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ラウタヴァーラには「ウタ」がある(などと言ってみたりもして…)—東京交響楽団第719回定期演奏会【コンサートミニレポ#12】

私事だが、今年になってから何かと北欧音楽に触れる機会が多い。冬にはラウタヴァーラに、夏頃にはヤン・サンドストレムやクリスチャン・リンドベルイにハマり、今は専らフォルケ・ラーベとヤン・バルクが関心の的にある。このコンサートは主にラウタヴァーラめあてだった。北欧シリーズの1回目(2回目はこちら)。

東京交響楽団 第719回 定期演奏会
2024年04月20日(土)
18:00 開演
サントリーホール

出演
指揮:サカリ・オラモ
ソプラノ:アヌ・コムシ

曲目
ラウタヴァーラ:カントゥス・アルクティクス (鳥とオーケストラのための協奏曲) op.61
サーリアホ:サーリコスキ歌曲集(管弦楽版)<日本初演>
シベリウス:交響詩「ルオンノタル 」op.70
ドヴォルザーク:交響曲 第8番 ト長調 op.88

録音された鳥の鳴き声を流すことで知られるラウタヴァーラであるが、少なくとも今ではこの手の音楽は珍しくはない。珍奇というよりはきわめて馴染み深いものとして聴くことができる。むしろこの作品の主眼は、実際の鳥の声を収集し、それと楽音を完全な設計図によってコンポーズしていることにあると言えるように思われる。現代的な視点からは自然をコントロールしようとする暴力性という否定的な評価も下し得るポイントではあるが、しかしその巧みなコンポジションこそがこの作品をよくあるサウンドスケープ系の作品から一線を画するものにさせているのだ。

今回はサントリーホールの後方客席にはじめて座ったのだが、打楽器が非常に近くてよい。そのためもあって、サーリアホは打楽器の多様な響きと動きに目が行った。しかし打楽器の面白さに比して管弦の方はやや凡庸に思える。声楽も前方と後方では全く聞こえ方が変わってくるだろう。演奏→聴取における正面性の問題がのしかかってきた。

シベリウスは傑作……とされているらしいが、思い詰めすぎではという感じがして楽しめなかった。ドヴォルザークはフルートの好演が目立った。

(文責:西垣龍一)

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