春の島旅振り返り…3
その2からの続き。直島2日目は、午前中に本村地区の家プロジェクトを見に行きました。
この日は豊島に渡るのが目的で、最初は宮浦じゃなく本村から出る船で豊島に渡るつもりだったんだけど、バスで通った本村港のあたりが思いのほか辺鄙で、荷物を預けるとこ探すのが大変そうと考えたのと、宮浦と結ぶバスの本数はそこそこあったので、船の本数も多い宮浦港のコインロッカーに荷物を預けて身軽に出かけ、戻ってから豊島に向かうルートにしました。
本村経由で豊島に行く船は一日一本なので逃すと時間を無駄にしてしまうし。島の旅の時間割は結構船に縛られるので、このへんは少し面倒ですがリサーチが必要です。
こちらが本村港近くの休憩所。小さい。
デパートの屋上とかにある幼児向け遊戯ドームみたい。
船の時間は調べまくりましたが、家プロジェクトがどんなものかリサーチしてなかったんで、まあ早めに行って外から眺めるだけでもいいんじゃないーぐらいの軽い気持ちで、10時より早く着くバスで出かけました。そのへん散策してどっかでお茶でもしてようと。
が、甘かった。オフシーズンなめてました。インフォメーションセンターすら開いてなくて、仕方ないのでひたすら路地をぶらぶら。昼前の船に乗るならあまり時間はないし、一応みるとこの位置関係だけ確認しとこうみたいなつもりでしたが方向音痴なので結果的にはただウロウロしてるだけでしたw
昔ながらの焼き杉の壁の木造住宅が立ち並ぶ、風情のある地区です。
路地の向こうに海。
こんな小さなギャラリー・ショップも。
足元の雑草。
建物の壁も屋根瓦もなにもかも物珍しく写真を撮ってたら地元のおばあちゃんがお散歩してたので、挨拶して少しおしゃべりしてた。
このへんは風が強いから屋根瓦をしっかり使った家が多い。瓦の飾りは水の神様、雷さまの印だと。なるほどでんでん太鼓にこういう模様がついてる。焼き杉はなんのためにやるのか聞いてみたけど知らないって。虫除けにはならないと言ってた。「都会の人はなんでも珍しいんやねぇ。」と言われちゃったけど、そうなのよ。
立ち話をしてるうちに、少しずつ集落の中に人が増えてくる。土曜なので島内人口が前日より増えた感じだ。
特に目当てのものはなかったけど、まずはバス停から遠いものから、と思って、南寺を目指した。これが結果的に幸いして、初回で入れちゃいました。南寺は人数と時間を区切って鑑賞するアートなので(一度の鑑賞がだいたい15分ぐらい)、後から聞いたら夏休みとか瀬戸芸の時期だと、2時間待ちとか平気であるらしい。
インフォメーションセンター開いてなかったのでチケット買ってなかったんだけど、チケットは各作品のところでも購入できます。個別に買うこともできますが(410円)、3作以上みるなら6作品見られて1030円の共通チケットのほうがお得。
こんな感じのパンフ兼ねたチケットで、入り口でハンコを押してもらって入場する。
ネタバレになってしまうと勿体無いのでこれもあまり詳しくは書けませんが、ダイアログ・イン・ザ・ダークみたいな、目を開けても真っ暗な空間を手探りで進み、ベンチに腰掛けてじっと待ちます。6〜7分すると徐々に目の前に作品が浮かび上がってくるのですが、そこで係員さんから明かされる作品の秘密に、おおーっとなります。
地中美術館にあるオープンフィールド、オープンスカイと対になっているような作品でもあり、金沢の鈴木大拙館で感じたような静謐さも兼ね備えていて文句なしの名作だと思った。
こういう作品は、うるさい団体客とかいると台無しです。去年の犬島では、ズーッと喋り続けてる女子旅グループとおばちゃんグループを振り切るまでかなり疲れました。何度見てもいい作品ではありますが、初回の感動は初回しか味わえないので、これから行かれる方には同じ回のグループがよいメンバーであることを祈ります…!
少し離れた位置にある歯医者以外のプロジェクトは急ぎ足ながら一通りみたのですが、圧倒的によかったのは、南寺と、高台にある護国神社でした。千住博の石橋とか他の作品も悪くなかったですが、新鮮な驚きと一回性の輝きでは南寺と護国神社に軍配。
護国神社へはこんな道を登っていきます。けっこう登る。
夏は暑そう。
これが神社の外観で、写真では見えづらいですが階段の一段一段に氷みたいなオブジェが載っていて、光を浴びて綺麗です。でも正直ここまでみたときは、階段上がってみにきてよかったなぁ、とまてまは思いませんでした。この作品のハイライトは、実はこの社殿の下にある石室です。
社殿の脇を少し下ったところにこんな狭い入り口があり、社殿の下へ続く石室を見学できるのです。一度に入れる人数が少ないので、係のおじさんに懐中電灯受け取って前の人が出てくるのを待ってから中に入ります。
石室の奥には、上にあった社殿の階段と対をなす透明な階段があって、天井側の唯一の開口部へと続いてるのですが、この「なるほどー」という種明かしよりも感動したのは「じゃあ帰ろう」と後ろを向いて、さっき入ってきた細いアプローチを戻り始めたときだった。
入った時には前しか見てないので気づかなかったけど、真っ暗な石室から振り返ると、外の世界と結ぶ細い通路が、まるで十字架みたいに外の光を浴びて光ってるの。
ここを一歩ずつ歩いていって浮かび上がってくる景色は、実際に足を運んで体験するのが一番だと思います。この日はとてもよく晴れていて空気も穏やかで、そういう意味でもラッキーだった。
バスや船の時間がかなりギリギリだったので、石室の見学は時間がかかるならやめとこうかしらと思ったりしてたんだけど、これ石室のほう見なかったら作品の価値半減以下だと思う。頑張って見てよかったー。
海のいろ、空のいろ含めてその日その時間だけに体験できることってありますよね。それもいいタイミングだったんだと思う。
亡くなった父はクリスチャンだったので、お骨は教会の共同墓に入ってるのですが、年に一度、墓前礼拝というのがあって、その日は遺族はカロートという地下の納骨堂に入れるのです。それと少し似たような経験でした。一度地下の死者の世界に入ってから、細い道を抜けて生まれ直す。土着的な大地母神の神話の世界みたいでもあり、オフルェウス伝説みたいでもあり。入る人によって感じ方は様々だと思う。とても面白かった。
ここから先は時間との勝負でした。なんせバスを降りてから10分以内に出る船に、コインロッカーの荷物をとって、コインロッカーから徒歩4〜5分の小型船乗り場まで移動して乗り込むという、東京の電車乗り継ぎじゃないんだから、みたいなタイトなスケジュールを組んだので。肝心のバスが少し遅れ気味でハラハラしましたが、なんとか予定の船に乗れて、豊島に向かいました。
さらば直島。そして半年ぶりの豊島上陸です。
まだ続くよー。