1週間日記 | vol.9
12/30
母と祖母と買い物へ。背がちいちゃくなった祖母が大きなカートを押しているのが赤ちゃんの手押し車のようで可愛い。母が「安い!」と、シャウエッセン片手にスーパーを闊歩しているのが面白かった。
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冬になると実家の食卓にはたくあんが並ぶ。黄色くて薄いぽりぽりのたくあん。祖母が「なんだらいっそ漬物石が重たくって取り出すのがよーいじゃなくて」と言うので、漬物石くらいわたしが持ちまっせと軽い気持ちで手伝いについていった。芯から冷えるほどの寒空の下、祖母と一緒に漬物が入っている樽の前まで行く。ビニールシートを外すと、ツンと糠床の匂いがして黄土色の液体がたぷたぷと揺れている。その中におもちゃのブロックのような取手付きの漬物石が三重に置かれていた。「じゃ、これ取ってもらって」と祖母が言う。任せんしゃいと持ってみるとこれが信じられないほどに重たく、思わず「おっっも!」と声が出る。そら頑張れと祖母の掛け声も虚しく、1個目で力の半分以上を使い果たしてしまったので、2人で取手を半分ずつ持ち、せーのと持ち上げる。26と83の愛の共同作業である。
ほにゃんと曲がった黄色の大根を3本、ボウルに入れて持ち帰る。指先が真っ赤に冷えてジンジンと痛みながら、たくあん大事に食べよう…と決意した。
12/31
編み物してたら年を越した。
1/1
本当に正月なんだろうかというほどにいつも通りの実家。家族で雑煮や餅を食べる。まさかこの餅があんなことになるなんて…
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多少なりとも動かなければ腹が減らないということで、父方の実家へ家族で雪かきをしに行った。父が1人で雪かきしていたところへわたしと母で参戦。都会の生活でだらけきった体にはかなり応えた。
1/2
襖を隔てた向こう側で父が母を呼んでいる声で目が覚める。なんとなくただ事ではないと直感的に思い、隣で寝ている母を起こす。襖を開けた母に父が「腹が痛い」とか細い声で言ったのが聞こえた。還暦も過ぎた大の大人が腹が痛くて妻を起こすだろうか。胃炎か胃腸炎かもしれない。大概、父が母に具合が悪いと訴える際は入院一歩手前なのだ。ただの風邪だと言い張って痩せ我慢をする父へとにかく病院へ行けと言い、母に連れられて救急外来へ。もうなんとなく、この時点で入院かもしれないと感じていた。母にLINEを送っても既読がつかず、ああ入院か〜とすでに決めつける娘。
そして、母からLINEが送られてきた。
1/3
1/4
バタバタしていたのが少しだけ落ち着いたので、母が「2人でどっか遊びに行こう」と誘ってくれた。元々これを楽しみに帰ってきたのだが、東京へ戻る前日に遊ぶとは思わなかった。母とのドライブは何よりも楽しい。音楽をかけて2人で笑いながら、時には真面目な話をしながら目的地まで車を走らせる。喋っている時が何よりも息抜きになるのだ。
1/5
目がシラスほどの細さにしか開かないほどの快晴。太陽の光を照り返して、雪が真っ白に輝く。こんな日に遊びたかったねと言いながら母に駅まで送ってもらう。
帰りたくない。子供のようなことを考えてしまうが、大人だって帰りたくないものは帰りたくないのだ。
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家に着くと、誰もいなかった独特の静けさがあった。カーテンと窓を開けて換気をし、荷物の整理をした。それから母に持たせてもらったおにぎりと少しのおかずを食べた。美味しい!と顔を見て言えないのは寂しいな。