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分解思考 -「主体性」の哲学、稲盛和夫を中心に 4/4

稲盛和夫は、主体性を発揮するために「分解思考」の重要性を説いていた。「分解思考」とは、大きな問題を小さな要素に分解し、一つ一つ解決していくアプローチのことを指す。

稲盛はこう語っている。

「できない」ものを「できる」と引き受けて、実際に「できる」までやり続ける。

これは、「未来へ向かって自己の可能性を追求し、自分自身を創造していく」という「自燃性」の精神に基づいている。しかし、可能性を開くには、具体的な方法論が必要だ。それを可能にするのが「分解思考」なのである。

大きな問題に直面した時、そのまま抱えようとすると、何が問題なのか、何から手をつければいいのかわからなくなってしまう。しかし、問題を小さく分解することで、それぞれの要素を個別に分析し、問題の本質を捉えやすくなる。稲盛はこう述べている。

「バカな奴は単純なことを複雑に考える。普通の奴は複雑なことを複雑に考える。賢い奴は複雑なことを単純に考える」

問題を分解するには、まず解決したい問題を具体的に明確にすることが重要だ。ここに賢さが出ると稲盛は考えている。問題を曖昧なままにしておくと、分解する方向性を間違えてしまう可能性があり、実際にそのようになっている問題が多いのだ。

稲盛が提唱する「アメーバ経営」は、この「分解思考」を組織運営に応用したものだ。組織全体を小さな集団(アメーバ)に分け、それぞれが独立採算制で経営する。分割された集団は、自分たちの目標を達成するために、具体的な計画を自分たちで立て、自分たちで実行するのである。

「分解思考」を実践することで、どんな困難な問題でも解決できると稲盛は信じている。

「順調なら『よし』。逆境なら『なおよし』。『もうダメだ』というときが仕事の始まり」

周りが「もうダメだ」と言ってくる時ほど、稲盛はチャンスを感じていただろう。分割して解決すれば必ず解決できるのだから。

さらに稲盛は、「完成形が見える」ことの重要性を説く。

「『完成形が見える』なら必ず成功する」

問題を分解し、解決策を実行する前に、まず目指すべきゴールを明確にイメージすること。これが「分解思考」を成功に導く鍵となる。

「すべて人生は心に描いた通りになる。どのような厳しい状況に置かれようと、否定的なことを心に浮かべるべきではない。まじめに前向きに努力していけば決して悪いことがあろうはずがないと確信して、常に堂々と明るく進まなければならない」

「自分の運命は自分で管理しなさい。でなければ、あなたはだれかに自分の運命を決められてしまう」

完成形をイメージし、それを分割して解決する。そこには自分を中心として動こうとする「ジブンゴト化」の精神と、自らの使命として動こうとする「自燃性」の精神がある。

稲盛和夫の「分解思考」の哲学は、大きな問題を小さな要素に分解し、一つ一つ解決していくことの大切さを説いている。目指すべきゴールを明確にイメージし、それを分割して着実に実行する。そうした姿勢こそが、困難な問題を解決し、主体性を発揮することにつながるのだ。



「困難」についてほかの経営者はこのように述べている。

困難に直面するとかえって心が躍り、敢然と闘いを挑んで、これを打破する。そんな人でありたい
松下幸之助

「なぜできないか」を言う者は、リーダーになってはならない。

自分の人生の成り行きを他人のせいにしてはならない。
孫正義

最初からできる人は少数派で、「できる」と言われる人の多くは、できる人に自らを変えていったんだと思います。

経営は、最終ページから本を読むのと同じです。つまり、結論が先というか、何をするのか決めて実行することなんです。

柳井正


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