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林光《流れ》(1973)まわりみち解説(わきみちβ)動画を公開しました(貴重音源あり)

6月17日のコンサート

 お知らせしていた通り、6月17日(土)に開催された第29回東京大学教養学部選抜学生コンサートにおきまして、林光作曲の《流れ》を演奏しました。ピアノと筝のすばらしい演奏に交じって、このパフォーマンスをするというのは相当「場違い」のようでしたが、その「場違い」感も含めて観客の皆様には楽しんでいただけたようで、よかったです。そして、私たちの演奏に際しては、設営などの面で、出演者の皆様やピアノ委員会の先生方に多くのご協力をいただきました。この場をお借りして、御礼申し上げます。
 もちろん、共演してくれたふたりにも感謝の気持ちでいっぱいです。そして、この曲を作ってくれた林光さんにも。

この連載は終わってません!

 本連載「林光《流れ》(1973)まわりみち解説」は終わっていません。にもかかわらず、なぜコンサートの後3週間も更新が止まっていたのか?
 ロスっていうやつですね。役者さんがドラマは観ている人だけじゃなくて演じる側もロスになるんですよ、って言うのをたまに聞きますが、そんな感じです。
 3週間経って、少しずつ回復してきたので、またつづきを書いていきます。ときどき気にかけていただけるとありがたいです!

新しい林光作品の動画、公開しました

 3週間前、林光の《花神》(大河ドラマ主題曲、林自身によるピアノ独奏編曲版、たぶん世界初録音)と《シンコペーションで》(『ピアノの本』より)を公開しました。ありがたいことに、《花神》の方は200回再生超えたようです。《花神》の同志社交響楽団の演奏が9万回再生なので、もうちょっと伸びてもいいと思いますけどね…。
 そして先日、新たに《メロディー》と《きまぐれ天気》(原題:4分の3で)を公開しました。3週間前に公開したものと同じく、コンサートの前日に気合いで録画したものなので、あまりいい演奏ではないですが…。いちおう公開しただけです。こっちは伸びなくていいです。《花神》を聴いてほしい!

林光:メロディー(1973)『ピアノの本』より 
Hikaru Hayashi: Melody (from "PIANO NO HON")

『ピアノの本』(1976)は林光(1931-2012)が武満徹の娘、真樹さんのレッスンのために書いた作品をまとめたもの。作曲年は1973年で、当時真樹さんは11歳ごろ。国立国会図書館の資料によれば、『あんさんぶる』1973年5月号(カワイ音楽教育研究会)に付録として掲載されたものである。『わたしたちの音楽』第55号(全日本ピアノ指導者協会)にも掲載されている。 『わたしたちの音楽』の「作曲者のことば」にはこのように書かれている。

曲のはじめにmpがついているだけだ。あとは曲の発展に従って、自由に変化をつけてほしい。



林光:きまぐれ天気〔原題:4分の3で〕(1972)『ピアノの本』よりHikaru Hayashi: Unpredictable Weather〔Original title: In 3/4 Time〕 (from "PIANO NO HON")

『ピアノの本』(1976)は林光(1931-2012)が武満徹の娘、真樹さんのレッスンのために書いた作品をまとめたもの。作曲年は1972年8月31日との記載があり、当時真樹さんは10歳。《4分の3で》のタイトルで『ピアノ通信』(カワイ楽譜)と『わたしたちの音楽』第55号(全日本ピアノ指導者協会)に掲載され、のちに「きまぐれ天気」と改題されて『ピアノの本』に再録された。

『わたしたちの音楽』の「作曲者のことば」にはこのように書かれている。


 5年ほど前から、子供でもひける、練習用に役立つ小曲集をすこしずつ書きつづけている。その、いちばんやさしいものは、バルトーク「ミクロコスモス」の第Ⅰ巻ていどである。テクニックのやさしい曲は音楽的にも単調だという、この国の、子供のためのピアノ曲の慣習に背をむけることが音楽家である私たちの、当面の課題だ。  
 この曲は、指づかいはたいしてむずかしくないが、大人っぽい気取りがなくては死んでしまう。  
 子供たちに、せいいっぱい生意気になってほしいと思いながら、これを書いた。

バルトークを範としていた林光らしいことばである。ぼくも小学生のころにミクロコスモスをコンクールで2回ほど弾いたけれど、楽しかった記憶がある。どこで読んだか忘れてしまったが、林光は親友の岩田宏(詩人、小笠原豊樹の本名で翻訳者)を家に招いた折、岩田がミクロコスモスを初見で喜んで弾くものだから驚いた、という話がある。

(文責、演奏:西垣龍一)

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