走ることが夢だった7 後半(フォーミュラ編)
最後になるであろうレーシングスクールでの練習走行。
今のレーシングスクールと再契約するつもりはない。
先の予定は何もなくなるが、今出来ることをやろう!
今、タイムは何秒出せるか?
レーシングスクールの最終日が始まる。
進路
筑波サーキットでのいつもの朝。
ゲーム雑誌の取材とは別に、レース業界誌の取材があるらしい。
FJ1600の専門誌を特別号として発行するらしい。
今回のタイムアタックでは、サイドラジエターの比較的新しいマシンが私に回って来た。
乗ってみたが、正直明確な違いはわからない。
ただ、スリックタイヤが装着されていた。
雑誌の記者に話しかけられた。
私のレーシングスーツのワッペンを見て、ハルナでレースやられてたんですか?こないだも行って来ましたよと言われた。
どうも出版社の社長らしい。
住んでいる場所などの当たり障りない話をしていると、来月、山梨のカートコースに取材に行くんですが、遊びに来ませんか?と誘いを受けた。
走りにも行ったことのあるコースなので、快く約束した。
ご縁は大切にしていこうと思う。
良い話を期待しているわけではないが、サーキットに行く機会は多い方がいい。
いよいよ走る時間が迫って来た。
フェラーリの640をモチーフにしたようなマシンに乗り込む。
今回は、編隊を組まないでめいいっぱいのタイムアタックだ。
スリックを履いたFJ1600では初めてだったが期待の方が大きい。
まずは1周目。
タイヤを温める。
コーナーでの食いつきが違う。
スリックタイヤはグリップが全然違うようだ。
最終コーナー手前のストレートから加速する。
進入でブレーキングし、ステアリングを切り曲がり始める。
今までのマシンとは全然違う。
しっかりクリッピングにつけ加速していく。
フロント左タイヤから白煙が出でロック気味。
カウンターを当ててごまかす。
多少ロスしたが、ホームストレートを加速していく。
1コーナーに飛び込む。
シフトダウンもスムーズに行った。
そのまま下りのS字コーナー。
スロットルを抜いてステアリングをあてて失速させるだけで抜けられる。
車速が乗っているので、ヘアピンのブレーキングで不安定になるが、小刻みにステアリングをあてねじ伏せる。
ヘアピンの立ち上がりから、ダンロップコーナー、バックストレート手前の右コーナーを抜け、バックスストレートへ。
最終コーナーは先程ロックしたので、気持ちスピードを落とす。
今度はロックせずホームストレートへ。
まずまずまとめることができた。
スリックを履いているとスピンする心配がないこともわかって来た。
アタック継続!
15周ほどしただろうか。ピットインのサインが出る。
ピットにつきマシンを降りると、校長が寄って来て、「大したもんだ」と話しかけて来た。
タイムを聞くと、1分3秒台。
予選のポールポジションのタイムは、59秒台から58秒台くらいだから、数回目の走行にしては、まずまずかもしれない。
ちょっとした達成感があった。
校長の息子も話しかけて来た。
来年の契約は100万でいいよ!
何言ってんだこいつは。と思った。
ほんとに金のことしか考えない奴だ。
そんな話は聞き流し、インストラクターにアドバイスを受けにいく。
インストラクターから左のフロントサスのボルトが緩んでたよ。と言われた。
どうりでコーナリング中に、ブレーキを踏んだわけでもないのにロックするわけだ。
整備不良の車両でのタイム。まずまずだろう。やることはやった。
このスクールともおさらばだ。
インストラクターに、レース頑張ってくださいと、別れの挨拶をする。
そこそこ満足した気持ちで帰路に着く。
今の予定は、来月のカートコースの取材を見にいくことだけだ。
普通の学生に戻ろう。
彼女に電話し、山梨に着くのは夜だから明日会おうと約束する。
彼女のことと、勉強と就職。
現実を見つめ直さなくては。
ここまでよくやったと自分を褒めた。
レースに出る予定はないが、フォーミュラカーもそこそこ乗れるようになった。
学生生活はこれでよしとしようと心に決めた。
8(フォーミュラ編)に続く