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12月は更新の月。

年に一度の火災保険の更新で会う保険代理店のお兄さんとは、いまのマンションに越してきてからなので、たしかもう7年目とかになるお付き合いだ。

最初の契約を交わした頃は、ほんとにまだ「お兄さん」という感じがする初々しい青年だった彼も、何年か後に大きな代理店に転職してスーツ姿も馴染み、今年も待ち合わせ場所の喫茶店で出迎えてくれた姿は、もう立派な「おじさん」風になっていて時の流れを感じる。

何回か前の更新で会ったとき、書類をまとめる左手の薬指に指輪を見つけて、ああ、そういう年齢になったんだなぁ…と思った。会話の端に『嫁が』という言葉が出てきたりもして。今どきの若い人でも配偶者を「妻」じゃなく「嫁」と呼ぶ人いるんだなぁ、と思ったので、印象に残っている。

わざわざ『おめでとうございます』なんて言わなかったけど、そうかぁー、めでたいなぁーと思って、いい年の暮れだった(我が家の火災保険の更新は12月なので、彼に会うと、いよいよ新しい年も間近だなぁ…と毎年思う)。

いつも使っていた駅近の喫茶店が閉店してしまっていたので、今年は別の店で待ち合わせた。我が家は駅から少し遠い上に私自身も仕事で帰りが遅く、自宅よりも通勤で使う駅近くの喫茶店とかの方が、お会いするのに都合がいいです、ということで初回の契約時に使って以来、ずっと同じ喫茶店を使っていたのだけど、そこが今年の春頃に閉店し、ぜんぜん雰囲気の違うレストランになってしまったのだ。

今年もよろしくお願いします、と礼をして、落ち着いた喫茶店の少し大きめのテーブル席の向かいに座り、保険屋さんらしく家族の近況を探る会話を始めながらウエイターを呼び止めた彼の手に、あれ、という違和感を感じた。左手の薬指に指輪がなかったのだ。

息子が独立した話とか(個人賠償の特約のことで話さなきゃなと思っていた)、あれこれの近況を話しながら書類のチェック項目を埋める作業中、書きやすいよう紙を押さえる彼の両手に軽く視線を走らせてみたけど、どちらの手にも、やっぱり薬指の指輪はなかった。

実は私は、季節柄と遅い時間に待ち合わせを設定してもらったお詫びのつもりで、女性や子どもが好みそうな可愛いクリスマス・クッキーの小さなアソートを持ってきていたのだけど、なんだか、これはアレかなぁ…と思って渡せなかった。男の人は外では指輪外しがちだし…とも思ったのだけど。

来年もよろしくお願いいたします、少し早いですが良いお年を、と言いながらいつもの年のように別れて、ディンドンディンドンとBGMが騒がしい駅ビルを抜けて電車に乗って家に帰った。そして、渡しそびれたクッキーを自分でもぐもぐ食べながら、この文章を書いている。

まぁ、それだけといえばそれだけの話で、なんというか、どうにも言葉にしづらいのだけど、メリークリスマス。すべての人に、よきクリスマスと素晴らしい出会いの期待に満ちた新しい年の訪れを、心から祈っています。メリークリスマス。

#ほんとうのような話 #ウソかも知れない話 #12月の話 #メリクリ






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