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note酒場とsimplife

この前の土曜日は、noteユーザーの集いである #note酒場 の昼の部に参加し、そのあと新宿の常円寺というお寺で年に数回行われる映画上映イベント、 #ロータスシネマ で『simplife』という映画を観てきました。

私は1971年生まれなので、アラフォー卒業してアラフィフに突入しましたが、 note酒場は圧倒的に20代30代くらいの参加者が多く、ロータスシネマは60歳前後ぐらいの方がボリュームゾーンだったので、狙ったわけじゃないですが、自分自身の来し方行く末を同じ日に体験するみたいな、不思議な一日になりました。

note酒場の感想は多くの方々が書いてらっしゃいますが、実に面白かった。過去に参加経験のある比較的規模の大きなオフ会とか異業種交流会的なものとはどこか違う、絶妙なバランスのユルさがあって、いやぁ奇跡的だなぁ!と思いました。

これが計算され尽くされたユルさなのか、たまたま上手くはまったものなのか、運営に関わっていない私にはわからないのですが、いずれにせよ、そのユルさが成功の秘訣だったように思います。

note酒場に到着すると、受付の人は運営側ってとこまでは、まぁわかる。ですが会場の中に入ってしまうと、カウンターの向こうにいる人以外、誰が中の人やらお客さんやらわかりません。運営スタッフがわかるようにお揃いの缶バッジをつけてる、なんてこともなかった。

会場での流れをよく読まずに来てしまった私は、どこで何を買えばいいのかわからず、とりあえず近くにいたエプロン姿の方に「これ、どこで何買ったらいいんでしょう?」と声かけてみたんですが、「あ、僕はよくわかってないんですけど、◯◯さん、仕組み説明したげてくれる?」って別の方に引き継がれてしまいました。スタイル的にたぶん中の人、とあたりをつけて話しかけたのに、中の人が【よくわかってない】。

この瞬間に、この集まり絶対に面白いだろうな!と思いました。

私がコレはいいなと思ったのが、入り口で名札を渡さず(初心者マークは渡すけど)、名刺カードを希望者にくれる方式。

異業種交流会などいわゆる『大人の集まり』では、名刺をカードケースに入れた名札をつけたりして「自分は何者であるか」を主張しながら会場入りすることがしばしばあります。パーティ形式の集まりであっても、歓談に入る前に主宰者の挨拶があったり、各人の自己紹介が挟まることもあるし、話しかける時も名札を見ながら相手が何者かを確かめ、時には仕事上の利益を求めてガツガツ主宰者や業界有名人に近づいていく人もいる(そしてそれが会や参加者の主目的だったりもする)。

note酒場にはそういうガツガツ感がなく、ただ『noteという同じツールを使ってる自分以外の人たちは、いったいどんな人たちなんだろう?』という純粋な好奇心で集まった参加者が、お互いリラックスして楽しむために、運営・参加者の垣根なく協力し合って空気感創る】、という稀有な集まりでした。

会の目的だの参加の意義だのを大上段に振りかざさない、よき放置プレイのお陰で、人と話したい人は勝手に周りの人に話しかけるし、人の話をひっそり聞いてたい人もゆるりと場に溶け込んでいられる。全員の自己紹介から始まる会では、なかなかこんな風には行きません。ホスト/ゲストの境が曖昧で、気づいた人がその時々にお手伝いしてる感じなので、結果的に皆が無理も無駄もなく最大限楽しんでいる感じ。

私が勉強不足で、これまでnote人脈での交流も特に深くしてこなかったぼっち参加者、というせいもありますが、声をかけて名刺カードを交換してみるまで相手が何者かわからない、というのは、対話のハードルを上げるのではなく下げてくれます。

私自身、誰が誰かもわからず話しかけ、あとで本業の名刺を頂戴してから【わ、偉い人だった】とか【文章読んだことがあるクリエイターさんだ!】とわかったり、交換したカードを頼りにnoteをフォローさせていただいて「うわーこの人の文章めっちゃ好きだな」と思ったり、低めのハードルのおかげで一個人としての出会いや発見を楽しめました。

唯一私がミーハー力を発揮してしまったのは、note中の人であるフカツさんに遭遇した時で、noteアプリのあまりの不安定さに「あーもう使うのやめよっかな」とかなり本気で思っていた時期に颯爽とあらわれて次々と機能・デザイン改善を進め、私の引越しを思いとどまらせてくれたヒーローにして、以前iPhoneで愛用していたトイカメラ風アプリの開発にも携わっておられたことも判明したフカツさんの話題で盛り上がっていたとこに、ご本人がふらりと現れ、「これがフカツさんだよ」と教えてもらって舞い上がり、「ふふふフカツさん私フカツさんファンです今ここでファンクラブ結成しましたあばばば」みたいなことを口走る挙動不審なオバさんになっちまいました。

そんな怪しいオバさんにも動じることなく微笑んでくれたフカツさんマジで大人のミリキだし佇まいから背負ってるバッグから何から何まで最高だったのでみんなも #フカツさんファンクラブ に入ってフカツさんのカッコ良さを語ろうぜ!!!

