえない。」

と、言われた。
少し心が締められた。

帰りのバス。
隣の席になった彼女は、乗り気じゃない私にメイクをさせ始めた。彼女のメイク道具で。
その間に言われたのは、

「女の子なんだからメイクしないと。」
「せっかく女の子に産まれんだから、武器は活かさないと。」
「だから彼彼ができないんですよ。誰か紹介しましょうか?」
(実は、撮影の休憩中にも、セクシュアリティな事で割と心無いことを言われてしんどかった。今回は触れない。)

と、まあ、東京までの3時間。
苦痛だった。


それから余計に化粧が嫌いになった。
というか、出来なくなった。

これが、化粧しない言い訳に聞こえるかもしれない。
そりゃ、化粧した方が良いのは分かっている。
でも、その一件は、癒えない傷として残っている。

化けたいときに化けるんじゃダメなんだろうか。
だったら、狐にでも生まれたかった。

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