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法人設立や法人成りでアドバイスしていること全11点
前提
まず前提として、事業を始めるにあたって法人(≒会社など)が必ず必要なわけではありません。
そのあたりは、こちらの記事も参考にしてください。
検討の結果法人成りすると決めた場合にどうするか、というのが今回のテーマです。
法人設立すると、登記という作業を行わなければならず、これには手間とお金がかかります。素人には結構難しい手続きで、司法書士という専門家もいる分野ですので、できるだけやらずに済むほうが良いわけです。
また、会社を設立するにあたって根拠となる法律は会社法というものなのですが、この会社法は、大企業から一人会社まで、全ての会社を対象としている法律なので、結構複雑です。例えば「原則は~~だが、中小企業に限っては~~することも可能」などと、場合分けがあるので、ググって出てきた知識が本当に自社にとって正しいのか、ある程度前提知識が無いと判断できないということもあります。
会社(法人)というものは、会社法、許認可、税金、事業計画など、様々な観点が絡んできます。一方で、専門家は、自分の専門分野についてはアドバイスするけれども、そうではない領域にはノータッチ、という場合もありえます。しかし、一度設立してから、さらに変更登記をしたりすると、時間・手間・お金がかかるわけで、効率がわるいです。さらには、資本金などは後から修正が難しいケースもあります。このように、多面的な視点で事前に検討しておくことが望ましいと思います。
今回想定するのは、個人事業主である程度事業規模が大きくなってきたので法人化する、とか、起業するときに最初から法人にする、というケースです。
法人設立するのは、このケースが最も多いかと思います。
したがって、例えば上場を目指してVCから資金調達するとか、種類株式を発行するとか、そういった例外的なケースには当てはまらない場合があります。また、あくまで私がアドバイスするとしたらこういうやり方、という私見ですので、全ての会社にとって必ず正しいわけではないということはご注意ください。
①登記手続
登記手続きは、自分でやるか、司法書士に委託するか、の2パターンがあります。
freeeやマネーフォワードは、無料で登記書類を作成してくれるサービスがありますので、それを利用することで自分で設立作業をすることも可能です。ただし、自分で公証役場へ書類を出しに行ったり、法務局に書類を郵送する必要があります。多少専門用語が出てきますが、私のほうでフォローしつつ作成するという前提でしたら自分でも可能です。全く知識ゼロでサポートも無しだと、結構大変かもしれません。
それらをすべて丸投げしたい場合は、司法書士に委託するという方法もあります。この場合は、必要な書類(印鑑証明書とか)は収集する必要がありますが、それら一式をそろえて送れば、あとは司法書士の方ですべてやってくれます。(司法書士の方の紹介もしています。)
委託費用は、大体10万円ほどが相場です。
②株式会社か、合同会社か
株式会社は柔軟性がある仕組みなので、基本的には株式会社にしておくのが無難ですが、長期的な視点で合同会社でも問題なさそうで、かつ経営者の方が合同会社を希望する場合は、そちらをお勧めします。
こちらのnoteも参考にしていただければ。
③会社名
基本的に好きなものにしてもらえればよいのですが、会社名を店舗名やサービス名としてブランディングしていく場合は、自社の役務(業種)で、商標が登録されていないか注意が必要です。
こちらからざっと確認が可能ですが、知識がないと使い方は難しいかもしれません。
④資本金
資本金は1円でもよいのですが、ある程度の金額にしておくことをお勧めしています。というのは、登記簿謄本(会社の戸籍みたいなもの・誰でも取得可能)に、資本金が記載されるからです。
あまりに小さい金額だと、会社をやる気がないのかなと思われる可能性があります。
逆に、多くしすぎるのは問題です。例えば、1,000万以上にしてしまうと、1年目から強制的に消費税の課税事業者になるので、税金面でデメリットがあります。
また、無理して(第三者からお金を借りるなどして)資本金を多くするのもNGです。資本金は、会社が事業を行う元手としてのお金という性格になるので、設立が終わったら引き出して戻すということができません。