すみません我を忘れました。

とにかくこういうユルくて優しい空気感は、実はほんの数名の参加者のワガママや素行の悪さでぶち壊しになってしまいかねないものです。私は昼の部しか行かなかったけど、夜の部もひとりの泥酔者も出さず素敵な雰囲気のままクローズしたようで、感嘆しました。

先に書いた通り、これが非常によく練られた運営設計によるものか、すべての参加者が起こしたたった一回の奇跡なのかは私にはわかりませんが、いずれにせよ成功した試みだったと思う。これが運営デザインによるものだとしても、それを参加者に意識させてない段階で成功です。

私自身の若い頃には異年齢、特に仕事でもないのに自分よりずっと歳上のおじさんおばさんを混ぜた会を開催するなんていう発想がありませんでした。でもnote酒場には(昼の部の特徴でもあるかとは思いますが)若い独身ユーザーからお子さん連れのパパママ参加、私ぐらいの中高年世代まで幅広い年齢層のユーザーが集っていて、プレイスペースボードゲームなどのツールもうまく織り込んだ交流が発生していたので、これにも感心してました。

ボドゲで遊ぶの久しぶりだったので楽しくて二度も参加しちゃったし、小さな人たちを介して若いパパママとお喋りできたのも嬉しかったです。いつかnoteパパママ会とか開催するとき、子守ボランティアが必要でしたら絵本持って馳せ参じますよー♪

という感じで昼からワイン飲む幸せをかみしめつつ、次の集まりの会場である西新宿の常円寺へ。

このロータスシネマというのは、ロータスプロジェクトというNPO法人がお寺を中心に開催しているイベントの一つ。プロジェクトでは映画上映会のほかに、ロータス寺市というマルシェも定期的に開催していて、私はお友達の誘いで寺市のほうには参加したことがあったのですが、映画会は初参加でした。

寺市は地域物産、小洒落た生活雑貨や飲食料品など、さまざまな品物を扱うマルシェなので、お寺のご近所さんも含め沢山の人が訪れる賑やかな集まりなのですが、映画会はあまりメジャーな作品ではないせいもあるのか、参加人数は10名前後だったかしら。こじんまりとした会でした。

キャパ的には50人ぐらい入っても大丈夫そうな会場なんですが、終映後に参加者同士で感想をシェアするには(※感想シェアは参加必須ではありません。映画だけ見て帰ってしまってもOK)これぐらいの人数でちょうどいいかも。

でも、お寺のお堂の大きなスクリーンで1000円で質のいいミニシアター系の映画が見られるのは割とおトクだと思うので、もうすこし広まればいいのにーとも思いました。告知が顔本とかだからかなー。最近Peatixも始めたそうなので、ご興味ある方はイベント検索してみてください。次はたしか2月の土曜日だったと思います。

映画は「simplife」という、タイニーハウスに暮らす人々の姿を追うドキュメンタリー。監督は日本人ですが全編アメリカでの撮影です。

私、ドキュメンタリーというジャンルはドラマ映画以上に監督のセンスと力量が問われるジャンルだと思っていて、わりと好きでもあるので、ドキュメンタリー映画の出来不出来に関しては結構辛口です。その前提でですが、このドキュメンタリーは星四つぐらいの良作でした。

ちなみに私がこれまでにみたドキュメンタリー映画の五つ星ベストはポーランド絶滅収容所の関係者を追った「ショア」と、大阪のとある家族経営のお肉屋さんの暮らしを描いた「ある精肉店のはなし」で、ワーストは和歌山のクジラ・イルカ漁にまつわる人々の葛藤を物見遊山的に撮った「おクジラさま」です。

さて、話を戻して #タイニーハウス 。小さな家、といっても、日本人が考える「ウサギ小屋」的なものではありません。反復横跳びもできないほど狭い幅の、でも人間の衣食住に必要な最小限のものすべてがコンパクトに詰まってる、子供の頃に誰もが一度は夢見る「自分だけの秘密基地」のような、主にログハウス仕立ての小さな小さな家。それをキャンピングカーのように車に繋いで移動しながら暮らす、または森の中や誰かの家の裏庭の片隅に設置して暮らす、という新しい住まい方なのです。

サイズ感は、こういう写真がわかりやすいかな。

門から玄関までが遠く来客が迷子になるほど部屋数が多い、プールつきの大邸宅を持つことが成功者のステイタス、というアメリカでは、ひと昔前なら狂人扱いもされかねなかったライフスタイルですが、ミニマルデザインとかシンプルなライフスタイルの流行とともに、大きすぎる家と住宅ローンに縛られる生活を離脱してタイニーハウスに暮らし、持ち物も最低限にすることで、家族や身の回りの人たちとの関係性をより重視した生活にシフトする、というある種の生活哲学として、アメリカでは1990年代後半から徐々に広まってきたムーブメントだそうです。

