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Photo by
momoro66
まあるい天使
わたしの住んでいる二階建てのマンションの踊り場には大きめの小窓が1つある。そこはちょうどお向かいのお宅の庭からぐおんと伸びる、大きな木の真正面あたりに位置する。
その日はよく晴れていたが風も強い日だった。仕事が忙しく、いつもより一本早い電車に乗らなければいけない日だったので、朝からドタバタしていた。
余裕ないなと心の重さを感じつつも振り払うように家を出ると、踊り場の小窓にはまっすぐ朝陽が差し込んでいる。そしてその光は向かいの木の葉と葉の間をすり抜け、まあるい木漏れ日を映し出していた。
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ひかりの玉がいくつもきらめいて、重なって、揺らいで、また光る。「きれい」と思わず声に出るほど、それは本当に綺麗だった。
きらきらときらめくその光たちが、どうしてか天使に思えたわたしは「疲れてるな」と思いつつも、なぜか少しだけ泣きたくなった。ざわざわとしていた心がふわっとあたたかな毛布に包まれたような気分だった。
ほどなくしてわたしは急ぎ足で階段を駆け降りていく。その背中にまあるい天使を乗っけながら。