【掌編小説】ビューティフルデイ
2週間前、新卒から5年勤めた会社に退職届を提出した。
理由は人間関係。どうも、些細なことでお局様の機嫌を損ねてしまったらしい。ご機嫌取りをする気にもなれず、勢いで提出した。
ついでに貯まっていた約1ヶ月分の年休の申請もした。これで退職日まで出勤せずに済む。
こうして短期間とはいえ悠々自適な生活を手に入れたのは良いが、何もヤル気が起きない。
朝起きても「何をしよう」と考えている内に夕方になっていたことも多々ある。
一人暮らしの1Kが散らかっていても、何もする気になれない。
そんなある朝、夜中に雨が降っていたのを思い出した。雨音がうるさくて、何度か目が覚めてしまったのだ。
音はしないし止んだのか、と確かめるため久々にカーテンを開けた。濡れた路面に朝日が反射し、キラキラ輝いている。
「キレイだ…」
思わず声に出てしまった。こんなありふれた、でも美しい風景に気づかないほど自分の心は疲れていたのか。
まずは、そんな自分を認めよう。
そして部屋の掃除をしよう。