したがって、自己資金かつ余裕資金との兼ね合いで考えることが肝要です。
なお、許認可事業で、最低資本金が要件になっている場合があります。例えば、一般建設業や人材紹介事業は、最低でも500万円かかります。このような事業を行う場合は、その金額以上で設立する必要があります。一度設立してから資本金を増やすのは結構お金がかかりますので、ここでのミスは痛いです。慎重に確認します。
許認可が絡まない事業であれば、大体100万円くらいを目安にアドバイスしています。
⑤定款に記載する事業内容
こちらも許認可との絡みで、許認可を受けるためには定款(会社のルールブックみたいなもの)に記載が必須の場合があります。
許認可は、業種ごとにマイナールールが多かったりするので、こちらも事前に確認します。
また、事業内容に記載がない事業は行ってはいけないのですか?と質問を受けることがありますが、結論的には「行っても問題ない」です。ただ、一応包括できる文言にしておくに越したことはないので、最後に、「以上に関連する事業」などと1行入れておくのが、決まり文句的になっています。
⑥機関設計
監査役を置くか、取締役会を置くか、などの検討点です。
このnoteで前提としている会社の場合は不要なので、基本的に置きません。
置くとすると役員(取締役)の数が3名以上必要になったり、取締役会というものを定期的に開かなくてはならなくなったりと、制約事項が増えてしまいます。
⑦役員構成
例えば、代表者の配偶者を取締役にするか、従業員とするか、という検討点です。これはケースバイケースですが、セオリーとしては役員数は増やさないほうが事業運営の柔軟性は高いので、その観点を持ちつつ会社に応じてアドバイスします。
⑧取締役の任期
会社法上2年と定められていますが、10年までのばすことができます。
伸ばすことによるデメリットは無いので、10年と設定することをお勧めしています。
2年にしておくと、2年ごとに任期満了→再度選任、という扱いになるため、都度登記を行う義務が生じてしまいます。
⑨会社設立日
会社設立日は、言ってみれば会社の誕生日になるので、人によってこだわりの有無が分かれます。こだわりが全くない方もいれば、自分にとって縁起が良い日にしたい、という方もいます。
会社設立日は、法務局に申請をした日付になりますので、コントロールは可能ですが、土日祝の場合は受け付けてもらえません。
また、小ネタですが、特にこだわりがない場合は設立日を2日~31日(要は1日以外)にすると、少しだけ(6,000円くらい)税金が安くなります。(法人住民税の均等割というものです。安くなるのは初年度だけ)
⑩本店所在地
自宅以外に、レンタルオフィスやバーチャルオフィスを契約する必要がありますか?と聞かれますが、基本的に必要はありません。
仮にそれらを契約していても、そのオフィスを本店所在地(本社)として登記する必要はなく、基本的には自宅を本社として登記するほうがいいかと思います。
自宅を本社としたら、住所がばれてしまうのでは?と心配されるかと思うのですが、残念ながら、仮に本社をレンタルオフィスにしてもそれとは別に「代表取締役の住所」が登記簿謄本に掲載されるので、どちらにしてもばれてしまいます。ちなみに、これはプライバシーの観点から議論があるところですが、現状はまだそのままです。
⑪役員報酬
最後に、これは会社の業績やコストに直結する部分なので、かなり重要な論点です。
基本的な考え方としては、特に設立初期は会社を黒字にすることを優先するべきかと思います。
役員報酬を高くするということは、会社から見ると人件費が多額→赤字になりやすい、となります。また、役員報酬を上げると、社会保険料(法定福利費)も同時に高くなっていきますので、コスパが良いとは言えません。
後は、個人事業主から法人成りするときは、多額の役員借入金が発生する場合があり、この場合はさらに役員報酬を低めに設定するほうが適切な場合があります。(この辺りはややこしいのでここでは触れませんが)
いずれにしても、代表者や役員の生活に支障がない程度で、低めに設定することをお勧めしています。具体的な金額はケースバイケースですので、相談しながら決めています。
最後に
以上、11点が主な論点です。細かいところを含めるとさらにいくつもありますが、こういったことをヒアリングさせていただきながら、円滑に進められるように頑張っております。