藤井風くんの初武道館LIVEいってきた。
YouTubeでカバー曲動画を漁ってて偶然見つけたこの動画。発売日過ぎても普通にスルっととれてたチケットが、あれよあれよという間にプラチナになり、こりゃもう到底無理かもしれんねぇ…と思いつつ応募した、藤井風くんの武道館での初LIVE、当選したのでいってきました。
そもそも生のLIVEじたいが去年の12月以来とかで、配信では見てたけどそのことだけで結構胸熱だった。武道館は、座席は一席おき、互い違いに客を入れていて、ちょうど通常のキャパの半分。入口での検温とか、途中の換気休憩とか、規制退場とかものものしい雰囲気だったけど、でも夜空に浮かび上がる武道館の玉ねぎ(古いですねすみません)を見るだけで高揚感。
ステージは中央に組まれて、360度どこからでも見られる円形劇場方式でした。北西が当選したときには「うっわこれ、首が痛くなるやつでは…」と思ってたのですが、舞台も回るし、風くんも東西南北動き回ってくれるので、いろんな角度からパフォーマンスが見られて嬉しかったです。
オープニング、風くんの少し猫背の広い背中と後ろ頭を見ながら聞いた「踊るポンポコリン」は、この曲を彼が一曲目に選んだということも含めて、なんかジーンときちゃったな。
2018年のまる子。
オープニング、ピアノだけが置かれた舞台に一人ぼっちの風くんは、意外にも緊張してる風でした。私は彼はいわゆる天才肌の人で、武道館だのマジソンスクエアガーデンだの、どこにいても同じっていうタイプなのかと思っていた。だけど、歌い始めのアカペラの声は、ほんのわずかだけど緊張して伸びやかさを欠き、私はちょっと「がんばれ」って手を握ってしまった。
だけど、ピアノに触れた瞬間に、彼がスッとリラックスしていくのがわかりました。曲が進むにつれて徐々にのびのびしてきて、後半のバンド編成での頼りになるお兄さんたちと一緒のパフォーマンスはとても楽しそうで見てるこちらも楽しかったです。セットや演出に、スタッフの愛を感じたなぁ。こういうご時世、客も半分しか入れられなくて、それでも風くんに、少しでも素晴らしい「初武道館」を体験させてあげたい、という気持ちが感じられる舞台というか。
セトリなんかはネットに出てるので省略しますが、前半はYouTubeにあげてたファンが好きな曲を色々やってくれて、嬉しかったです。当然「丸の内サディスティック」も。あの、西日が差しこんでるみたいな部屋で、カタカタ音がする電子ピアノを弾いてた青年が、今、武道館でスタンウェイのグランドピアノで同じ曲やってるんだよなぁ…と思うと、今自分はすごい奇跡的な瞬間を見てるんだなっていう厳粛な気持ちになりました。
正直、ライブ楽しみな気持ちが半分、ちょっと怖いような気持ちが半分だったんですよね。本当に、メジャーデビューしてからはあっという有名になってしまって、武道館もいきなり決まったし、なんというか「東京に汚されて」しまってないかなぁとか、そんなことが少し不安だった。東京育ちの私がこんなことを言い出すのは欺瞞だし、いやらしいことだなっていうのはわかってるんだけど、そう、ほとんど「木綿のハンカチーフ」気分。
でも、風くんは武道館のステージを堂々とつとめながらも、「わし、ひとりぼっちでは怖おうてこんなとこ(=武道館の舞台)よう立てんのじゃ」と言うシャイな青年のままだったし、変わっていきながら変わらないものもそこにあって、なんか泣けました。
岡山の田舎の青年ユーチューバーがメジャーデビューして一年足らずで武道館でワンマンやって…というストーリーによって、多くの視聴者は「自分たちの」風くんみたいに思ってる。応援したい、守りたい、変わらずにいてほしい、エトセトラ。だけど、風くんは自分の翼で羽ばたいてるんだよなぁ。ということを、バンド編成になった二部では、さらに強く感じました。
一部ではみんなも勝手がわからなくて、とにかくおとなしく着席して拍手頑張ってた感じだったんだけど、二部で登場するなり風くんが「立ってもええんやで」と煽ってくれたので、大好きな「何なんw」は気持ちよく踊りながら楽しめました。
新曲披露もあって、それぞれが違うテイストだったけど、風くんがこの新曲も含まれるであろう2枚目のアルバムについて、1枚目が癒し系だったので、もうちょっとやんちゃというか、若者っぽいアルバムにしたいと言ってたのには、なんとなく納得でした。
個人的にはバラード歌手みたいになっちゃったらいやだなぁと思ってたので、こういうやんちゃな新曲ぶつけてきてくれて嬉しかったです。
この曲も1枚目のファンの期待に応えるようでいて「青春はどどめ色」って言いきったサビの歌詞がいいなって思っている。私はこの曲を聴いて、ああ、風くんは自分の翼で飛んでるんだな、って思ったんですよね。
ふるぼけたスヌーピーのマスコットをぶら下げた電子ピアノのあるあの部屋が醸し出す「青春への郷愁」に私たち視聴者はどこかでとらわれているし、「都会の絵の具に 染まらないで」なんてことまでついつい思ってしまうのだけど、「青春はどどめ色」と言う風くんの潔さに「本当の若さってこれだよな」っておばさんの私は思いました。
だって23歳なんだぜ。青春なんかどどめ色だよ。それで正しいよ。自分の10代20代を思い出したって、昨日を振り返ってセンチメンタルになるようなことはほとんどなくて、早く大人になりたい、もっと先に行きたい、という気持ちのほうが強かったと思う。自分にとって恥ずかしいこととか失敗もいっぱいあったし、とっとと忘れたかった。青春がやたらキラキラして見えるのは、どどめ色を都合よく忘れたおっさんおばさんだけなのです。
風くんのMCは英語から始まりました。彼がコスモポリタンを目指していることがよくわかる。彼は自分の歌を祈りみたいなものと言い、ライブに来てくれた人がポジティブな気持ちで帰ってくれることを願っている、と言う。経験上、LOVEとPEACEのために歌ってる歌手というのはたいていホンモノだしたいていヤバい。レノンがヤバかったように。きっと風くんは武道館よりもっと遠くまで行くんだろう、と思う。その一歩を踏み出す舞台に立ちあえて、本当にありがたかったです。尊いものを見させてもらった、という気がしてなりません。
なんだろうな、うまく言えませんが、これいつものオタクの「推しが尊い」というのとは、ちょっと違うやつなんですよ。ラスト、天使の羽を降らせた演出家の気持ちがなんかわかるというか。あれだけの舞台をこなした青年が、頭に羽3つぐらい乗っけた状態ではにかんで笑い、四方に深々と頭を下げる様子とか、全部まとめて尊かった。ライブというものはどれもそうなんだけど、それにしても、二度と帰ってこない瞬間を共有したのだ、ということを強く実感させられたというか。
いっぱい拍手して、盛り上がり曲の「さよならべいべ」では会場みんなで手を振って、楽しかったです。そして、今夜の武道館の風くんとは「さよなら」するんだな、と思った。どどめ色の青春に背を向けて、私たちが好きだった曲も後ろに置いて、新しい扉をたたき割って前に進む風くんがどこまで行って、どんな新しい姿を見せてくれるのか、楽しみです。