映画にはそれぞれ異なる理由や環境からタイニーハウスでの暮らしを選択した人々が登場します。独身、カップル、子持ちの夫婦、このムーブメントの火付け役になったキーパーソン、そして日本に移住し東日本大震災にあって仮設住宅暮らしを経験し、今はタイニーハウスでの暮らしに興味を持つアメリカの青年など。仕事や出自の異なるさまざまな人々が、それまでの人生とタイニーハウスでの暮らしによって変わったこと、発見したことを語ってくれます。

この作品に四つ星をつけた理由は、こうした数多くのサンプルに実際会いに行き、親しく交流しながらインタビューと彼らの実際の暮らしをフィルミングしているだけでなく、しばらく間を置いて一部の登場人物を再訪し、その変化もきちんと描いていること。中にはタイニーハウスから一般住宅にうつる選択をした人もいます。

とにかく素敵なおうちを紹介するだけでなく、そうしたムーブメントの思想的背景や、トップランナーによる将来の展望、それぞれのタイニーハウスに暮らす人たちの人となりや葛藤も捉え、時間を置いての定点観測まで入ってるのは、監督の仕事が丁寧で、きちんと取材対象と向き合っている証拠です。もちろん、可愛いおうちの間取りをみているだけでも楽しいと思う。実にいいドキュメンタリーでした。

中でも私が心惹かれたライフスタイルは、タイニーハウスを持つ複数のオーナーが共同で土地を借り、それぞれタイニーハウスのほかに、一軒の大きな家を共有しながら暮らしている小さなコミュニティでした。任天堂の人気ゲーム「どうぶつの森」での動物たちの家と森の雰囲気を想像してもらうと、イメージとして近いかも知れません。

平均的なタイニーハウスは基本的に1人かせいぜい2人で暮らすのがサイズ的限界ですが、人と一緒に食事をしたいときや、大勢の来客がある時などは、共有している大きな家を使う。ある種のシェアハウスやコーポラティブハウスと似たような暮らし方ですが、転入や転出の自由度がより高く(なんせ車で引っ張って一晩で出て行ったり入って来たりすることも技術的には可能なので)、流動性に対応しやすいスタイルです。こういうのいいな、と思いました。

私の実家は、父が亡くなったあと一軒家を取り壊して二階建ての小さなマンションに建て替えました。一階部分のワンルームを人に貸し、同じ一階の1LDKに母が一人暮らし。二階には私と息子の2LDK、隣に子供たちが自立して一軒家を始末した姉夫婦が住む3LDKがあり、それぞれ店子として入居しています。別世帯ながら家族が近く住まうライフスタイルに転換した感じ。

高齢ですがピンシャンしている母の自立や家族のプライバシーを維持しつつ、何かあれば「味噌汁の冷めない距離」で面倒を見に行ける現在の暮らし方は、わりとうまく行っているな、と思うのですが、息子が高校を卒業して就職し、自立してから少し感じが変わってきました。

息子は就職と他県での一人暮らしが同時に始まったのではじめは心配してましたが、どうやら暮らしは順調そうで、出戻る気配もありません。そうとなれば一人暮らしの私に2LDKは少々オーバースペックです。しかも場所さえあればすぐに古本やら何やら買ってしまう性癖からして、広すぎる家に住むの危険すぎる。

そんなことを考えていた矢先に、この映画に出会えたことには、運命的なものを感じちゃいました。実はタイニーハウスのことは映画見るまで知らなくて、単に間取り図好きだったりするので家をテーマにした映画が面白そうかなーと思った程度だったのですが、子育てを何よりも優先して選んできた仕事や働きかた、暮らしかたを見直して、50歳ぐらいまでには老後に向けた暮らしの再設計の方向性を決めたいなぁ…と漠然と思っていた私にとって、映画もその後の感想のシェアもタイムリーでいい刺激でした。

観客の方々の大半が自分より年上で、すでに老後のライフスタイルの見直しを実践しておられる方々だったのも私にとっては良かったです。3000冊の蔵書を老後100冊にまで減らす予定という方のお話や、「立って半畳寝て一畳」を最後には目指す暮らしのリセットなど、リアルな声を持ち帰ることができました。

こんな風に全く異なるイベント二つを、同じ一日で体験してきたのですが、ひとつ思ったのは、いずれも「同じツールやライフスタイルというひとつのキーで結びついた他人同士が集まって、一定の時間と場所を共有する」というストーリーとして共通してたな、ということです。シンクロニシティ…!と思って、ちょっと感動してしまいました。

こういうのってたぶん狙ってそうなるものでもないので、今の自分に必要なものが降りて来たというか、今だからこそ見えたシンクロニシティだったりもするのだろうな、と思います。このインプットが、私のこれからの暮らしの中で、どういうアウトプットになっていくのか、自分でも楽しみ。

というわけで、充実した一日を過ごさせていただきました。note酒場運営の皆さん、ロータスシネマ運営のるりこさん、ありがとう&お疲れさまでした。参加した皆さまとの再会も、次の機会には顔だしてみようかな、と思った方との新たな出会いも楽しみです。「カネゴンのアイコンの人」で思い出してね。

#note酒場 #ロータスシネマ #イベント #201812 #映画 #simplife

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