パートナービザ申請手続きのミスに気づいてしまった【オーストラリアのビザの話10】
オーストラリアのパートナービザの第1ステージ「一時滞在ビザ(サブクラス820)」を申請したのは2019年。申請から1カ月ほど経った頃だったか、自分が犯した「手続き上のミス」に気づいてしまった。英語のスペリングや文法の間違いではなく、単純な思い込みと勘違いによる手痛いミスだ。
海外に住む移民としての僕にとってビザは大事な命綱のようなもので、このミスを放置するという選択肢はない。幸い、オンラインで失敗をリカバリーする方法を見つけたので試してみることにした。
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間違えたのは「自分の出生地」
パートナービザを申請する際に記入していくフォームには、「Place of Birth(生まれた場所)」を書き込む欄がある。これは日本の戸籍にある本籍地とは似て非なるもので、文字通り「自分がどこで生まれたか」ということ。ビザ申請用に取り寄せた戸籍謄本の写しにも、よくよく見ると生まれた場所を記載した欄がある。
本籍地と出生地が同じという人もいると思うが、僕の場合は別々の地名だった。というのも、本籍地は基本的に親の戸籍がその時ある地名になるのだが、僕の親は実家近くでの里帰り出産を選択した人で、実家と本籍地は異なる都道府県だった。そのため、僕の戸籍には「本籍地:A県A市」「出生地:B県B市」の記載がある。
この紛らわしさに僕はまんまと引っかかり、「Place of Birth(生まれた場所)はきっと本籍地のことに決まっている」と思い込んで疑いもしないまま、「出生地:A県A市」と本籍地の地名を出生地としてビザ申請フォームに入力してしまった。申請完了前に入力内容を何度も見直したはずなのに、ついに気づかないまま手続きを完了したというわけだ。
ビザ申請を完了後、ふと思い立って手続き内容をオンラインで見返していた時にこのミスに気づくことができたのは、不幸中の幸いだった。
戸籍、本籍地という概念
少し言い訳をすると、戸籍という概念は世界で数カ国にしかない珍しいもので、オーストラリアにも存在しない。したがって、本籍地という概念はオーストラリアにはない。ところが日本出身者にとっては本籍地が重要で、戸籍謄本の写しをもらうのは本籍地の役所、婚姻などの手続きをすれば新たな本籍地が作られるなど、とにかく本籍地というものに注目する機会は多い。
一方で、戸籍に出生地という記載があることは今回まで知りもしなかった。この出生地の記載内容を日本で何かの手続きに使った経験もない。それくらい、日本では公的手続きにおいて出生地が重要視されることはないのだ。だからうっかりした、と言ってもオーストラリアの移民局は認めてはくれないだろうが、自分がミスをした理由と情報訂正の根拠は明らかといえる。
申告内容を間違えると、どんな問題があるか?
パートナービザの申請手続きでは、NAATI翻訳者によって英語に翻訳してもらった戸籍謄本の写しも必要書類として一緒に提出している。そのため、僕のビザの審査において「戸籍謄本とビザ申請フォームを見比べると、出生地の欄に記載された地名が一致しない」という事態が発生することになる。
何が問題かというと、「提出書類と違う内容をフォームに記載しているということは、虚偽の申告があるのではないか」と移民局から疑われるリスクがあるかもしれないということだ。この類いの公的な手続きにおいては「内容に一切の嘘はありません」という宣誓を必ずしていて、実際には嘘ではないにしても、嘘だと疑われるようなことがあると困る。ビザ発給の判断に影響する可能性がゼロとはいえない。
もし、このたった1つのミスによってビザが発給されないということがあったら…と思うと、すぐさま内容を訂正する方法を探さずにはいられなかった。
ビザ手続きの「ミス」を訂正する方法
オーストラリアのビザの手続きは全てオンラインででき、移民局が管轄するImmi Account(イミアカウント)というサービスで自分のアカウントを作ってそこに登録する形で進める。
そのImmi Accountにログインすると、ビザ申請フォームに記載した内容、提出書類、ビザ申請番号などの情報をまとめて確認できる。さらに「Update details(情報の更新)」というページがあったので覗いてみると、以下のような手続きができると書かれていた。
Appointment or withdrawal of an authorised recipient (including migration agent)(移民エージェント等の認定・取り消し)
Change of address details(住所の変更)
Change of email address(Eメールアドレスの変更)
Change of passport details(パスポート内容の変更)
Notification of changes in circumstances(状況の変化についての通知)
Notification of incorrect answer(s)(誤った回答についての通知)
Request to cancel a temporary resident visa.(一時滞在ビザのキャンセル要請)
つまり、ビザ申請後に引っ越した、パスポートを更新して番号が変わった、2人の関係性や居住状況が変化したなど、申請フォームに記載した内容と違いが生じた時点でそれを申告することができるのだ。
僕のケースで必要なのは「Notification of incorrect answer(s)(誤った回答についての通知)」だった。素直に「間違えました。正しい出生地はB県B市です」と申告し、情報の正誤とミスが発生した理由を丁寧に入力し、送信。自分が犯したビザ手続き上のミスの訂正措置として行ったのはたったこれだけだ。
情報訂正、その後
結論から言うと、ミスがあってそれを訂正する手続きを採ったことについて、確認や追求の連絡などは一切来なかった。訂正は承認され、そのまま問題なくビザの手続きは移民局で進んだということだろう。
その証拠に、この時の820ビザは無事に発給された。出生地などという重要かつ絶対に間違えそうにない項目を間違えたことで、本人であることを疑われるリスクさえ考えたが、どうやら杞憂に終わったようだ。
今思うと、訂正の機能は従前からあったのだろうが、ビザ申請時点で「いざとなれば訂正できる」と事前に知らなかったのはそれはそれで良かったのかもしれない。訂正機能があったところで、間違いを連発して訂正を繰り返したら情報の信憑性が低くなるだろうから、訂正が利かないくらいのつもりで慎重に手続きをするに越したことはないだろう。
長い長い申請フォーム、先に確認を
パートナービザ申請は、入力すべきオンラインフォームが数十ページにも及ぶ長さだ。加えて、ビザスポンサーであるパートナーが記入して添付書類として提出しなければいけないものもあるなど、入力する量も多く、作業にはかなりの時間がかかる。
入力するページによっては「両親の婚姻手続きの日なんて本人たちに聞いてみないと…」「過去10年の居住地や海外渡航歴なんて記録を残してあるだろうか…」と頭を悩まされる質問項目もあった。これら全てを入力しないと手続きを終えることはできないので、思い立って入力を始めてもその日に申請を完了するのは難しそうだ。
幸い、ビザ申請フォームは入力途中で保存しておくことができる。僕の場合はビザ申請を完了させたい日を予め計画し、前々からImmi Accountで入力を進めておいた。入力を進めながらでないと質問項目を見ることができず、何の情報が必要か分からなかったので、早めに気づいていて良かったと思う。
提出書類の準備とフォームの入力と、同時進行で進める作業の多さには辟易したが、全体の作業量が多いからこそコツコツと進めるしかないだろう。丁寧にやっていたつもりでもミスはあったので、コツコツ、かつ慎重に、というのが僕の学んだことだ。