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お探し物は図書館まで

「お探し物は図書館まで/青山美智子」

仕事やこれからの人生、このままでいいのだろうかと悩む主人公たちが出会うのは、小町さんという図書館司書さん。小町さんがセレクトする一風変わった本と付録から、自分の本当の「探し物」を見つけて進んでいく物語です。

5つの章からなる短編集で、5人の主人公とも年代も仕事もバラバラですが、どの話も「わかるなあ」と共感してしまう部分がたくさんあります。
特に心が熱くなったのは3章。
出世も視野にいれてバリバリ働いていたのに育休復帰後に資料部へ異動させられ、編集者としての自分はもう用済みなのだろうか?転職?子育てに専念?など、今後の働き方に悩む元雑誌編集者が主人公です。

読み返したいのは、主人公が以前担当していた作家先生のことばと、転職に不安はなかったかとの主人公からの問いにたいする小町さんのことば。
作家先生は、『人は、先頭もビリもないメリーゴーランドのように目の前にいる他人を追いかけてしまいがちだけど、幸せに優劣はない。人生なんて思い通りにいかないのだから、いろんなことを楽しめばいい』という。
小町さんは、『変わらずにいようとしても変わることもあるし、変わろうとしても変わらないこともある』という。

努力が足りなかったとか、失敗したとか運が悪かったとかに関わらず、人生は思った通りに進んではくれないもの。
進む方向がわからなくなって立ち止まったり、思ってもみないところで助けられたり。
この先どういう道を進んでいくのかわからないけれど、人生を楽しむ気持ちを少しでも忘れずにいようと思える小説です。

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