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星の時計のリデル

漫画に詳しいわけではないのですが、断筆した天才漫画家二大巨塔といえば、杉浦日向子と、この内田善美ではないかと思うのです。

わりと沢山の作品を残した上で江戸のエバンジェリストになる、という理由で断筆した杉浦日向子さんと違って、内田善美さんは本作含め10冊そこそこの単行本を出したきり、文字通り「読者の前から姿を消し」たことで、幻の作家として有名でした。

かつ本人の意思により増刷もなされなかったことから、過去作品はすべて品切れ、古本としてバカ高い値段で流通していたのですが、この度その代表作、かつ漫画界にとっておそらく唯一無二の作品(このジャンルの最高峰とか他の追随を許さないみたいなことが言える作品ではなく全く別次元の作品という意味で)がデジタル版で、しかも無料で配信されるという大事件が起きています。

◆マンガ図書館Z
星の時計のリデル(1〜3)

私は普通の値段で買える時代に生きてたので、普通の値段でこの三巻と「草迷宮・草空間」という作品を買い、ぶーけコミックスも数えたら5冊所有していたので、持ってるほうだと思うんですが、この作品の素晴らしさを知る人が少ないことが本当に残念でなりませんでした。

紙の本は持ってるけど紙は劣化してしまうし、こういう形で残してくれて、かつ沢山の人が読める形にしてくれたこと、一体どうやって著者を説得してくれたのか、還暦を過ぎて著者の心持ちが変わったのか、まことしやかに噂されていた死亡説が事実で遺族が同意したのか、など、掲載にいたった事情はわかりませんし、もしかしたら無料も最初のうちだけかも知れないんですけど、とにかく貴重な機会なので、環境がある人は是非是非是非読んでください。

ファッションなどに80年代の空気感はあるけど、こういうものが古びるということは決してないと思う。緻密な絵柄と詩的な台詞回し、純文学作品として通用する完成されたストーリー。「マンガとして表現したいことはこの作品ですべてやり尽くしてしまった」と作者が言うのも無理はないかも知れない…という作品です。

大事すぎて人に貸すことすら出来なかったマンガなので、知ってる人が増えて語れるのすごく嬉しいです。ほんと、騙されたと思って読んでみてください。映画「ミツバチのささやき」とかタルコフスキーの映画とかが好きな人なら絶対にハマると思う。

ちなみに本作以外だと私は「空の色ににている」が大好きです。一応恋愛ものの枠に入ってる作品ですが、文学的な完成度凄まじい。侯孝賢とかに映画化して欲しい…

#漫画 #文学 #内田善美 #星の時計のリデル #マンガ図書館Z

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